ロフト付きはおもしろい

ロフト大好きの68歳の老人の日記です

ロフトで一人暮らし

一年ちょっと経って
先輩の指導を受けつつ
実際の設計も
メキメキ力を付けてきた
ある日の午後
社長に呼ばれました。

社長:
君がもう2年前になるか
試しにわが社で働いた時に
リフォームの設計をしてもらったと思うけど
、、
君覚えているかね

優子:
覚えています。
何も分からず
設計しました。
今から考えると
お恥ずかしい限りです。


社長:
そうその設計なんだが
確かロフト付きの絵を描いていたよね

優子:
はい
お部屋を広くするというので
ロフト付きの設計にしていました。

社長:
あの時は
設計部の案と君の案を
お客様に提出しておいたんだが
その時は
うまく成約できなかったんだ。
あれから2年経って
やっぱりリフォームをしてほしいと
わが社に頼んできてくれました。

優子:
そうですか。
私にその仕事をですか。
少し大きな工事のように思いますが

社長:
お客様は
君のロフト案を
大変気に入っていて
ロフトにしたいと
言うんだ。
それでお願いだが
一度君のロフト案を
説明に行ってくれないか。
積算部に概算見積もりを
お願いしてから
明日でも
アポイントをとってから
行ってくれ
君なら大丈夫だと思うけど
抜かりのないように
優子にとっては
ひとりでする
大きな仕事です。
今までは
トイレの手すりとかは
やっていましたが
今回の大改装の
リフォームは
初めてでした。

翌日電話をして
直ぐに
お客様のところに行きました。

お客様の名前は
山田といいます。
山田の家族は
両親と
結婚適齢期の息子と
すでに結婚が決まっている妹の
4人暮らしです。

両親は
相手がまだ決まっていない
息子のために
二世帯住宅を
作る計画でした。

一階を両親が
2階に別に玄関を作って
息子夫婦の部屋を作る計画です。

もともとは大きな家でしたが
息子夫婦に
子供が出来ると
少し手狭になるので
それを
ロフトで補う計画です。

優子が山田の家を
訪れると
山田とその妻
そして息子の創(はじめ)が待っていました。

山田:
山田です。
あなたが
ロフトの案を設計していただいた方ですか。
若い方ですね

優子;
まだまだ未熟者ですが
ご希望に添えるように
努力いたします。
もちろん先輩や上司に
図面はチェックしていただきますので
間違いのないようにさせていただきます。

山田の妻:
失礼ですけど
何歳なの

創:
お母さん
そんなこと聞いちゃ失礼でしょう

山田の妻:
ごめんなさいね
ついつい
聞いてしまって
息子の結婚の相手を
探しているもんだから
本当にごめんなさいね。

創:
あー
またそれを言う
誰かれなしに言っているんだから
すみません。

優子:
いえ
とんでもありません。
私は
24歳です。

山田:
申し訳ありません。
そんなことを
聞くためにきていただいたんじゃないのにね
あなたが書いてくれた図面に
息子が気に入ったものだから。

優子:
ありがとうございます。
昨日もう少し図面を起こしました
簡単なパースも
書いてみました。

そういって
図面とパース(完成予想図)を
机の上に広げました。

優子:
ここにロフトがあって
こんな風に上って
ここが、、、
あそこが、、、
そうしてこんな風に使って
一階は落ち着けるように
こんな風に
庭も
自動車を2台置けるように
こんな風にして
どんな、、
そんな、、、
こんな、、、
ロフトの使い方はこうこうで
ロフトのよさは
こんなところだとか
こーの
あーの
そーの



