ロフト付きはおもしろい

ロフト大好きの71歳の老人の日記です

過去に戻ってしまったわ 全話

過去に戻ったらと思うことはないでしょうか。
でも、
過去に戻ると
大変なことになると思います。




この話は
すべてフィックションです。

真由子は、
「歳をとってしまったわ。
若いときの張りがあったのに
たるんでしまったわ。

そうだシワ取りでもしましょうか。
でもそんなお金ないな
でも今がやっぱり幸せなのかも知れないわ」
と鏡を見ながら
ひとりごとを言ってしまいました。

真由子は57歳
駅の中のキオスクに勤めているのですが
同僚の中に
新型インフルエンザが発症した者がいて
自宅待機になって
今日は久しぶりに家にいたのです。

真由子は今は
ひとり暮らしです。

朝ご飯を食べて
ゆっくりしていたのです。


その時と同時刻
地球の裏側の
この物語と全く関係ない人物がいました。
この人物は30年前のある時の出来事が
今の不幸の始まりです。
それをかわいそうに思った
天地創造主の神様は
時間を一気に30年さかのぼらして
救ってやろうと思ったのです。

神様は
そんなことを
よくやっているのですが
30年もさかのぼるのは
120年ぶりです。

神様は
30年前のデータ通りに今のこの世界を
作り直すのです。
そのために神様は35ナノ秒かかってしまいました。
それだけでは
記憶がある動植物には不都合を生じますので
同じように30年前の記憶に置き換えます。
しかしこれが神様にとっても意外と大変なんです。
神様によれば
記憶の型は23種類あって21番目の型には
253種類の亜種がそしてその121番目の亜種に
またまた1054の分類があるのです。
これらを違う手順で30年前の記憶に戻すのです。
これをすべて戻すのに
神様としてはすごく時間がかかって
124ナノ秒もかかってしまって
神様は大変疲れてしまいました。

神様が過去に戻すのに要した
159ナノ秒が過ぎて
全世界は
30年前に帰ってしまいました。
1979年の5月の23日になったのです。
全世界の人は
何もなかったように
30年前を受け入れ
同じように時間を過ごしていきました。

そんな中
真由子だけは違っていたのです。
真由子は神様の記憶の分類で

21番目の型で121番目の亜種で
1054番目だったのです。
記憶の型は7S25P型だったのです。
この型の生物は世界には3個体しかいませんでした。
ひとつは犬でもうひとつはウサギで
そして残りは真由子だったのです。
神様は7S25P型の記憶が
特別な型で
全く違う方法で記憶を戻さなければならなかったことを
すっかり忘れていたのです。

そんな理由で
真由子だけが
30年間の記憶を持って
30年前の世界に戻ってしまいました。
鏡を見ていた
真由子は
一瞬くらっとしら
次の瞬間
チューナー工場の
ラインにいました。

真由子が
1979年5月23日には
チューナー工場で働いていたのです。
チューナーとは
ロータリーチューナーと言って
30年経った今では
現にそんな物を見ないし
そんな言葉を知らないと思います。
まして作っている工場は
とっくの昔になくなってしまっています。

そんな工場の組立ラインに
突然舞い戻った真由子は
何だかわからなくなってしまいました。

他の人は
すべて30年前に体も記憶も戻ってしまっていますので
特に驚くこともなく
当時と同じように仕事をこなしていました。
しかし
真由子は
体は戻っていましたが
記憶が戻っていない真由子だけが
突然の変化に
戸惑うというか
青天の霹靂というか
訳がわからぬ出来事でした。

もっと驚いたのは
すぐ横に
冴子がいたのです。
冴子を見た真由子は
つばを飲み込み
冴子に
「冴子!
冴子じゃないの?」
と大声で叫びました。
冴子をはじめ
工員のみんなは
真由子の方を不思議な目で見ました。

冴子は
「何大声出しているの?
ベルトコンベア流れてるのに
早くしないとダメじゃないの。」と答えました。

そう言う冴子に
「そうよね
手を動かさなくちゃいけないわね。
どんな風にするの?」
と答えました。

「何言ってんの
職長!
交代要員を」
と大声で言いました。
すぐに交代の工員さんがやってきて
真由子と交代しました。

真由子は
なぜかわからないけど
仕事をしなくてはならないと
交代要員の手元を見ました。

昔やってたことだし
要領の良い真由子は
すぐに思い出して
代わってすることになりました。

何か何だかわからない内に
真由子は
心も
30年前の工場に戻っていました。

突然の慣れない作業を
何とかして
昼まで続けました。
ベルトコンベアにのって
部品が流れてくるので
決められた位置に
部品を取り付ける仕事です。

否応なしに
作業をしないと
どんどんたまってくるのです。


そんな忙しい仕事も
12時のベルが鳴ると
ベルトコンベアが止まって作業は
終わりました。

真由子は
大きなため息と伴に
作業を終えました。
真由子は我に帰って
冴子に
「冴子
冴子よね」と
何とも言えない表情で
尋ねました。

冴子:
何言ってんのよ。
今日は変よ
どうしたの

真由子:
だって
私どうしたのかしら
私何だかわからないわ
今日夕方
話できないかな

冴子:
いいよ
なんか悩みあるの
彼氏できたの・

真由子:
そんなんじゃないわ

冴子:
真由子大丈夫
今日の真由子は変だわ

真由子:
だから夕方話すわ

そんな会話をしながら
真由子は
黙ってしまいました。

真由子が不思議に思っている理由は
冴子は亡くなってしまっているのです。
工場に勤めて帰宅の途中に
暴走してきた車にはねられて
亡くなってしまうのです。
確か暑い日だったので
7月頃かと思うのですが
冴子は真由子目の前でなくなったのです。

午後の作業始まり
真由子は
冴子の顔を見ました。
そして作業を始めました。

真由子は
午後の仕事は
相当手慣れて
仕事が滞ることなく
うまくできました。

少し仕事に余裕ができたので
このかわり方を
仕事をしながら
考えました。

「お手洗いに行ったとき
自分の顔を
見たら
若返っていたわ。

映画で見る
タイムスリップとは違うわよね。
私も若返っているんだし、、

でも亡くなったはずの
冴子もいるのよ。

ひょっとして
冴子がまだ生きていた
時代になったのかも知れないわ。

今はいつなんだろ-。」
と考えながら
周りを見ました。

日付が入った要領指図書を
読んでみると
1979年5月23日と書いてありました。

「えー
1979年なの
30年前じゃないの
私は
27歳なの
若いよねー

若くなるのはいいけど
若くなると言うことは
また試練の人生を歩まなければならないのー
そんなことないよね
やっぱりまた同じ人生を歩むのかしら
そんなことないよね。」

などと
あーだとか
こーだとか
考えながら
午後の仕事が終わる終業のベルが鳴りました。
仕事が終わると
冴子と一緒に
更衣室に行って
服を着替えました。
何と言うことでしょう。
30年前に着ていたであろう
服が
真新しく
ロッカーに吊ってありました。
懐かしい水玉模様の
ワンピースです。
その服は
気に入っていましたが
結婚するときに
古くなったので
捨ててしまっていました。

冴子も
今日の十詩子は変だと
思っていたので
早く着替えて
一緒に退社しました。

冴子と一緒に
真由子は
会社近くの
喫茶店に入りました。
他の所まで行く時間さえ
惜しいとふたりは考えたのです。

冴子:
大丈夫なの
今日真由子

真由子:
私今日は何だか変なの
今日は何日なの

冴子:
今日は23日よ

真由子:
そうじゃなくて
何年なの

冴子:
1979年5月23日よ
何でそんなこと聞くのよ

真由子:
んー
そうなのか

真由子は
本当のことを言っても
冴子は信じてくれないし、
どうしていいかわからなくなりました。

冴子:
どうしたの?

真由子:
んー
今日何だか変なの
突然頭が
ボーとして
変なの
ぼけたのかな

冴子:
何言っているのよ
まだ27歳でしょう
ぼける歳でもないでしょう。
おばあさんじゃあるまいし

真由子:
そうよね
ところで
冴子
冴子は大丈夫?

冴子:
もちろん私は元気よ

真由子は
冴子が亡くなった日を
思い出そうとしましたが
なかなか思い出せません。
確かもう少し暑かったような気がする。
今日では絶対にないと思うので
その日が来るまで
秘密にしておこう。

真由子:
大丈夫
大丈夫
今日どこ行く?

ふたりは
真由子にとっては
本当に久しぶりに
大阪に遊びに行きました。
仕事が終わると
冴子と一緒に
更衣室に行って
服を着替えました。
何と言うことでしょう。
30年前に着ていたであろう
服が
真新しく
ロッカーに吊ってありました。
懐かしい水玉模様の
ワンピースです。
その服は
気に入っていましたが
結婚するときに
古くなったので
捨ててしまっていました。

冴子も
今日の十詩子は変だと
思っていたので
早く着替えて
一緒に退社しました。

冴子と一緒に
真由子は
会社近くの
喫茶店に入りました。
他の所まで行く時間さえ
惜しいとふたりは考えたのです。

冴子:
大丈夫なの
今日真由子

真由子:
私今日は何だか変なの
今日は何日なの

冴子:
今日は23日よ

真由子:
そうじゃなくて
何年なの

冴子:
1979年5月23日よ
何でそんなこと聞くのよ

真由子:
んー
そうなのか

真由子は
本当のことを言っても
冴子は信じてくれないし、
どうしていいかわからなくなりました。

冴子:
どうしたの?

