弟の仕事は ガラスふきだけですが 主婦である母親は そんなもので終わるものではありません。 正月になると ながくお店は閉まってしまうので まずは買い物 それから おせち料理です。 この家のおせち料理は 簡単なものですが それなりに大変です。 縁起物の 数の子・黒豆・田作り くわい・レンコンなど それから 通常の食事になる お漬け物・白菜 それから雑煮の材料の 大根・人参 普段はほとんど食べない 魚 などを洗ったり 煮たりします。 そんな忙しい一日が過ぎて 夕方になります。 大晦日の夕食は 年越しそばではありません。 そのような習慣は この村ではありませんでした。 そば自体を 作っていませんでしたので そばも食べません。 そばは 五穀中で 最下位のもので 収量も悪く そんなものをこの村で作る者は 皆無です。 だから この村では そばは食べません。 普段と変わらぬ 食事が終わると ラジオを聞き出します。 兄弟は 9時に寝ますが 両親と兄は ラジオの紅白歌合戦を 聞いているみたいです。 除夜の鐘が鳴るとき 一年で一番夜更かしの日は終わります。