優子は
前もって考えてきた案を
話しました。
三人は
質問をしながら
聞いていました。

創:
あなたは
ロフトが好きなんですね
ロフトのことを言う時には
熱が入っているみたいですね。

優子は
知らず知らずのうちに
ロフトへの思い入れが
強いために
説明が
行き過ぎていたかと
反省して

優子:
すみません
申し訳ございません。
ロフトについて
小さい時からの憧れでしたので
、、、
お聞きづらかったですね。
申し訳ございません。

山田:
ほー
やっぱりそうなんですね
みんなで
そんな話しをしていたんですよ

優子:
何でもお見通しですね

創:
いい仕事をしてもらえそうで
うれしいです。
ところで
ロフトに上がるのは
大変じゃないですか

優子:
そうですね
はしごじゃ大変だと思います。
それで弊社では
互い違い階段をお勧めしています。
写真じゃ分かりにくいんですけど
こんな形をしているんです。
高いけど
上りやすいと思います

創:
どんな風になっているんですか
写真じゃ分からないなー

優子:
遠いですけど
実物が
メーカーにありますので
見に行かれますか。
高速を飛ばしていくと
1時間くらいじゃないかと思います。

創:
そうなんですか
一度行ってみようかな
あなたもきてくれるんですか。

優子:
もちろん私もご一緒させていただきます。
ご家族の皆様もどうですか。

山田:
私はいいです。
私は一階住まいなので
2階のロフトに上ることはないと思います。


そんな話しで
優子と
創は
次の日曜日
会社の車で
階段を見に行くことにしました。

優子は
階段のメーカーに
電話して
見学の時間を告げました。
また詳しい図面を作って
積算部に詳しい見積もりを
作ってもらいました。
優子は
次の日曜日
会社の車で
創の家に行きました。

創の母親は
昼のお弁当とおやつを
山ほど持たせて
出発しました。

行きの高速は
空いていて
予定の時間より
早く到着しました。

メーカーに付くと
階段のところに案内されました。

まず優子が上ってみました。
職業柄
高いところに慣れていましたので
難なく上り下りできました。

創も
上りました。
創はのぼりは難なく上れたのですが
下る時に
崖のようなその下を見て
少し怖いと思いました。
でも優子が
見ているので
見栄もあって
平然と下りました。
下りてみると
普通の階段と同じであることに気が付きました。

創:
上り下りしやすいですね
これならロフトが
活用できそうです。
優子さんが
ロフトは良いという理由も
分かるような気がします。

優子:
そうですよね。
やっぱりロフトはすばらしいですよね。

ふたりは
メーカーの人から
階段の詳しい説明を聞き
メーカーの人が
だしてくれた
コーヒーとケーキを
たいらげて
ショールームを
後にしました。

お昼になっていましたが
ケーキを食べたばかりなので
少し高速を走ってから
お昼を摂ることにしました。

高速を走りながら
優子と創は
話しをしました。


創:
優子さんは
ロフトが好きだけど
何故なの

優子:
それを話すと
長い話になると思います。
創さんきっと
飽きてしまいますよ。

創:
そう言われると
余計に知りたくなります。
ロフトに住んでいたことがあるとか

優子:
ロフトに住んでいたことはありません。
私が小学校のころ
近くに家が出来たの
その家は
尖がり屋根で
その屋根の中に
小さい窓があったの
学校へ行く道すがら
不思議な家だなと
思って
前を通っていたんだけどね

その家に
新しく引っ越してきた女の子と
偶然お友達になったの
そして初めて
その女の子の部屋に入ったら
今で思えば
ロフトの部屋だったの

子供の目から見ればね
ものすごく大きなお部屋で
今までに見たことのないすばらしい
お部屋だったの

窓からは
山が見えて
夕方には
夕焼けがね
とっても素敵なの

いつも
その子の部屋で
暗くなるまで
遊んだりしたわ

でも
小学校6年になって
その子が転向していって行って
その家にいけなくなったの

それからかなー
私がロフトの家に住みたいと
思い始めたのは

ロフトに住みたい夢を実現するために
建築家になったんです。

すみません
私ばかり話して
こんな話し面白くないですよね
創:
そんなことないです。
夢を実現するために
がんばっているんですね
子供の時の夢を
追いかけるというのは
すばらしいことですよね
僕には
そんな夢なかったな
親が言うから
なんとなく
大学に行って
就職指導に従って
なんとなく今の会社に
就職して
只なんとなく
過ごしている人生なんか
つまんないですよね。