真由子:
んー
今日何だか変なの
突然頭が
ボーとして
変なの
ぼけたのかな

冴子:
何言っているのよ
まだ27歳でしょう
ぼける歳でもないでしょう。
おばあさんじゃあるまいし

真由子:
そうよね
ところで
冴子
冴子は大丈夫?

冴子:
もちろん私は元気よ

真由子は
冴子が亡くなった日を
思い出そうとしましたが
なかなか思い出せません。
確かもう少し暑かったような気がする。
今日では絶対にないと思うので
その日が来るまで
秘密にしておこう。

真由子:
大丈夫
大丈夫
今日どこ行く?

ふたりは
真由子にとっては
本当に久しぶりに
大阪に遊びに行きました。
真由子と冴子は
近くの阪急稲野駅から
電車に乗って
塚口で急行に乗り換え
大阪へ行きました。

大阪に着くと
できたばかりの
「川の流れる街
阪急三番街」に行きました。

中に大きな滝があって
そこから
川が流れているのです。

ふたりは
何度も来ているので
よく知っているはずでしたが
真由子は
30年も前のことで
当時のことが思い出せませんでした。

冴子の後を付いて行くのが
関の山でした。

中央口から下りて
大きな階段を
2階下りて
地下の入り口に着きました。

右側に
今はいませんが
受付嬢がいるのです。

そこを通って
店を見て回りました。

十詩子には
懐かしく思いました。

昔のファッションですし
色づかいですので
懐かしく思ってしまいました。

喫茶店に行って
甘いケーキと
コーヒーを注文しました。

その味も
何か懐かしく思うのです。
コーヒーや
ケーキも何だか古く感じました。
甘さや苦さにも
流行があるのかも知れないと
思うようになりました。

そんな発見をして
家の寮に帰ることにしました。

工場の近くの寮で
冴子とふたりで住んでいたのです。
真由子と冴子は
近くの阪急稲野駅から
電車に乗って
塚口で急行に乗り換え
大阪へ行きました。

大阪に着くと
できたばかりの
「川の流れる街
阪急三番街」に行きました。

中に大きな滝があって
そこから
川が流れているのです。

ふたりは
何度も来ているので
よく知っているはずでしたが
真由子は
30年も前のことで
当時のことが思い出せませんでした。

冴子の後を付いて行くのが
関の山でした。

中央口から下りて
大きな階段を
2階下りて
地下の入り口に着きました。

右側に
今はいませんが
受付嬢がいるのです。

そこを通って
店を見て回りました。

十詩子には
懐かしく思いました。

昔のファッションですし
色づかいですので
懐かしく思ってしまいました。

喫茶店に行って
甘いケーキと
コーヒーを注文しました。

その味も
何か懐かしく思うのです。
コーヒーや
ケーキも何だか古く感じました。
甘さや苦さにも
流行があるのかも知れないと
思うようになりました。

そんな発見をして
家の寮に帰ることにしました。

工場の近くの寮で
冴子とふたりで住んでいたのです。
寮に帰ったふたりは
部屋に入りました。

この寮は
真由子が
高校を出て
すぐに
冴子と住み始めたので
すでに9年になります。

でもこの後
会社がなくなって
寮も潰され
ながく空き地になっていましたが
5年前に
立派な分譲マンションが
建っていました。

そんな寮の部屋は
真由子にとって
懐かしさ
以外の何物でもありません。

服がしまってある
押入を開けると
その服の
古いこと
懐かしいこと
の限りです。
スカートの丈は
短くなっていました。

共同風呂を
ふたりで入って
懐かしい布団で寝ました。

翌日起きて
会社に行くのですが
どんな服で行こうか
悩みました。

会社まで
徒歩5分ですが
私服で行くのです。

当時なら
さっと撰んでいたんですが
今は撰べません。
というのは
当時のファッションが
今のファッションと全く違っていいるからです。

真由子は
重ね着をしてみました。
ジーンズのパンツの上に
夏用のワンピースを
着てみたのです。
短いワンピースだったので
今風の
重ね着ルックです。
横にあった布を
首に軽く巻いたら
もっと
今風になりました。

そんな格好をして
行こうとしたら
冴子が
『えー
何-
何なの?????
○×△□、、、、

」
と言葉にならぬ事を言ってしまいました。

冴子は
ズボンの上に
スカートを履くなど
考えにも及びません。

真由子は
やっぱり
こんな格好は
良くないとは思っていたのですが
遅れないように
着替えてすぐに会社に行きました。

会社に行ったふたりは
いつものように
着替えて
作業に入るのです。

その前に
ラジオ体操をすることになっています。

十詩子は懐かしくなりました。
当時はラジオ体操がうっとうしく思っていたのに
何だか懐かしく
ラジオ体操を
気合いを入れて
してしまいました。
体が57歳から
27歳に戻ったので
軽く感じたからかも知れません。

あまりにもがんばってするので
冴子は
「真由子が
やっぱりおかしい」
と感じていました。

その後
工場長が
朝礼の挨拶をするのです。
それさえも
真由子は
新鮮で
懐かしく思いました。

それから
ラインに行って
座り
サイレンが鳴って
仕事が始まります。

真由子は昨日やっているので
同じように
作業をしました。

がんばって
しました。
昨日
やり始めたのに
割りの
重労働なのに
筋肉痛になっていないのが
真由子には不可解でした。

57歳でも
働いていますが
駅の
売店の店員なので
それほど
重労働ではないのです。

真由子は
若くなったことが
何だか
嬉しくて
がんばってみました。
真由子にとっては
みんな新鮮な
工場でした。

そんな新鮮な日々も
段々と過ぎていき
冴子が
事故に会う8月5日が近づいてきました。

真由子は
何としても
冴子があんな目に遭うことを
阻止しなければならないと
考えたのです。

真由子は
まずあの時間に
冴子を交差点に
いないと
事故に遭わないと考えました。

しかしひょっとして
時間が違っても
事故に遭うかも知れないと考えました。
事故に遭うことが
運命になっていたら
時間ぐらい変えても
変わらないかも知れないと考えました。

やっぱり
8月5日は
会社を休んで
別のところに行った方が良いのかもしれないと
考えました。

それで
泊まりがけで
どこか行けばいいのではないかと
結論に達しました。

真由子は
冴子に
今度の
8月の5日に
旅行に行かないと
言ってみました。

そんなに
突然の
真由子の言葉に
冴子は
びっくりしました。

冴子:
エー突然ね
どこ行くの

真由子:
えーっと
えっーっと
そうね
有馬温泉なんかどうかな

行き先まで考えていなかったので
知ってるところを
言ってみただけでした。
有馬温泉くらいしか思い出せなかった
冴子には理由があります。
冴子のこの後の人生は
大変なことになって
温泉に行くなどと言う
余裕など無かったのです。

それはさておき
この時は
有馬温泉に行こうと言ってしまったのです。

冴子:
有馬温泉?
そうね
温泉ね
良いかもしれないね

真由子:
そうでしょう
良いでしょう
行きましょう

冴子:
なぜ8月5日なの

真由子:
だって
暇だし
8月5日がいいと思います。

冴子:
そうなの
8月5日が良いの
そうよね
思い立ったが吉日だものね
その時に行かないと
一生いけないかも知れないよね。

真由子:
そうだよね
絶対そうだよ
いま行かないと絶対にいけないよ

冴子:
そんなことないよ
いつだって行けるんじゃない
もう死ぬみたいに言わないで

真由子:
そうよね
有馬温泉くらいいつでも行けるよね
そうよね

真由子は思わず
冷や汗が出てしまいました。
そんなことを
言えませんでした。

ふたりはその日
課長に休暇願を出して
8月5日に
一泊二日の有馬温泉に出かけることになりました。

冴子が
交通事故に遭うのを阻止するために
真由子が取った最善の方法だったのです。

でもこれが
冴子の未来を変え
真由子の未来も大きく変えるのです。
有馬温泉くらいしか思い出せなかった
冴子には理由があります。
冴子のこの後の人生は
大変なことになって
温泉に行くなどと言う
余裕など無かったのです。

それはさておき
この時は
有馬温泉に行こうと言ってしまったのです。

冴子:
有馬温泉?
そうね
温泉ね
良いかもしれないね

真由子:
そうでしょう
良いでしょう
行きましょう

冴子:
なぜ8月5日なの

真由子:
だって
暇だし
8月5日がいいと思います。

冴子:
そうなの
8月5日が良いの
そうよね
思い立ったが吉日だものね
その時に行かないと
一生いけないかも知れないよね。

真由子:
そうだよね
絶対そうだよ
いま行かないと絶対にいけないよ

冴子:
そんなことないよ
いつだって行けるんじゃない
もう死ぬみたいに言わないで

真由子:
そうよね
有馬温泉くらいいつでも行けるよね
そうよね

真由子は思わず
冷や汗が出てしまいました。
そんなことを
言えませんでした。

ふたりはその日
課長に休暇願を出して
8月5日に
一泊二日の有馬温泉に出かけることになりました。

冴子が
交通事故に遭うのを阻止するために
真由子が取った最善の方法だったのです。

でもこれが
冴子の未来を変え
真由子の未来も大きく変えるのです。
有馬温泉での
温泉三昧は
本当に楽しかったです。

美味しいものも
食べることが出来たし、
卓球もふたりは楽しんだし
満足な小旅行でした。

でも冴子は
六甲の野山を散策したかったんですが
真由子が
旅館の中からでなかったので
それだけが心残りでした。

ふたりは
また電車に乗って
帰りました。

まだ日がある内に
部屋に到着して
真由子は
一安心しました。

冴子は
部屋で
疲れのためか
ぼやっとしているので
真由子は
気になって
例の交差点に
見に行きました。

冴子は
犠牲にならないけど
誰か
他の人が
事故に遭っていないか
気になっていたのです。

確かめるのは
明日でも良いかもしれませんが
どうなったか知りたかったのです。

交差点に行くと
特に変わった様子はありませんでした。
ひとつだけ言うと
道路の縁石に
タイヤ痕が付いていたのです。

真由子はやっぱり
何かあったのに違いないと思いました。

ちょうどその時
会社の同僚が来たので
聞いてみました。
同僚の言うのには
「夕方ここで
自動車の事故があった。
信号を無視して
出てきた自転車をよけようとして
自動車が
歩道に乗り上げた。
自動車は
電柱に当たって
メチャメチャに
壊れた。
でも運転手は
ケガがなかったそうです。」と

