ロフト付きはおもしろい

ロフト大好きの71歳の老人の日記です

ロフトの奇跡 その26

莉子が病室に帰ってくると
妖精が座って待っていました。

妖精:
お帰りなさい
気分は如何?

莉子:
少しはいいわ
髪の毛も
短くなって
さっぱりしたわ
これからの
治療に役立つかしら


妖精:
大丈夫よ
髪の毛は
また生えてくるし

莉子:
私
こんなにつらい治療しても
助からないんじゃないかしら
だったら
このまま死んだほうが
幸せかもしれないわ
両親には悪いけど
死んでしまいたいわ

妖精:
そんな弱気でどうするの
これからの人生じゃないの

莉子:
でも今まで
これと言った良い事も無かったし
これからもなさそうだし
生きていても
仕方がないんじゃないの

妖精:
何を言うのよ
そんな事言って
あなたを待っている人もいるから

莉子:
誰もそんな人いないわ
どうせ私は一人ぼっちで生きていかないといけない人間なのよ

妖精:
まだ言っている
あなたを待っている人は
きっといるから

莉子:
慰めはいいわ

妖精は
莉子をどのように勇気付けたらいいか
分かりませんでした。

その翌日
莉子が
病院の窓の外を
ベッドから
虚ろに見ていました。

化粧もせずに
ベッドの上で座っていたのです。

「莉子さんいらっしゃいますか」という
声がその時しました。

莉子は
とっさに
「はい」と答えました。

廊下から
陽一が入ってきました。

昨日は散髪屋に行くので
少しだけお化粧をしていたのですが
今日は
ベッドの上なので
何もせずにいました。
すっぴんの
莉子は
あわてました。

そんなあわてている莉子のことも知らず
陽一は
お菓子の袋を持って
入ってきたのです。

陽一:
今はいいでしょうか。
まだ
当分は薬の休止期なんでしょう。
今のうちは何でも食べて
体力を回復しておかないといけないんでしょう。

こんなものかって来ましたが
食べられますか。


莉子は
恥ずかしそうに

莉子:
ありがとうございます。
心配していただいて
お医者様は食べられるものなら
何でも食べてもいいと
おっしゃっておられます。

わー
これおいしそうなお菓子
私これ好きなんです。

莉子は袋の中の
お菓子を取って
子供のように喜びました。

陽一:
そんなに喜んでいただいたら
幸せです。

どうぞお召し上がりください。

莉子は早速袋を破って
食べようとしましたが
妖精が
食べる前に言う言葉
を言うようにと命じられているので
袋を置いて
言い始めました。

莉子:
「天にましますわれらの神よ
今日の糧を
私たちに
お与えくださいまして
ありがとうございます。
明日もよき日なりますように
神様の祝福があらんことを」

陽一は
莉子が
そんなことを言っていたので
唖然としながら
眺めていました。

陽一:
莉子さんは
キリスト教の信者なんですか。

莉子:
そんなことはありません。
家は仏教徒で
私は
宗教はこれといって
信じていませんが、、、
食べ始める時に
いつも言っているので
習慣になっているんです。

陽一:
それは良い習慣ですね
私も
見習おう

莉子:
陽一さんも
どうぞ

陽一:
だめなんです。
私は
食べたらだめなんです。
今日は
重湯だけ

明日から
おかゆだそうです。
でも重湯って
美味しいですよね。
4日ぶりですから。
こんなにご飯が美味しくいただけたのは
初めてです。

これって
本当に神様の
お恵みですね。

今まで信じませんでしたけど
これからは信じてみようと思います。
でも神様って
本当におられるのでしょうかね。

莉子:
そうですね。
私も最初は
神様の存在を信じませんでしたが
今は神様がおられると
思います。

陽一:
やっぱり病気になったことで
心境の変化ですか

莉子:
あー
まー
そういうことですね。

妖精が現れて
たびたび神様のことを
言っているとは
言えずに
そんな返事になりました。

陽一は
その翌日も
そして翌々日も来ました。
4日が経って
陽一は
退院になりました。

退院になる日
陽一は
同じようにお菓子の袋を
いっぱい持って
やってきました。

莉子は
また来ることが分かっていたので
お化粧をして待っていました。