十詩子は話した後で ちょっとドキッ としました。 いつもは 聞き手に回っているのに 話してしまったことを 後悔しました。 会社の管理者研修で 部下の扱い方を 勉強し その中で 男の自尊心には注意するように と言うのがありました。 それで自慢話をしてしまって 悟のプライドを 傷つけたのではないかと 心配しました。 でもそんな心配をしたら もっと 悟に悪いと思い 頭の中では 矛盾でいっぱいでした。 そんなことを考えていると 悟が 「授業もう始まるんじゃないの」という声で気がつき 「じゃ また明日ね」と言って 別れました。 十詩子は 悟との話もあったように 職階級で課長代理 プロジェクトの チーフになっていたのです。 これから大きくなる 電子計算機を使った仕事の一角を 十詩子は しょって立っていくようになっていきます。 仕事に忙しい十詩子と 受験勉強に忙しい悟でしたが ほぼ毎日 20分くらい 会っていました。 十詩子にとってはそれは 唯一楽しみでした。