真由子は
誰もケガがなくて
ホッとしました。
誰もケガがなくて
安心して
寮に帰りました。

もう事故は起きないと
思いました。
何かウキウキして
冴子の待っている部屋に帰りました。

冴子は
少し疲れたのか
ベッドで横になっていました。

真由子は
笑顔で駆け寄って
「早くご飯食べに行こうよ」
と言いました。

冴子:
真由子何なの
何か良いことあったの

真由子:
あると言えばあるのですが

冴子:
何なの
何が良いの
彼氏でも出来たの
今どこかに行ってたのは
そのためなの
そんな短時間で
出来たの

真由子:
そんなわけないでしょう
早くご飯食べに行こうよ
おなかなんかすいちゃって

冴子:
有馬温泉であんなに食べたのに
まだすいているの
本当に?

ふたりは食堂で
夕食を
わいわい言って
食べました。

翌日
いつものように
会社に出かけ
いつもと同じように仕事をして
工場の食堂で
昼ご飯を食べました。
食事をして
少し休んでいると
課長が横を通って
冴子に声を掛けてきました。

課長は
冴子に
「定時で終わった後
少し話があるので
課長室に来て欲しい」と話しました。

冴子は
何かわからないけど
「はい」と言いました。

真由子と
冴子は
何となくわかっていました。

課長は
仲人をするのが
大好きで
あっちの女性と
こっちの同僚の息子を出会わせたり
向こうの工員さんと
同系列の会社の工員さんの中を
取り持ったりしました。

真由子も
冴子も
きっとそれだと
口には出さないけど
思いました。
真由子はいつものよう
定時に退社して
寮に帰って
洗濯をしていると
遅れて
冴子が帰ってきました。

真由子:
冴子何だったの

冴子はちょっと笑いながら
冴子:
やっぱり見合いのお話だったわ

真由子:
そうなの
相手は誰なの

冴子:
まだ会っていないから良くわからないけど
伊丹工場の研究室の
何か言ったな
野村さんかな
たぶん

その言葉を聞いて
真由子はびっくりしました。
真由子:
野村さんて
野村義男
、、、
さんなの

冴子:
真由子どうしたの
そんなに真剣に
相手の人の名前まで聞いていないわ
ひょっとして
真由子
野村さん好きなの
知っているの
それじゃ私と
見合いしたらダメじゃないの

真由子は
我に帰って
冷静に考えながら

真由子:
そんなことないよ
前に
ちらっと見ただけなの
工場の用事で
研究室に行った時に
会っただけなの
もちろん
何の関係もないよ


真由子はそう言いながら
どうしようかと
考え込みました。

野村義男とは
真由子が結婚した相手なんです。
真由子にとっては
時間の流れが
行ったり戻ったりしたので
こんがらがってしまいました。

(お読みになっている読者の方も
わからないので
今後
真由子が戻るまでの世界を
「前の世界」
戻った時を
「今の世界」と言います。)

野村は前の世界では
良くできた夫でした。
真由子に優しく
子供にも優しく
理想的な夫だったのです。

真由子は
見合いであって
その後すぐに結婚して
何もわからなかったけど
時間が経つにつれて
野村が好きになっていったのです。

その野村が
今の世界では
冴子と見合いをするのです。

前の世界では
冴子は
不意の事故で
亡くなってしまうのです。

前の世界で
そう言えば
課長が
野村の見合い話を
私にした時
冴子の相手であったけど
不幸が起きたので
真由子に
回ってきた
と言うようなことを
話していたような
記憶が
戻ってきました。

真由子は
どうしようか
迷いました。

冴子に
「前の世界」では
野村は
私と結婚することに
なっている
なんて言ったって
信じないだろうし
そうかといって
冴子の見合いが
うまくいかないように
画策するなんて
出来ないことだし、
真由子は
どうすればよいか
全くわからなくなりました。

お布団に入って
真由子は
眠れませんでした。
朝まで考えても
良い考えが
出るわけでもなく
眠たい目をしながら
会社に向かいました。

冴子は
真由子が
意気消沈していることは
わかりましたが
なぜそうなったのか
親友なのに
わかりませんでした。

でも
野村との
見合い話を
してから悪くなったので
ひょっとしたら
そのことと関係があるのかも知れないと
思いました。

その日は
冴子は
真由子と話すこともなく過ぎました。

真由子自身は
野村と結婚しなければ
ふたりの娘も
生まれてくることはない
そうなれば
孫も生まれてこないと言うことになります。

私は
今の世界を変えてしまって
前の世界通りにならなくなってしまったのです。

冴子を助けたことが
こんなに大きな
変化をもたらすとは
思ってもいませんでした。

その日の夜は
あまりにも眠たくて
寝入ってしまいましたが
夜に目が覚めてしまいました。

翌日も眠たい目で
出勤した真由子を見て
冴子は
尋ねました。

冴子:
真由子元気ないけど
どうしたの

真由子:
別になんでもないけど

冴子:
そうなの
でも目が赤いよ

真由子:
そうかな
卯年だからかな

冴子:
何いってんのよ
卯年は私でしょう
あなたは子年でしょう

真由子:
そうだったですよね

冴子:
何か悩み事でもあるんでしょう
私の見合い話と関係があるのでしょう。
野村さんのこと
真由子は知らないと言っていたけど
本当は好きなんじゃないの
課長に
言ってきましょうか
見合い話を
変わるように言いましょうか

真由子:
、、、、、、、、、
、、、、、、、
、、、、、、、
○×△
□○?%&

冴子:
何言ってんのよ
わからないわ

真由子は
冴子の提案に
お願いと言いたいですけど
悩んでいました。
でも素直に、、、
冴子が
見合いを代わってくれると
言ってくれたことに
真由子は
電流が流れるように
全身がバシッと
感じました。

嬉しくて
少し躊躇しましたが
次の瞬間
「ありがとう」と
高揚した声で
冴子に言ってました。

冴子は
ちょっと言ってみただけなのに
そんなに喜んで
言われると
本当にそうするしかなくなってしまいました。

冴子:
真由子
野村さんのこと好きなの
どこで会ったのよ
そんな人がいたって私に話さなかったじゃないの。

真由子:
ごめんなさい
ありがとう
野村さんとは
会ったことはないけど
見ただけだけど
どう言ったらいいのかな

冴子:
会ったことないのに
なぜ好きになったの
わからないな
でも良いわ
真由子とは親友だし
私は野村さんのことは何にも知らないんだから
明日課長に言ってみるわ
真由子も来なくてはいけないよ

真由子:
ありがとう
本当にありがとう
本当に本当に

冴子:
そんなに言ってくらなくても良いのよ
冴子のちょっと言った言葉を
「利用して」
見合いを
代わってもらうことになった真由子は
定時に終了した仕事の後
冴子と伴に課長のところに行きました。

課長は
ふたりそろってきたので
どんな話かわかりませんでした。

冴子が言い出しました

冴子:
課長
今度のお見合いですが
真由子に代わることは出来ないでしょうか。
真由子が
野村さんのこと好きみたいなんです。
真由子が代わって欲しいというものですから

課長:
へー
見合いを代わるって
どういう事かな
今までそんなことはなかった。
真由子さん
野村さんとそう言う仲なの

真由子:
えー
そのー
別にそんな仲ではありません。

課長:
そうなの
真由子さんの片思いなの
野村君は
君のことを知っているの

真由子:
今は知らないと思います。
いや知らないと思います。

課長:
そうなの
野村君には
見合いの話はしたけど
相手の事については
まだ話していないから
誰でも良いとは言わないけど
真由子さんなら問題ないと思うけど
冴子さんそれで良いの
野村君は好青年だよ

冴子:
すみません
それでお願いします。

課長:
じゃそう言うことにするよ
真由子さん
釣書書いてきてね

真由子:
はい
書いてきました。

課長:
ホー用意が良いな
じゃ野村君に話しておくよ
君はいつが都合がよいかな
日曜日になるけど

真由子:
何時でもいいです。
早いほうが、、、、

課長:
わかっているよ

そう言って
真由子は
課長に
深々と頭を下げてました。
前の世界では
結婚することになっている
野村とのことも
真由子は何か不安になりました。

私が冴子を
助けたことで
前の世界と
今の世界は
大きく変わってきているのではないか。
だとすると
野村と結婚も出来ないこともあり得る
と考えました。

前の世界では
冴子の代わりに
課長に勧められて
何となく野村と見合いしたら
お互いに気に入ったというか
課長の「押し」に負けて
何となく結婚してしまったのです。

結婚した後
ふたりは
だんだんと
恋人同士になっていったというのが
前の世界の
野村との結婚だったのです。

しかし今の世界でも
その様にとんとん拍子に
いくかどうか分かりません。

野村の好き嫌いは
分かっているので
とりあえず
そんな格好で
見合いに臨まなければならないと
思いました。
用意に用意を重ねて
その日曜日がやってきました。

真由子は
軽く化粧をして
髪を長くして
その先をそろえて
いわゆるワンレングスにしました。
白のワンピースを着て
黒のパンストを身につけて
黒のローヒールの靴を履いて
出かける準備をしました。

冴子はその姿を見て
「そんな格好で良いの
もう少し口紅をつけなきゃ
今日は見合いでしょう
もっと化粧をしないの

それにその服
もっとピンクとか
赤とかないの?

