ロフト付きはおもしろい

ロフト大好きの68歳の老人の日記です

悲劇 アスカル像

悲劇 アスカル像


昔々、南のもっと南の海に島がありました。
その島の人たちは、とても航海することが上手でした。
島の東の端にアスカルを族長とする部族が住んでいました。
その部族は、30人あまりで皆は仲良く暮らしていました。
しかしその島には、たくさんのほかの部族も住んでおり
豊かな島でしたが大変人口が多くなっていました。
そのため土地や食料をめぐって争いが絶えず、
アスカルの部族も襲われることが多くあり、
アスカルは、いつも部族の皆を見張っていなくては、なりませんでした。

そんなある日アスカルは、
みんなを集めて
「私は、この間北の島に行ったとき
古老から
『東の遠い海の向こうに島がある』
と聞いた。
われわれが知っている東の果ての島まで
海流と風に乗って30日かかるが、
それよりも遠い距離で何日かかるかわからない。
しかしあえてその東の島に
移り住もうではないか。
この島は、戦いに明け暮れている。
何度襲われたことか。
この先この戦いは、
もっと悪くなるだろう。
ここで修羅に会うか
修羅の道を通り越えて
楽園に行くか。
皆に決めてほしい。」
と言いました。
突然の話に皆は、驚いて
一人の若者が
「その島まで幾日かかるのでしょうか。
私たちは、30日以上に航海したことがない。」
と言いました。
それを聞いてアスカルは、
じっくりと考え
「何日かかるかわからない。
100日あるいは、150日以上かかるかもしれない。
しかし海流と風に乗って300日航海すれば、
元の場所に帰ってくると言われているから
それ以上には、かからないだろ。
苦しい航海になることは、
わかっているが、
ここに留まっても
同じことだ。」と返事しました。
部族のみんなは、
小声で話し合っていましたが、
一番の長老が立って
「私は、何度もアスカル様に
命を助けてもらっている。
私の命は、アスカル様のものだ。
アスカル様が東に行くと言うなら
付いていこう。」と力強く言いました。
これを聞いたみんなも
立ち上がって賛成しました。

それから準備が始まりました。
アスカルは、まず隣の部族のところに行って
今アスカルが持っている土地と交換に
新しい船を2隻もらいました。
それからもう2隻新しい船を作り
今もっている4隻の船とともに
8隻で出かけることになりました。
4隻には、食料やその他の必需品を載せました。
東の風と潮の流れが一番東に流れる時期の少し前に
部族は、8隻の船と魚を取る仕掛けを
海に浮かべて出航しました。
皆は、もう二度と見ることのないふるさとを
消えるまで見ていました。

出港してから、50日間は、平穏で船足あり
相当な距離を航海できました。
魚もよく採れ、雨水も集まって
順風満帆とはこのことだと思います。
しかし、50日を過ぎた頃から
急に凪たり、また嵐になって
木の葉のように揺れたりしました。
魚も取れず、食料も
困った状態になってきました。
100日目には、少しずつ食べていた食料もなくなり、
アスカルは、つらいことになったと考えました。
その時、一番目がよい若者が
南に鳥が飛んで行くと叫んだのです。
アスカルは、
「鳥がいるのは、島が近い証拠
しかし、島から出るところか
島に帰るところかわからない。
どうしよう。
食料もない。
皆も疲れている、
これが最後の賭けだ。」
と考え
「南西に進路をとれ。
櫂をとって、舟を漕げ!」
と大声で叫んで皆に命令した。
しかし食べるものを食べていない皆の力では、
船足は、遅くなかなか進めませんでした。
夜も昼も寝ながら漕いで
1日目2日目が終わりました。
そして3日目の朝
空が明るくなってくると
一番目がよい若者が
「西に島が見えます。」
大声で叫びました。
アスカルは、
「進路を西にとれ。
不要な4隻を切り離せ。」
と命令しました。
島の周りは、海流が早く
昼になっても一向に島には、近づけませんでした。
アスカルは、島をじっくり見ました。
島の東は、断崖で 西は、なだらかな浜辺になっています。
東からでないと近づけないと考え
進路を北に取らせました。
そして最後の力を振り絞るよう言って
自分も、
一心に漕ぎました。
夕暮れの頃になって
急に潮の流れが変わり
島に上陸できました。
船を陸地に何とか上げ
ヤシの実を飲んでその日は、寝ました。

翌日の昼過ぎまで寝ていたアスカルは、
目覚め辺りを見ました。
木々の覆われた島には、
小川が流れていて
その河口の海には、
魚がやすで突けるほどたくさんいました。
アスカルは、
楽園に来れたことを、あらためて感じました。
それから皆と力を合わせ
家を作りました。
石を加工しいろいろな道具を作りました。
一年も経つと
前の島より豊かに過ごすことができました。

しかしアスカルは、
「このまま同じように人口が増え
木を切って畑や船を作ると
山が荒れてしまう。
山が荒れると魚が取れなくなる。
そうなると、
結局前の島と同じになってします。
この自然を大切にしてこそ、
我々の未来があるに違いない。」
考えました。
そこで部族の皆を集めて
「この島は、楽園だ。
決して前の島のようにこの島を
してはならない。
そのために、私の言うことを聞いてほしい。
第一に山の木を切ってはならぬ。
第二に人口を増やしてはならぬ。」
と言った。
部族の皆は、それに賛成し
質素に暮らしました。

島に着てから、
20年ほど経ったとき
アスカルは、この楽園のような島が
いつまでも続く方法はないかと
次のように考えました。
「私が生きている限りは、
皆は、私のことをよく聞いて
教えを守ってくれているが、
私の死んだ後この教えが守られると保証がない。
何かいい方法は、ないだろうか。
前行ったことのある島に
族長の石像があった。
私の石像を作って
村の前に置いておけば
皆は、その教えを忘れないだろう。」と。
そこでその日から
アスカルは、石像を作りました。
大きさは、50cmぐらいの高さです。
頭だけを大きく作って
目を大きく作りました。
出来上がると
皆に私の死後は、
この像を見て私のことを思い出し
私の教えを決して忘れないように言いました。
それからまもなくアスカルはなくなりました。

その死後300年の間は
アスカルの教えを守って
質素に暮らしていました。

しかし、300年経ったある年
族長の中に少し大きな石像を作るものが出てきました。
そうなると競って大きなものを作るようになり、
どんどん大きくなってきました。
石を採るため
山に入りまた山から運び出すため、
木を切ったりしてしまいました。
より大きくなって
15mもあるものを
切り出そうとしたそうです。
700年も経つと山は、すっかり禿山になり
海も魚が取れなくなってしまいました。
人々は、前の島と同じように争い殺しあいました。
前の島のときは、ほかの島にもいけたのですが、
孤島のこの島は逃げ場もなく
最後の一人になるまで争い
そして
突然無人島になってしまいました。



この話は、ある事実に基づいて作られていますが
フィクションです。