優子:
とんでもありませんわ
親が言うことに間違ったことなどありませんから
創さんは
正しい道を
歩んでこられたんだと思います。

創:
そう言われると
少しは楽になったような
でも
これって
人生相談だよね

優子:
すみません
そうですね
若輩者の私が
こんなこと言って
すみません。

ふたりは
話している内容を
客観的に見て
面白くて
お互いに笑ってしまいました。

そんな人生相談のような
話しをしながら
景色の良い
サービスエリアに
車を止めました。

ちょうど若葉が萌える
新緑の時期で
公園のベンチに座って
創の母親が作ってくれた
お弁当を
ふたりで食べました。

優子:
私まで
ご馳走になって
すみません。
手が込んでいますよね
このお弁当
いつも創さんは
こんなお弁当を持っていかれるんですか

創:
いつも弁当ですけど
こんな立派なものではないな
今日は特別みたい
いつもより
数段おいしいよ
きっと
優子さんにも食べてもらおうと
張り切ったんじゃないの
朝の早くから
起きて作っていたから


優子:
すみません
お世話をお掛けしてすみません。
お弁当のお礼に
何かお土産でも
買ってきます。

そう言って
サービスエリアの売店に
優子は向かいました。

創も後ろを付いてきました。

売店で
二人は相談して
お土産を買いました。

それから高速で
帰り始めたのですが
帰り際
事故があって
高速道路が大渋滞に
あってしまいました。

1時間ほどで帰れるものが
4時間ほどかかってしまいました。
ふたりは
渋滞の車の中で
いろんな話しをしたのです。

優子:
ロフトは
創さんは
お好きなんですか。

創:
どうかな
ロフトに住んだこともないし
あがったこともないし
もちろん家にもないし
好きかどうか分からないな。
でも優子さんの話を聞いていると
ロフトって
なんかわくわくする
空間なんだということが分かったような気がする。

家に
優子さんの理想どおりの
ロフトが出来たら
一度
使ってみたいと思います。
天窓から見える夕日は
すばらしいかどうか
確かめたいものだし
また
寝ながら
星空も見たいものだと
思います。

でもひとりで見ていると
なんか
少し虚しい様な気もするよね
こんなものは
ふたりで見るものかな


優子:
そうかもしれませんね
創さんも
結婚して
奥さんとロフトで
星空を見るなんて
ロマンティックじゃありませんか

創:
それは理想ですね
それにはまず相手を見つけなければならないし
その相手が
ロフトが好きでないと
だめですよね
優子さんが言うように
ロフトって
好き嫌いが激しいと
思うんだ

僕が結婚した相手が
ロフトが嫌いなら
私と一緒に
ロフトで星空
なんて
出来ないものね

優子:
そんなことないでしょう。
創さんに合わすと思いますよ。

創:
そうかな
でも
それより
相手がいないもの
、、、
、、、、
、、、
優子さん
優子さんは
失礼ですが
付き合っている人がいます?
、、

優子:
えっ
、、、、、、、、、
、、、
あっ


創の言葉に
優子は
驚きました。
そのようなことを
考えたこともなかったというと
嘘になりますが
心の準備もなく
答えに窮しました。

創:
ごめんなさい
突然へんなことを言って
渋滞で
困ったな
ごめんね
今の質問
忘れてください。

優子:
私
付き合っている人いません。

創:
あっ
そうですか
、、、、
それなら、、、
、、
私と
付き合ってください。

優子は
横目で
真っ赤な顔になった
創を
チラッと見ました。
こんな時には
女性は強いもので
優子は
冷静に
状況の分析をした後で
落ち着きながら
「はい」と答えました。