それにその靴は何なの
会社の面接にでも行くつもり???

あったじゃないの
赤のスーツが
そんな質素な服で良いの??
課長びっくりするよ」と
激しく言われてしまいました。

でも真由子は
この風体が
一番好きと
野村が言っていたのを
覚えていたのです。

それで
「冴子
私がリサーチした限りでは
これが一番受けるのよ
とにかくこれが良いの」
と答えました。

冴子は
いつの間に
真由子がそんなことを知っていたのかと
そして
自信たっぷりと話すのを見て
少し
不審に思いました。
そして
真由子は
出かけていきました。

近くのレストランで
課長と
野村と
真由子は会いました。

課長は
野村に
真由子を
「野村君のことを
遠くから見ていた
真由子さんです。」
と紹介しました。

真由子は
一瞬 どきっとしました。

前の世界では
見合いの時は
どんな話をしたのか
全く思い出せません。

食事をとって
ふたりだけで
外に出ました。

野村は
映画館にでも出かけようと
言ってくれました。

塚口駅前の
映画館へ
ふたりで行きました。

そう言うと
前の世界でも映画館だったと思いました。

こんな時に
話す言葉と言えば
趣味だとか
旅行の話だとか
映画の話だとか
わりと話が弾みました。

何しろ
真由子は
見かけは若いですが
57歳で経験豊富だったし
何より相手の野村のことを
よく知っていたから
いろんな話が出来たのです。

しかし
真由子は内心
心配でした。

博学の女性なんて
おもしろくない
女性かも知れないと思ったのです。

野村は
国立大学出身の
研究員ですから
やっぱり賢い女性が好きなのか
それとも
ちょっと
お馬鹿な女性の方が良いのか
野村と話しながら
考えました。

真由子は
「ちょっと失敗したかな」と
思いながら
寮に帰りました。

部屋に帰ると
冴子が
聞いてきました。

冴子:
真由子どうだった
そんな服で
良かったの

真由子:
ダメだったみたい
ちょっと
やり過ぎたかな
やっぱり女性は
おしとやかな方が
良いよね。

冴子:
せっかくかわったのに
そんな結果なの
真由子は
控えめじゃないの
ちょっとこの頃違うけど

真由子:
冴子もそう思うの
私って
ちょっと出しゃばりよね
嫌われるよね
冴子ごめんね

冴子:
別にそんなことないよ、、、

そんな話をして
夕食を食べながら
野村のことを
真由子は考えていました。


翌日
課長に
午後呼ばれました。

もちろん昨日のことを
話すために違い有りません。

真由子を
ドキドキしながら
課長のところに行きました。

課長は
まず
野村の印象を真由子に聞いてきました。


課長:
真由子さん
野村君のことどうだった。

真由子:
野村さんは
いい人だと思います。
でも私嫌われたんじゃないかと
思うんです。

課長:
何故嫌われたと思うの

真由子:
野村さんに
ずけずけといってしまったもので

課長:
そんなに言ったの
道理で
野村君が、、、

(この話は続きます)
真由子:
野村さんは
どの様におっしゃっているんですか。

課長:
そのことなんだけどね
野村君は
『真由子さんは
ぼくより若いのに
何かしっかりしていて
ぼくなんか頼りないんじゃないか』
と言うんですよ。
真由子さん
そんなにしっかりしていたっけ
入社した時は
失敗ばかりしていた
真由子さんなのに

真由子:
そんなー
私って
ドジな女ですよ
しっかり何かしていませんよ。

課長:
それでね
野村君は
少し迷っているようで
どうすればいいか
私に相談してきたんだ。

真由子:
課長
大丈夫です
私きっと
野村さんと幸せになれる自信有ります。
私に
力を貸して下さい。

課長:
おー
真由子さん
積極的だね
前の真由子さんは
優柔不断のように思えたんだけど
野村君に一目惚れしたのか
まだ一回しか会っていないのに

真由子:
そうなんですけど
でも
お願いします。

課長:
んー
そうだね
じゃ
野村君に
ぼくから言っとくよ
真由子さん
ちょっとおしとやかな方が
野村君の好みかも知れないよ
真由子さんは若いんだから
もっと若いように
振る舞った方が
背伸びしたらダメだよ

真由子:
ありがとうございます。
課長よろしくお願いします。
どうかよろしくお願いします。

真由子は
平身低頭して
頼みました。

真由子は
野村と結婚できなければ
どうなるかわからないと
考えました。
やっぱり
野村は
若い従順な女性が好きだったんだと思いました。
30年前の真由子がそうであったように。
何故そんなことに気がつかなかったのだろう。
結婚した当時は
真由子は
世間知らずの
従順な女性であったのです。

体は
今の世界では
27歳だけど
心は
57歳
ちょっと厚かましい女になっていたのです。

次に会える日曜日には
よく考えて
行こうと思いました。

服装も
冴子に言うような
ものにしようと決めました。

冴子も
応援してくれました。

次の日曜日
赤いスーツに
昔よくやっていたような
赤い口紅を付けて
頬紅も少し濃いめに付けました。

約束の
塚口の駅前で待ち合わせをしました。

約束に10分前に行くと
野村は待っていました。

(『そうだ そうだ
野村さんて
本当に几帳面なんですよね

待ち合わせの時間の
30分前から
いつも待っていたわね。

そうだ私はいつも時間ぎりぎりに
行ったものだわ』と
心の中でつぶやきながら
少し伏し目がちに
笑顔で
走っていきました。
こんな動作もするのも
おしとやかさを出すためです。

真由子:
待たせてすみません。
急いだんですけど
何か早くできなくて私ってダメだわ

野村:
そんなに待っていません
今来たところです。

(真由子は
『野村さんて
無理しているわ
もっと早く来ているに違いないのに』
とおもいながら)

真由子:
そうなんですか
それなら良かった

野村:
どこに行きましょうか

真由子:
私はどこでも良いです
野村さんの後を付いて行きます。
私優柔不断だから
決められないんです。

野村:
そうなんですか
前にあった時は
もっと、、、
そうなの

そう言いながら
映画館に行きました。
真由子は
後から付いて行きました。
その日は
従順に徹しました。

会話が弾まなくても
気を回さずに
真由子は
黙って下を見て黙っていました。

真由子は
絶対におしとやかに
しようとしていたのです。

野村は
少し困ったようにも見えましたが
「そばにいれば幸せ」
のような顔をして
野村の後を付いて行きました。

映画館の後
喫茶店に入って
黙ってコーヒーを飲んでから
暗くならないうちに
寮まで送られて
帰りました。

真由子は
送ってくれた
野村の背中を
見えなくなるまで
見送りました。

部屋に帰ると
冴子が聞いてきました。

冴子:
どうだった。
楽しくできた。
野村さんにその服なら気に入られたでしょう。
やっぱり女は可愛くなくっちゃ

真由子:
冴子ありがとう
今日は良かったわ
やっぱり冴子の言う服を着ていって

冴子:
そうでしょう。
やっぱり口紅は
ピンクが良いのよ
服もピンクよね

真由子:
そうよね
昔はそうだったよね
いやそうだよね

冴子:
昔って何?

