十詞子は すこし高めに見える 指輪を左手薬指につけました。 イミテーションリングですが 見かけは 立派で落ち着いていて 十詞子によく似合っていました。 それをつけていると 部下にも安心して 接することが出来ました。 一方 悟は 例の受けた試験の結果がやってきました。 悟は私立大学ですので 国立一期校の 面々が受験する 採用試験に 合格するのは 「すこし困難があるかな」 と思っていたのですが、 試験だけには 強運の 悟は 二つとも合格していました。 大阪市の採用試験は 試験に通れば 採用になるのですが 国家公務員試験は 採用者名簿に載ったと言うだけで 採用されるかどうか あるいはまた 東京の国の機関に 採用されるかは まだ分かりません。 それで 十詞子には 言えませんでした。 夏に 十詞子が帰ってきた時も 就職が 話題に出たけど 9月解禁で まだ分からないと言うようなことを 話していたのです。 夏が過ぎて だんだんと寒くなってきて 11月になりました。 その頃 悟の母親は 悟の結婚を 強く勧め始めました。 「社会人になるし 26歳だし 早く結婚しないと いい人が無くなる」と いつも言って 見合いを勧めたのです。 もちろん悟は 十詞子が好きで 結婚するなら 十詞子と 決めていたので 母親にも 断っていました。 11月の終わりごろ 待ちに待った 東京の大学から 建築職の 採用のために 面接に出向くように 通知がありました。 悟は 「やったー これで 十詞子と 東京で 結婚できるぞー」 と叫んでしまいました。 12月のはじめ 寒い日でしたが 面接に行きました。 面接は 簡単なもので 特に問題はありませんでした。 面接が終わったのが 2時ごろでしたので 十詞子に 会いに行こうと 思いました。 それも黙って 行って びっくりさせようと思いました。 前から聞いていた 十詞子の東京本社に 行ったのです。 着いたのは 4時前で 入り口を入って 受付で 聞いてみようとした時 エレベーターホールに 「ピンポン」と音が鳴って エレベーターが着き 中から 数人の男女が 降りてきたのです。 悟は 何気なくその方を 見ると その中に十詞子が居たのです。 悟は 十詞子の手を見て 雷に打たれたような 大きな衝撃を受けました。