ふたりは 寄り添って歩き始めました。 あたりは もう真っ暗でした。 40年前つきあっていた頃でも こんなにながく 腕を組んで歩いたことはありませんでした。 小一時間ぐらいかかって 喫茶店にやってきました。 10年一日がごとしと言う言葉が 当てはまるように その喫茶店は 変わっていませんでした。 ふたりは扉を開いて 中に入ると ウエイトレスが水を持ってやってきました。 前座った 道路の外が見える席に 座りました。 悟: 君と同じように 変わっていないね 十詩子: いいえ 喫茶店も 私も変わりました。 でも今でも 変わらないことが あります。 それはあなたへの 、、、 、、、 (小声になって) 『あいじょう』 かな 悟さんも 変わらないでしょう 悟: 僕は 考えは 変わらないけど そのほかのことは 変わってしまいました。 それもすっかり変わってしまいました。 40年もたったもの 十詩子: 私からこんなことを言うのは 恥ずかしいんですけど もう私は これしかないと思います。 もう私は 後がないんです。 もう56歳になって 悟さんに再会して これしかないと思いました。 今日 会社を辞めてきました。 永く伸ばしてきた髪の毛も切りました。 悟さん 私は もうあなたと結婚をするしか 残された道はありません。 悟さん 私と結婚して下さい。 悟: えっ あっ そ、、、 ○×△#&、、、 悟は 驚きました。 30年前に 遠くに行ってしまったと 感じていた 十詩子が こんなことを言うとは 信じられませんでした。 沈黙が流れて 十詩子は もう一度 言ってみました。 十詩子: 悟さん 私は漢の将 韓信と同様 後がないんです。 悟さん! 強く十詩子に言われて 優柔不断の 悟も ついてに 決心しました。 悟: 十詩子さん ありがとうございます。 十詩子さんの方から そんなことを言わせて ごめんなさい 31年前に いえなかったことを いま言います。 『としこさん けっこんしてください』 十詩子: ありがとうございます。 本当にうれしいわ 今日はクリスマス 最良の日ね 31年間も 回り道をしたけど それも今となっては 懐かしく思います。 悟: こちらこそ ありがとうございます。 ふたりは お互いに同じようなことを 言い合いました。 十詩子: 私 あなたが 結婚しないと言っても 私は 今日からは あなたに付いていく覚悟ができていたの いやだと言っても 押しかけ女房に なるつもりだったんです。 だって会社も辞めたし 私の一番の魅力の 髪の毛も切ってしまったもの 悟さん以外あり得ないわ 悟: 十詩子さんは 積極的ですよね 最初会ったときから 積極的だったけど 僕がもっと積極的だったら こんな遠回りはしなかったのにね。