真由子:
いや昔って
何でしょうね

真由子の
57歳になって
また訪れた
純愛は
冴子の応援や
課長や周りのみんなの応援で
実を結ぶことになります。

こんなお付き合いをしながら
二人は
課長に
仲人のお願いに行きます。


真由子は
野村と結婚が決まって
ヤレヤレでした。

生まれてくるはずの
子供が
生まれることになったのと
また新婚生活が出来るのが
嬉しくて嬉しくて
天にも昇る気持ちです。

前の世界でも
野村のおじいさんが
その年になくなったので
結婚式は
翌年の
春になりました。

結婚まで
野村と
真由子は
仲の良いですが
清純なお付き合いでした。

前の世界では
それが何とも思わなかったのですが
今の真由子には
まどろっこしい様な
歯がゆいような
思いになりました。

そのことはさておき
野村のことを
代わってもらった
冴子には
何となく悪いような気がしていたのです。

それで
真由子は
考えました。

野村の
友人で
前の世界では
30年後
独身の
林を
紹介したらどうかと考えたのです。
林を冴子に紹介するには
野村の力がいります。

でも野村に
そんなことを話すと
不審がるかも知れないし
おしとやかな真由子には反する。

でも私のために
結婚できなくなる
友人の冴子のことを考えると
何とかしなければならない。

そこで野村に話すことにしました。

真由子:
野村さん
私の親友に冴子というのがいるの
こんなこと
お願いして変だけど
冴子が
お付き合いできるような人
いませんでしょうか。

野村:
真由子さん
親友なんですね
近頃のことだから
その友達にも
男友達や
思っている人がいるんじゃないの

真由子:
それが
今までの私と同じで
全くいないの
私は野村さんと結婚して
良かったけど
冴子を見ていると
何だか

野村:
本当に友達なんだね
冴子さんてどんな人かな

真由子:
ちょっと小柄な
かわいい人よ
優しい性格だわ。

野村:
そんないい人なら
誰か紹介してみたいものですね
でも
ぼくには
そんな人にぴったりの
友達はいないな

真由子:
よーく考えてください
野村さん
、、、
、、、
、、、

あっ
林さんなんか良いんじゃないの

野村:
林か
林は良い奴だけど
、、、
、、、
、、、
真由子さん
林を知っているの

真由子はドキッとしました。
真由子は
野村が
なかなか林のことを言わないので
ついつい言ってしまったのです。

そう言えば
前の世界では
野村の友人の
林を
紹介されたのは
結婚式の日でした。

しまったと思った
真由子は
ごまかそうと必死です。

真由子:
えっ、、
林さん
前私に言っていたじゃないの。
林は良い奴だと
確か言ってたでしょう

野村:
言ったかな
林は良い友人だけど
真由子さんに言ったかな。

野村は不審そうに言いました。
真由子は
本当のことを
言った方が良いかどうか迷いました。
でもそんなこと信じて
もらえないと思うので
やっぱり言えませんでした。

野村は
真由子が
林を知っているのは
不審に思っていましたが
林と真由子の友達の冴子は
良いカップルになりそうなので
そのことは忘れてしまいました。

真由子の役割は
正月の休みに
冴子を連れ出すことでした。

真由子は
年末冴子に
話をしました。

真由子:
冴子さん
野村さんの見合いを譲って頂いて
ありがとうございました。

冴子:
まだそんなこと言ってるの
もうその話は良いわ
真由子と野村さんは
良いカップルだわ

真由子:
冴子さん
単刀直入に言いますけど
お見合いしない?

冴子:
えー
単刀直入ね
誰なの

真由子:
あー
そうなの
野村さんと相談したんだけどね
野村さんの友達に
林さんという人がいるの
林さんは
いい人なのよ
とっても世話やきで
働き者
その上健康で丈夫なの

冴子:
真由子は
林さんを知っているの
詳しいみたいだけど

前の世界では
真由子は
林に大変世話になっていました。
それで林のことをよく知っていたのですが
そんなことは
冴子に言えないので
ちょっとごまかして
次のように言いました。

真由子:
いいえ、、、
私は直接は知らないわ
野村さんに聞いただけなの

冴子:
野村さんとは
何でも話するのね
仲が良いのね
あっ、、
と言うことは
私のことも
野村さんに言ってるんじゃないの

真由子:
言ってません
言ってませんよ

冴子:
本当に言ってないの?

真由子:
信じてくださいよ

ふたりはこんな話をしていましたが
結果的には
冴子は林に会うことになりました。

まだ幕の内の
日曜日に
真由子に連れられて冴子は
林に会いました。
真由子は
年末冴子に
話をしました。

真由子:
冴子さん
野村さんの見合いを譲って頂いて
ありがとうございました。

冴子:
まだそんなこと言ってるの
もうその話は良いわ
真由子と野村さんは
良いカップルだわ

真由子:
冴子さん
単刀直入に言いますけど
お見合いしない?

冴子:
えー
単刀直入ね
誰なの

真由子:
あー
そうなの
野村さんと相談したんだけどね
野村さんの友達に
林さんという人がいるの
林さんは
いい人なのよ
とっても世話やきで
働き者
その上健康で丈夫なの

冴子:
真由子は
林さんを知っているの
詳しいみたいだけど

前の世界では
真由子は
林に大変世話になっていました。
それで林のことをよく知っていたのですが
そんなことは
冴子に言えないので
ちょっとごまかして
次のように言いました。

真由子:
いいえ、、、
私は直接は知らないわ
野村さんに聞いただけなの

冴子:
野村さんとは
何でも話するのね
仲が良いのね
あっ、、
と言うことは
私のことも
野村さんに言ってるんじゃないの

真由子:
言ってません
言ってませんよ

冴子:
本当に言ってないの?

真由子:
信じてくださいよ

ふたりはこんな話をしていましたが
結果的には
冴子は林に会うことになりました。

まだ幕の内の
日曜日に
真由子に連れられて冴子は
林に会いました。
真由子と野村の結婚式が近づいてきました。

真由子は
一層おしとやかに
対応したつもりですが
野村は
不信感は
段々と大きくなってきました。

ある日
野村は
公園で
あいました。

野村:
真由子さん
少し話があるのですが

真由子:
(少しドキッとして
平然を装いながら)
何ですか
改まって

野村:
君は福井の出身でしょう
工場に勤めるようになってから
この地に来たのですよね

真由子:
えー
えっ
そうですが

野村:
こんなことを話すのも
おかしいんですが
真由子さんは
私のことや
私の周囲のことを
よく知っている
話していない
子供頃のことまで
知っている様の思うんだ

真由子:
そんなことありません
野村さんが話して下さったことばかりですよ

野村:
そうかな
ぼくの家に来た時
トイレに
間違わずにいったじゃないか
ぼくの家のトイレは
知っているように
ちょっとヤヤッコシイところにあるのに
間違わずにいったり、

ぼくの家が
いつも裏の玄関から入っているのを迷わず行ったり
林のことを
よく知っているように言ったり
数え上げたら
きりがないよ
本当は
君は
ぼくらは幼なじみ何じゃないの
なんかぼく君に前にあったような気がするんだ。

眞由子はびっくりしました。
私が記憶にあるように
『野村も
記憶があるんじゃないだろうか』
と思いました。
眞由子は
野村が
前の世界の記憶が
あるのかどうか
疑いました。

でも本当のことを
結局は言えずに
ごまかす方をとりました。

真由子:
野村さん
そんなことないですよ
私は高校まで
福井にいて
今の工場に就職して
初めて来たんです。

野村さん
色々と話してくれたから
野村さんは
話したことを
忘れたんですよ

野村:
そうかな

真由子:
そうですよ
それしかないでしょ
初めてあった人だから
聞いた方は
良く覚えているんです。

野村:
話したかな

そんなことを
その日は
ズーッと話していました。

真由子は
本当のことを
言うべきかどうか迷いつつ
ごまかし続けました。

野村は
疑いが解けることはなかったけれども
一応納得しました。

そして結婚式の日が来ました
真由子と野村の結婚式の日がやってきました。
式場は尼崎の文化センターです。
建て替えになって
新しくなっていました。

真由子の両親や親戚は
朝早くから電車で福井からやってきました。
みんなを駅に出迎えて
結婚式場の控え室に入りました。

真由子は30年ぶりに
花嫁衣装に着替えました。
当時の記憶のままの
衣装です。

お色直しも
当時の記憶を
たどって選びました。

ふたりは神式の
結婚式を挙げ
披露宴に臨みました。

真由子は
この時に
悩んでいたのです。
立派なお料理が運ばれてきて
並ぶのですが
前の世界で
苦い思い出があったのです。

それは
この料理で食中毒になるというものでした。

真由子自体は
あまり食べなかった関係で
問題はないのですが
野村や
両親や親戚の人たちは
2日後に
ひどい下痢に襲われます。

この食中毒を
野村に言うべきかどうか
迷っていたのです。
でもそれを言ったら
きっとまた疑われるし
今度疑われると
ちょっとごまかせないことだし
どうして良いか分かりませんでした。

真由子は
帯が苦しくて
食べられないと
みんなに言っていて
問題はありませんでしたが
野村には
どのように
言ったらいいのか
ずーと考えていたのですが
思いつきません。

でも
小さい声で
野村に
「あまり食べない方が良いんじゃない」と
言ってみました。
「食べない方が良いんじゃない」と
真由子に言われた
野村は
ちょっと
またおかしな事を言う
真由子だと思いながら
小さな声で
聞き返しました。

