父母兄が仕事に行った家は静かです。
姉は勉強をしていますし、
騒いだりしませんから、
家は私が音を立てない限り
静かです。
それから、当時はせみが鳴かなかったように思います。
私の家の周りには、田んぼばかりで
木はありません。
私の記憶が正しいなら
それでせみもいなかったのかもしれません。
そんな暑い夏には、
外の県道を歩く人もいないし
外で遊ぶ子供もいません。
地道の県道の向こうに
ぼんやりと陽炎が見えます。
本当の静寂の世界
それは暑い夏の午後です。
日ごろは飛び交っている
蚊やハエさえも暑さのために声を潜めている
そんな夏の昼下がりです。
私は好きだったんです。
でもその炎天下
草取り・稗取りで
父母兄は、今思えば働いているのです。
なんということでしょう。
認識不足もここまで行くと
罪悪かもしれません。
ごめんなさい。