その後
渋滞を抜けるまで
沈黙が続きました。

やっと自動車が
走り始めて

優子:
渋滞抜けましたね
私たちも抜けましょうか。

創:
はい
それはいいですね

そういって
ふたりは
また和やかに
リフォームのことや
お弁当のこと
お土産のこと
ロフトのこと
それに
次の会う約束のことなどを
話し合いました。

創の家に着くと
遅くなって
心配した
両親が
外まで出てきました。

渋滞にあったことを言うと安心して
優子も家の中に誘いました。

優子は
お弁当のお礼を言って
お土産を渡しました。

創の母親は
「夕食を
一緒に」と言ってくれましたが
それは頂かずに
会社に戻りました。
数度
山田の家を
訪ねて
設計の詳細を練り上げました。

優子の作った
リフォームの案は次のようなものです。

一階のお部屋の大部分は
ほとんど現況のままとし
トイレお風呂キッチンの水周りを
少し手直しをするのと
床暖房を全面に採用するというものです。

二階については
ほとんどの間仕切壁を
取り払い
その後居間やお風呂トイレ洗面所等を
配置するものです。
ロフトについては
収納部分や廊下トイレの部分の
上部の設け
その部分の梁を掛け直し
低めにして
ロフトの床を新設するものです。
そうすることによって
ロフト上部の天井高を高くして
ロフトまでの高さを抑えることが
出来るのです。

それから
ロフトのあるお部屋の天井を
屋根裏まで上げることによって
全体の天井高を
高くすることが出来るのです。

もちろん
天窓と
妻側にも窓を設けました。

優子の理想の
明るく広い高いロフトが
出来ること間違いなしです。

これらを図面として
優子と社長は
見積もりを持って
創の家を訪れました。

説明して
工事契約
になったのです。

実際の工事が始まると
工事監理は
優子の設計部とは
違うところで行うのですが
優子もたびたび訪れて
工事を見守りました。

特にロフト部分の工事は
今までとは違う方法だったので
大工さんに
少し苦情を言われました。

当初の予定通り
40日で
改装が出来上がったのです。

新居に
山田の家族が
引っ越してきました。

家族は
「すごい
すばらしい」
の連発でした。

引っ越してから
2日後
優子は
創に呼ばれて
山田の家を
訪れました。
みんなで
新しい二階の
居間で
夕食をとった後
創の両親は
後片付けを
さっさと終わらし
一階へ
降りていってしまいました。

創:
予想通りの
良い家になったね
優子さんに
任して本当に良かった
両親も
喜んでいたよ

優子:
とんでもありませんわ
私だけの仕事ではありませんから
それに
創さんの協力がなければ
出来ませんでした。

そういいながら
用意していた
ワインを
開けました。

創:
新しい家に
新しいワイン
良いですよね
それに
もうひとつ
新しいものがあれば
最高ですよね

優子:
それは何なんですか

創:
それは
、、、
、、、、、、
それは
新しい家族
お嫁さんが
いたら
最高です。
優子さん
結婚してください。

優子:
えっ

予想はしていましたが
突然の
プロポーズに
優子は
言葉を少しの間
失います。

ふたりは見つめあいながら
時間は
経っていきます。

優子は
しばらくの後
「はい」
と答えます。


創:
ありがとう
乾杯しよう

優子:
こちらこそ

そう言って
ふたりは
乾杯しました。

それから
どちらから言うともなしに
ロフトの階段を
上って
ロフトに上がりました

天窓を開いて
星空を見ました。

その日は
新月で
月がなく
星が
ハッキリと見えました。

ふたりは
時間の経つのも忘れて
見ていました。


ロフトに住みたいは
終わります。

お読みいただきありがとうございます。
優子の夢は
思わぬ形で
現実のものに
なったのですが
こんな風に
うまく運ぶかどうか
少し疑問ですよね

でも
現実は
小説より奇なり
ですので
こんなことも ありぐち かな
と思います。


またの機会に
優子と創の家族に
子供が生まれて
4人で
ロフト生活をする
続編を
書きたいと思います。