野村:
何故食べない方が良いの

真由子:
んー
皆様が見ている結婚式の
場だから
あんまり
食べ過ぎるのもよくないんじゃないかな-
と思うの

野村:
そうかな
ぼくが食べないと
皆さんがくつろげないんじゃない
ぼくは出された料理を
すべて食べる主義だし

真由子は
やっぱり
こんなこと言っても
ダメだと思いました。

真由子:
そうね
そうよね


真由子は
この時に
やっぱり
野村に
すべてを打ち明けた方が
いいと思いました。

真由子の両親も
出てきた料理を
食べていました。

結婚式自体は
おきまりで
過ぎて
みんなの祝福されて
終わりました。

披露宴が終わって
みんなに見送られて
ふたりで
タクシーに乗って
大阪空港に向かいました。

新婚旅行で
沖縄に行くことになります。

でも前の世界では
少し困った新婚旅行だったのですが、、、
前の世界で
新婚旅行は
楽しめませんでした。

今の世界でも
野村は
披露宴の料理を食べてしまったのです。

沖縄について
飛行場を下りて
空港に迎えに来ていた
観光タクシーに乗り込みました。

真由子は
前の世界の運転手さんと同じでした。

名物の
おもしろい
運転手さんでした。

その日は
ホテルに
直行しました。

ホテルに着くと
お風呂に入って
レストランで
夕食です。

豪華な料理で
真由子は食べきれないくらいでしたが
食べてしまいました。

野村も食事は残さない主義の通り
全部食べてしまいました。

前の世界では
食べた後
激しい腹痛に襲われることになっていたのです。
真由子は心配でした。

やっぱり話した方が良いのか
この先のことも考えると
話した方が良いのかと考えたのです。

実は
野村は
10年後に
癌でなくなってしまうのです。
私が前の世界の話をすると
野村が
きっと将来のことを
聞いてくると思います。

その時に
「あなたは
10年後に亡くなります。」なんて
言えないですよね。

でも言わないと
これから来る
災難を
うまくよけて
生きていけるだろうか。

レストランで
食事を終わって
窓からの夜景を
見ながら
そんなことを
真由子は
思っていました。

そんな時に
野村:
真由子さん何を考えているの
今日は無口だね
疲れたの

真由子:
あー
あっ
ちょっと疲れたみたい。
ところで野村さんは
どうなの

野村:
ぼくは大丈夫だよ
元気はつらつ
とまではいかないけど
問題はないです。


と話ながら
ホテルの自分の
お部屋に
戻っていきました。
新婚初夜の
始まりなんです。
野村も期待したかも知れません。

そして
真由子も
期待していました
体はもちろん初めてですが
記憶は
20年ぶりです。

でも真由子の期待は
大きな不安でした。

そしてその不安は
現実のものとなります。

真由子は
もう一度
お風呂に入ってから
寝ようと
お風呂に行きました。

真由子は
すぐにお風呂を上がって
野村にも勧めました。

野村は
フンと言いながら
少し疲れた様子を見せました。

野村:
ちょっと寒気がするんだ。
今日は止めておくよ

真由子:
どうしたの
体悪いの

野村:
もう寝るよ
熱が上がって来るみたい。
いや
トイレに行ってからにしよう
おなかが差し込んでくる。
痛い

真由子:
あー
大丈夫?

真由子は
前の世界と
全く同じでした。
食中毒になるなんて
偶然による物が多いのではないの
食中毒菌が
食品に付くことは
偶然なのに
前の世界と全く同じに進行していると言うことに
ある意味ホッとしました。

と言うのも
野村と真由子は
ふたりの子供が生まれてくるのですが
同じ子供が生まれてくる確率は
殆どないと考えていたのですが
これで行くと
同じ子供が生まれてくるに違いないと思いました。

そのためにも
この世界を
乱さないことが
大切だと思いました。
トイレから出てくると
野村はぐったりしていました。

野村を
お布団の中に入れて
寒いというので
自分の布団も
掛けて
介護しました。

2時間ぐらい
野村はウトウトして
目が覚めると
もう一度トイレに行って
今度は暑い暑いと
言いました。

真由子は
ホテルのフロントで
氷枕を借りてきて
野村の頭の下に置きました。

それから
野村は
ウトウトしたり
トイレに行ったり
朝までしていました。

真由子は
全く眠らず
介護して
一夜を明かしました。

そんな長い夜に
ズーと考えていたのです。

今の世界が
前の世界と
変わらないようにしないと
いけないと思いました。

でも
冴子が
この世界では
生きていることは
前の世界とは
全く違う事です。

この変化が
大きく今の世界を
変えないか
心配でした。

冴子とあまり会わない方が良いのでは
でも冴子は
林さんと結婚するし
林さんは
新居の近くに住むことになっているし
やっぱり
冴子と
会わない事なんて出来ないと
思い悩んでいました。

こんな事を考えて
野村を
介護していたのです。
翌日
野村は
まだ熱がありました。

朝食は
特別に
おかゆをお願いしました。

おかゆと
梅干しでした。

同じホテルに
3泊の予定になっていたので
9時までお部屋で寝て
それから
観光タクシーで
近くの病院に行きました。

先生の御診断は
食中毒と言うことで
お薬を飲んで
水分取って
ゆっくり休むように
と言うことでした。

その日の予定は
すべてキャンセルして
眺めの良いホテルの
窓際で
一日寝ていました。

野村と
真由子は
ボーとしながら
沖縄の
景色を
飽きるまで眺める機会を
得たのです。

真由子は
ちょっと笑ってしまいました。

「前の世界と
こんな所まで
同じなんだ。」
と心の中でつぶやいてしまいました。

窓から見える形式が
前の世界と
全く同じだったんです。

ほらあの自転車の少年
きっと転ぶよ
と思ったら
転ぶのです。

犬が猫を
追いかけるところまで
同じだったので
不思議でした。

真由子は
前の世界に
本当にいたのか
それとも前の世界は
夢の中の出来事だったのか
わからなくなりました。

そんなことを考えつつ
ちょっと
気分が良くなった野村と
クイズでもしようと言うことにしました。

窓から見る景色を
互いに予想する物です。

次にくる車は何色だとか
自転車は前かご付きだとか
たわいもないことを
当てるのです。

真由子は
前の世界で見ているのですが
そんな細かいことまで覚えていないので
野村との勝負は
五分五分の引き分けでした。
新婚旅行で
そんなやりとりをするとは
興のないことです。

そんな一日も過ぎて
翌日は
少し良くなりました。

観光タクシーの運転手が
やってきて
予定を聞いてきました。

野村はちょっと考えて
「真由子さんには悪いけど
今日もホテルで
ゆっくりと
していたい
良いかな」と
言いました。

真由子はもちろん賛成して
ホテルで
変わらない景色を
見て
一日中
真由子と
野村は話していました。

真由子は
話の話題は
豊富ですので
話は弾みました。

そんな新婚旅行の
旅も最終日になりました。

最終日は
予定通り
午前中まで観光して
決められた所で
昼食をとって
午後の飛行機で
大阪に帰ってきました。

新しい新居まで
タクシーで帰っていました。

新しいお部屋は
会社の近くで
3階建ての2階部分
日が良く当たる南向きです。

お部屋に着くと
真由子は
夕食の用意を始めました。
野村に
何が食べたいか
聞いてみたけど
「何でも良いよ」の一言でした。

「そうよね
前の世界でも
いつもこうなのよね。
何が食べたいか
言ってくれればいいのに、
でもそれが
良いのよね」と
少し心の中で微笑んでしまいました。
真由子は
夕食に
魚の煮付けと
そのだし汁を使って
野菜の煮物を作りました。
野村は何でも
美味しい美味しいと言って
食べてくれますが
その中でも
美味しそうに食べる
メニューでした。

味は
超薄めで
普通なら
醤油や塩を
足すくらいの量です。

こぎれいな
皿に盛りつけ
野村に出しました。


野村は
喜んで
いつも食べる役ですので
「頂きます」
と言って
綺麗に平らげました。

真由子は
これが幸せというのよね
と思いました。

でも前の世界では
野村が美味しいと言って
何でも食べるので
どんどん作って
食べてもらったら
段々
野村が太って
肥満体になったので
今度の世界では
注意して
量を作らないといけないと考えていました。


食事をして
お茶を飲みながら
少し話をして
お風呂に入って
野村は寝ました。

真由子も後片付けをして
お風呂に入って
お風呂を掃除して
それから
寝化粧をして
お布団に入りました。

野村は
もう寝入っていて
朝まで何もなかったので
真由子は
もうがっかりです。

でも前の世界でも
こうだったと
思いました。
真由子と
野村の結婚生活は
最初は障害がありましたが
それ以降は
順風満帆で
けんかというものも
せずに
何ヶ月が過ぎました。

秋になると
冴子が
結婚すると言うことで
結婚式に出ました。

冴子達の
新居は
前の世界の
前田の家とは
違って
だいぶ離れたところになりました。
前の世界の
前田の家は
小さかったので
二人には狭かったのです。

前の世界と
だいぶ違ってきたと
真由子は
思いました。

でも
その他には
大きな差もなく
2年が過ぎ
真由子に
長女が
生まれました。

真由子は
喜びました。
もちろん
野村も喜びましたが
真由子の喜びは
異常なほどで
子供の可愛がり方
異常なほどでした。


真由子は
一つ目の
関門は
クリアーしたと思いました。

乳児の時の
突然の夜泣きにも
動ずることはなく
また
幼児の突然の発熱で始まる
突発性発疹も
全く動じませんでした。

野村は
真由子を頼もしく思いましたが
不審に思いました。

何人もの
子供を育てたようなその余裕は
どこから来るのか
思いました。

野村は
冗談に
「真由子って
隠し子がるんじゃないの
何でそんなに
育児上手なの
一人目じゃないでしょう?」
言ってみました。

真由子は
一瞬ドキッとして
「そうかも知れないね
何人もいたりして」
と答えました。
余裕の子育てで
本当に楽しく
野村とも
けんかもすることもなく
時間は過ぎいきました。

5年の月日が過ぎ
二人目の
女の子も生まれ
ました。

前の世界の
子供と同じ遺伝子を持った
赤ちゃんかどうかはわかりませんが
顔も似ているように思いました。

二人目が生まれると
真由子は仕事を辞めます。
本当は辞めなくても
余裕で続けられたけど
前の世界では
辞めることになっているので
辞めたのです。

真由子には
段々と大きくなってくる
心配がありました。

それは
前にも言ったことがあるともいますが
前の世界では
野村は
胃がんで
結婚十年目に
亡くなってしまうのです。


前の世界の
今なら
胃がんと
ピロリ菌との因果関係が
わかってきて
胃がんの予防や
PET検診などで
早期治療が出来たのですが
この当時は
癌検診と言えば
バリウムを飲んで
胃造影か
胃カメラを飲んで
早期発見する方法が
普通でした。

