ロフト付きはおもしろい

ロフト大好きの68歳の老人の日記です

ブログ小説「和巳の恋」第7話

ふたりは
問題集に記入した
答えと
模範解答を
照らし合わせました。

和巳は
間違った解答にチェックを入れ
男性の方は
合った方にチェックを入れました。

80問の正誤を確かめるのには
少々時間が要りました。
最後に
数を数えました。

数えたふたりは
お互いに顔を見合わせました。

和巳は
相手がチェックだらけなので
滑ったかもしれない
と考えたのです。
一方
男性は
和巳のチェックが少なかったので
これまた滑ったかも知れないと
思いました。

ふたりは相手のことを
考えて
しばらくの間
黙っていました。

しばらくの沈黙のあと
ふたりは
「どうだった」
と言ったのです。
それから
「あまり分からない」
と同じように言って
相手のことを考えて
少しごまかして
答えました。

和巳は
遠慮がちに
「私なんか三度目です。
がんばって」
と言いました。

男性も
「私も二度目です。
がんばってね」
と答えたのです。

それから
お互いに相手は落ちたものと
思っていたのです。

何となく無口になって
時間が流れました。

出てきたコーヒーを
飲み干して
外に出るのです。

駅まで
同じように無口で
一緒に歩いていきました。
今までの
混み合った道には
受験生がいませんでした。

帰りの切符を
ふたりは同じように
財布から取り出し
大阪行きの
普通電車に乗りました。

南方を過ぎた頃
和巳は
「どちらに帰るの?
メルアド交換しない。」
と少し勇気を出して言いました。

男性は
「谷町
メルアド教えるね」
と答え
携帯を出して
操作を始めました。
和巳も
携帯を出して
向かい合わせて
ピッとやりました。

十三で
和巳は下りました。

和巳には
男性が
見送っているように
背中に感じました。