ロフト付きはおもしろい

ロフト大好きの68歳の老人の日記です

短編小説 「茶髪男と黒髪女の恋」その11


窓から見える六甲は
ますますはっきりと見えて
明るくなってきました。

次郎は
始発に乗って帰らないと
先輩に迷惑が掛かるので
あずさと話しはしたいのですが
気が気ではありません。

少し時計を見ました。
そうすると
あずさの顔が
何か心配そうに見えました。

あずさも
時間が気になっていました。
そして次郎が
明らかに時間を気にしている事を
分かっていました。
それでもなお
話し続けたかったのです。
一度別れれば
もう決して 会えなくなるのではないかと
思っていたのです。
それで
話し続けました。

次郎はもう時計を見るのをやめました。

時間を
気にしながらも
あずさと次郎の話は
まだまだ続きます。

でも明らかに
時間が
7時前になったのです。

次郎は
「すまないが
もう行かなきゃ。
どうしても始発で帰らないと
先輩に迷惑が掛かるんだ。
絶対に、絶対に
メールするから、
また会ってね。」
と言ってしまいました。

あずさは
「ごめん。
引き留めて
早く行きましょ。」
と言うなり
ふたりは手を取りながら
駅へと
駆けていきました。

JR大阪駅まですぐの所でしたが
大阪駅が現在工事中のために
少し遠回りになってしまいました。

次郎は
乗車券を
あずさは入場券を買って
改札の機械を
走って通り過ぎました。

ホームまでの
エスカレーターを
手をつないで走って駆け上り
ホームに上がりました。

これまた工事中のために
金沢行きサンダーバード
ホームの向こうの端に止まるのです。

あずさも次郎も
走らなければならないのが
苦にならないのです。

少しでも長く
一緒にいられるのが
うれしかったのです。

走って
サンダーバードの7号車
乗り込みました。

ふたりとも
空いていたいすの座りました。

でもアナウンスがあると
あずさは
立って外に出ました。

次郎も後を付いて
ドアの所まで
行きました。

ふたりは手を振りながら
「またね。
メールするね。
返事してね。」
と同じようなことを言いながら
別れを惜しんだのです。

あずさは
涙がほんのちょっとだけ
出ましたが
次郎に見えないように
手でぬぐいました。

次郎は
それを見ていました。

サンダーバードの扉は
無情にもしまり
走り出します。

あずさは
歩いて追いかけ
駆け足になるまで
追いかけました。

息が上がって
あずさは
立ち止まってしまいました。