野村の
手術の時に
わかった事は
野村の胃がん胃がんの好発部位の
前庭部ではなく
側壁にあって
バリウムの造影で
わかりにくいところにあったので
早期ではなかったのです。

前の世界では
手遅れになって
抗がん剤の
苦しい治療の末
亡くなってしまうのです。

今度の世界では
絶対に
手遅れだけは避けようと思いました。

前の世界で
野村が
亡くなる時期が近づいてくると
真由子は
野村に
健康診断に行くように
強く言います。

野村は会社員ですから
会社で健康診断しているので
特に必要ないと
野村は言うのです。

野村の言うのも
「もっともだ」と
真由子は思いました。

真由子は
普通に勧めても
健康診断を
受けないし
そうなると
癌になって
手遅れになるかも知れない
と心配しました。

やっぱり真実を
言わないと
手遅れになってしまうと
考えました。

それで
今日言おうか
明日言おうか
と悩んで
いました。

しかし
もうちょっと
結構診断の方を
勧めてみました。
胃カメラを
勧めたのです。

テレビで
胃カメラで
診察する場面があって
それを
うまく利用して
真由子は勧めました。

真由子:
胃カメラ
大事じゃないの
野村さんもやってみたら

野村:
そうかな
まだぼく若いし
大丈夫じゃないの
真由子さん

真由子:
そんなことないでしょ
テレビの中でも
若くして
癌になっているじゃないの

野村:
それは
ドラマでしょう

真由子:
私心配なの
もし野村さんに
何かあったら
どうしたらいいの
安心させて欲しいの

野村:
真由子さんは
子供の病気なんか
全く心配しないのに
ぼくの
胃は心配なんだね
なんかあるの

真由子:
いやな予感がするの
お願いだから
胃カメラをお願いします。

野村:
じゃ
君が心配しないように
受けてみるよ

真由子は
真実を言わなくていいと思いました。
野村は
健康診断で
胃カメラを
使うことになりました。

前日から絶食して
病院で診てもらいました。
胃カメラはちょっと苦しかったけど
野村は
真由子の心配がなくなって
安心するためには良いと
考えていました。

「癌なんてなっていないよ」と
考えていたのです。

真由子と下の子供も
付き添ってきていました。

一週間心配そうに
結果を待っていた真由子の元に
手紙が病院から来ました。

宛名は
野村になっていましたが
事前に封を開けても良いと言うことに
なっていたので
封を
恐る恐る
開けてみました。

結果は
「異常なし」でした。

真由子は安心と
心配が
交錯しました。

「野村はもう
癌にならないのだろうか
それとも
あまりにも早期なんで
発見されないのだろうか。」
と考えました。

この結果は
すぐに野村に
電話で伝えました。

野村は
「だから杞憂と言ったんだ」
と笑いながら
言っていました。

野村も
ホッとしたんでしょう。

真由子は
一安心ですが
この先どの様にすればいいのか
考えました。

手遅れにならないためには
六ヶ月おきに
胃カメラをすれば
良いのですが
そんな頻繁に
野村はしてくれないだろうし
どうすればいいのか
やっぱり話す方が良いのか
考えあぐねていました。
日にちが過ぎて
六ヶ月は
あっという間に来てしまいました。

その前から
真由子は野村に
健康診断健康診断と言っていました。

野村は
優しい人だったけど
野村にとっては
真由子は異常に写っていました。

真由子は
健康診断の話になると
不機嫌になる理由は良くわかっていましたが
野村の病気のことを考えると
言うしかありません。

でも
野村が真由子の言うことを聞いて
健康診断に行って
胃カメラを使う気配は
ありません。

真由子は
野村が
手遅れになって
前の世界と同じように
死んでしまっては
取り返しが付かないので
何とかしなければいけないと
悩んでいました。

これを何とかするには
真実を告げるしかないと
考えに至りました。

真由子は
野村がゆったりして
機嫌が良い
日曜日の午後
話をすることにしました。

その日は
暑い日でした。

真由子:
話があるんだけど
私の話を
驚かないで
聞いて欲しいの

野村:
何を改まって
何の話だ

真由子:
あなたには信じられないと思うけど
私ね
どこから話して良いか
そうね
今から6年前のこと
私は
57歳だったの

野村:
何で今から6年前なのに
57歳なの????????

真由子:
私も良くわからないんだけど
57歳であったのは
事実なの
その時は西暦2009年なの

野村:
何のことか全くわからない

真由子:
何度も言うけど
私にはわからないんだけど
今から24年後の
2009年の5月だったの。
その日は
私はインフルエンザで
職場がお休みになって
家で休んでいたら
突然頭がくらっとしたと思ったら
チューナーの会社にいたんです。
その日の朝は
57歳の体だったのに
突然からだが27歳になって
チューナーの会社にもどってしまったのです。
それがどういう理由か
わからないけど

野村:
本当かい
未来から
さかのぼって帰ってきたと言うことになるけど
そんなこと
起こるの

真由子:
何故帰れたのか
わからないけど
私の冴子は
前の世界
私が57歳まで暮らした世界では
帰った年の
8月に交通事故で死んでしまうの。
でも私は
それがわかっていたから
その交通事故が起こる日に
冴子を
有馬温泉に連れて行って
今の世界では
交通事故に遭わなかったの。
だから
冴子は今も幸せに暮らしているのよ

野村:
そうなの
私はわからないなー
真由子さん
これはなんかの
実験なの
どっきりカメラなの

真由子:
信じて
本当にそうなのよ

野村:
信じたいんだけど
あまりにも話が
普通じゃないので
信じられないな

真由子は
困ったしまいました。
簡単に信じてもらえる話ではないと
思っていましたが
どうして良いか
すぐにはわかりませんでした。
この話は続きます
真由子は
未来から
戻ってきたことを
立証しなければならなくなりました。
そうしないと
野村は
真由子の言葉を
信じない
そうなると
野村は手遅れになって
胃がんで死んでしまう
と言うことになるのです。

未来から帰ってきたことを
証明するには
どうすればいいかわかりませんでした。
真由子は
しばらくの間
考えました。

野村は
ゆっくりと
新聞を読んで
真由子の
話に付き合っていました。


しばらく経って
真由子は
未来に起こったことを
言い当てれば
野村を信じさせることができることに
気がつきました。

何かないか
考えました。

「あっ」
と気がつきました。
「上の子供が
幼稚園に行った年
そうだ
長女の友達の
お兄ちゃんが
ディ○ニーラ○ド
に行った帰り
飛行機事故で
なくなってしまうという
痛ましいことが起こったわ」
そうだこれを話せばいいのだと考えました。

真由子:
私が
未来から戻ってきたと言う証拠に
もうすぐ飛行機事故が起こることを
予言するわ

野村:
それは物騒な話だね
いつ起きるの
もし本当に起こるなら
止める方法あるんじゃないかな
どんな事故なの

真由子:
今年の8月の下旬に
羽田発の飛行機が
事故にあって
山の上に墜落するの
墜落現場が
なかなか見つからないものだから
大変なの
やっと見つけると
生存者が数人助かるの
原因は
確か
加圧壁の修理が間違っていたために
耐えきれず尾翼がなくなって
操縦不能になったのよ。

野村:
それは正確には
何日の
何便かな

真由子:
ごめんなさい
それは忘れてしまったわ
ダメな私ね
ごめんなさい
そうだわ
有名な歌手も乗っていて
亡くなるのよ

野村:
大変な話だね
でも
正確な便名がわからないと
防ぎようがないな
本当に起こるの

真由子:
たぶん
同じだったら
起こるわ
未然に防げたらいいのにね

野村:
それで
真由子の話が本当だとして
なんで
そんなことを話すの

真由子:
そうよね
それはね
あのね

真由子は
野村が
癌で死んでしまうことを
言わなければならなくなりました。

野村との会話は続きます。 


作中
日航飛行機事故を題材に使っております。
亡くなられた方のご冥福をお祈りしております。
野村は
真由子が
「未来から帰ってきた」
と言う話を
もちろん信用していませんが
そんな話を
する理由は
何なのか
不思議でした。

野村:
真由子さん
今日は4月1日でもないし
何故そんなことを
私に話すの
信用しないでもないが
そんな突拍子もないことを

その問いに
真由子は
「それはそうだ」と
思いましたが
話して良いものかどうか
少し躊躇しました。
でも
話さないと
いけないことなので
話すことにしました。

真由子:
それはね
びっくりしないでね。
まだ手遅れになっていないから
心配しないでね
絶対だよ
今なら
大丈夫だから

野村:
わかったから
続きを
話して

真由子:
前の世界では
野村さんは
今から
4年後の
夏に
胃がんで死んでしまうの
まだ4年も先の話だから
今なら
大丈夫だから

野村は
悪い冗談だと思いながらも
真由子が
そんな嘘を
つくわけがないと思いもあって
一瞬ドキッとしました。

野村:
そうなの
その話は
本当なの

真由子:
こんな事嘘を言わないわ
今から3年後の
秋口に
胃が痛いというので
病院に行ったら
すぐに
胃カメラの検査をして
それから
その3日後に
手術を受けるの
でもね
胃がんは
胃の裏まで達していて
近くの
リンパ節にも
転移していると言うことで
一応胃を全摘
それから胃周りを
郭清して終わったけど
医師は
私に手遅れだと
言ったわ

真由子は
そのことを思い出し
涙目になっていました。

それを見た野村は
真由子の話は
本当だと
思いました
悟は
真由子の話を聞いて
一瞬ドキッとして
熱くなりました。

癌の告知を
直球できても困る
と言うように思いました。
でもよく考えると
悟は癌ではなく
将来癌になると言う
予言だから
癌の告知ではないのでは
とも考えました。

悟の頭の中では
癌=4年後に死亡
と言う図式ができて
もう何が何だかわからなくなってしまいました。

悟が
黙って
下を向いたままでいると
真由子が
「大丈夫!
今なら大丈夫だから
心配なんかする必要ないの」
と優しく告げました。

悟は
「真由子は大丈夫だと言うけど
その根拠は何なの
僕は
4年後に死ぬんだろ
死ぬときなんかわからない方が良いよ」
と少し甲高い声で
言いました。

真由子は
自信ありげに
「大丈夫
私は未来から戻ってきたのよ。
あなたの胃がんが手遅れだと
聞いたとき色々と
調べたの
そうしたら
野村さんの
癌は胃のレントゲンでは
見つけにくいところにあるけど
胃カメラなら
早く見つかって
手遅れにならないだろうと
お医者様は
言ってくれたの

それを聞いたときは
そんなこと今さら聞いても
その時は仕方がなかったけど
30年も経って
役に立ったの

野村さん
きっと助かるから
大丈夫」
と言ったので
野村も
ほんの少しだけ安心しました。
野村は
真由子の
助言に従い
胃カメラを
飲みました。

その結果は
大丈夫でした。

その結果が出た直後
例の事故が起きて
多数の人が亡くなりました。

野村にとっては
真由子の予言通りの結果で
野村は
その真実に
背筋が寒くなりました。

真由子にとっては
予言でもなくて
単に記憶だったのですが
野村に信じられて
嬉しくなりました。

野村は
次に起こる
事故を聞いてきました。

飛行機事故は
たまたま
近所の子供が
乗っていたから覚えていたもので
真由子は
そんなことを
いちいち
覚えていません。

それを伝えると
野村はがっかりしていました。

でも野村は
前の世界で
結婚した
真由子が
またこの世界でも
自分との結婚を
選んでくれたことに
本当に喜んでいました。

それで
ふたりの結婚生活は
仲良くて
幸せそのものでした。

真由子の友達の冴子も
うらやむほどの
仲の良さでした。

しかし癌の恐怖は
段々と大きくなってきました。
6ヶ月おきに
胃カメラを使って
お医者様が
不審に思われてしまいました。

そうして
4回目に
胃カメラを使ったとき
癌の診断が下りました。
癌とわかって
野村は
ホッとしました。

医師の説明では
ごく初期で
手術が充分に間に合うと
言っていました。

真由子が言うには
前の世界では
約1年後に
わかって
手遅れになると言うことでした。

1週間後
野村は手術をします。
手術後の説明でも
摘出した胃の一部を
見ながら
裏まで癌がないと言うことでした。

しかし麻酔が覚めて
ICUで面会した野村は
「痛い
痛い
こんな痛いなら
死んだ方がまし
、、、」
と真由子に
言ったので
真由子は
「残念でしたね
あなたは
死ねません。
生きるしかありませんよ
何年も何十年も
私と一緒に
生きるのよ」と
笑いながら
答えました。

野村も
笑おうとしたのですが
痛いので
笑いを
かみ殺していました。

3日後に
ICUから出て
6人部屋に変わると
看護婦さんが
早くトイレに行って
運動するように
野村に言ったので
これも痛い思いをしながら
トイレに行っていました。

つらい入院も
1週間後には
痛くなくなりました。
そして
2週間後に
退院の運びとなります。
2週間分の抗がん剤を受け取り
家に帰ります。

安全を見込んで
胃を全摘してしまったので
たくさんを一気に食べられないの
ちょっとずつ食べていました。
それと
麺類は
詰まって
うまくおなかの中に入らないので
うどんやラーメンは
真由子は作らないようにしていました。
野村は
病気のために
少し休んだのち
会社に出社します、

会社では
前と変わりなく仕事も出来て
完全復帰しました。

前の世界でも
手術後3ヶ月は
何の症状も無く
働けて
仕事が出来ました。

真由子は
心配でした。
三ヵ月後
おなかが痛くなり
何も食べられなくなって
ついには
1年後なくなってしまうのです。

でも
今の世界では
大丈夫と思ったのですが
心配でした。

真由子の心配とは裏腹にというか
幸運にも
3ヵ月後との
検査も異常がありませんでした。

そうして
待ちに待ったと言うか
着てほしくないと言うか
その時がやってきました。

その時とは
前の世界で
野村がなくなったときです。

気にしてはいけないと思って
野村には
詳しい日時を
告げなかったので
その日は
真由子だけが
知っていたのです。

その日の
その時間を
一緒に暮らすために
真由子は
その日は
平日でしたが
休んでくれるように
お願いして
家族4人で
家で過ごすことにしました。
前の世界で
亡くなる日を
家族4人で過ごすことになります。

野村は
なぜ今日
休んでほしいと
真由子が言うのか
わかりませんでした。

手術後
定期検査以外は
休んでいなかった
野村にとっては
予定の無いこの休みを
ゆっくり過ごすつもりでした。

長女と次女が
小学校と幼稚園から帰ってきて
4人がそろいました。

子供たちは
家に帰ると
父親が居るので
とってもうれしく思いました。

こんな風に
夕方まで来て
野村は
夕ご飯を
作ることになります。

4人で作れる
カレーを作りました。

ワイワイ言いながら
楽しく作って
テーブルにだしました。

真由子は
涙が出るくらい
最高のおいしいカレーでした。

食べ終わって
丸いケーキが
テーブルに出されました。

長女が
「今日は誰の誕生日なの
お母さんじゃによね
お父さんの誕生日?」
と聞いてきました。

真由子は
「今日は誰の誕生日でもないけど
今日は
お父さんの
新しい誕生日なのよ」と答えました。

野村は驚いて
「今日がなぜ新しい誕生日なの」
と聞きました。

真由子は
やさしく
「今日は
前世界では
お父さんが
亡くなる日なの
今日から
前の世界では
子供と3人で
暮らしていくのよ

寂しい世界なのよ
今日は
新しい世界の始まり
今までは
筋書きがあった世界だけど
未来は文字通り
未知の世界なの

よろしくね
お父さん」
と話して
頭を下げました。

長女は
「前の世界って何
お父さんが亡くなるって何
何なの??」と
尋ねました。
家族全員で臨んだ
ちょっと変わった記念日を
無事終了しました。

終わった後
真由子は
野村に
言いました。

真由子:
無事に今日一日が終わって
大変うらしいわ
前の世界では
野村さんが亡くなって
子供ふたりを抱えて
苦労したのよ
あなたのご両親や
私の親にも頼って
何とかなったけど
それに前田さんにも
お世話になったの
前田さんはね
駅売りのパートを
私に紹介してくれたの

前の世界では
11月から
私はキオスクのパートを始めるのよ。
あなたが居るから
そんな仕事をする必要が無いことは
分かるけどね
勤めないと
いけないと思うの

野村:
何故なの

野村はすこし不思議でした
少し小声になって
真由子は
「子供には内緒よ
絶対に言ったらだめよ。

あのね
ふたりの子供の
結婚相手は
私が
お店で働いている時に
来ていたお客さんなの

子供が遊びに来ていてね
偶然知り合って
結婚することになるの

色々あるんだけどね
前の世界から来る直前には
子供が生まれるんだよ。
孫が生まれるの
野村さんに似ていて
可愛いんだから、、、

それにね
下の娘も
その友達と
知り合って
最初は
なんでもなかったんだけど
ちょっとしたことから
仲良くなって
できちゃた婚になってしまうの

同じように
子供が生まれて
前の世界では
私は
お気楽な
一人暮らしよ」
野村に付けました。

野村は
「出来ちゃった婚って何?」と聞いてきました。
野村は
『出来ちゃった婚』のことを
知らなかったのです。

そんな言葉は
その当時には無かったのです。
いやそんなこと自体が
珍しかったのでしょう。

それで
その言葉の意味を
真由子は
野村に話します。

真由子:
出来ちゃった婚とはね。
その前に怒ったらだめよ。
まだ遠い先の話しだし
ふたりは愛し合って
仲がいいのだからね
出来ちゃった婚とは
結婚する前に
子供が出来ることなの

(野村はショックを隠し切れなかった。)

野村:
そうなの
そうなの
困ったことだね。
今の世界では
何とか食い止めることは出来ないの


真由子:
ふたりは幸せなのよ
幸せに水をさすような事をしたらいけないわ

野村:
未来になったら
許せるかな
心配だ

真由子:
私が
未来から戻ってくる直前には
ふたりは本当に幸せで
子供も可愛いのよ
きっとあなたも可愛がると思うわ
子供の顔を見たら
そうきっと思うから
大丈夫よ

野村:
未来は大変だね
真由子はそんなことを経験したんだ。
偉いね。

真由子:
そんなことは無いけど
今度はふたりで乗り切れるから
大丈夫よ

野村:
そうだね
ふたりで歩んで行こうね。

ふたりは
子供を見て
子供の未来を
ふたりの未来を
考えました。

真由子にとっては
57歳までは
また歩む世界だったのですが
今度はふたりで幸せに生きていくことになります。

真由子は
過去に戻ったことは
大変だったけど
幸せをつかめて良かったと思いました。

「過去に戻ってしまったわ」は
一応終わります。

その後の真由子のことも知りたいので
また再開するかもしれません。
いずれにせよ
とりあえず
お読み頂ありがとうございます。

       著者敬白