ロフト付きはおもしろい

ロフト大好きの68歳の老人の日記です

破れた靴

私の住むところは
戦後間もない頃までは
川辺郡園田村と言いました。

戦前の園田村では
知らぬ人はいない
大地主で
「人格者」として有名な
○○様がいました。

○○様は
もちろん
大金持ちですが
小作人には
優しく接していて
年貢を
少なくしたりして
評判の人でした。

戦後
占領政策で
農地解放が行われて
○○様は
その田地の大半を
失ってしまったのです。

私の父も
○○様の
小作人でした。

農地解放の政策は
ある限度までは
小作地として
残すことができるのですが
私の父の
小作地については
父が
「良くやってくれる」という理由で
小作には残さず
渡してくれたのです。

私が
今まで生活できるのは
○○様のおかげと言っても
嘘ではないと思います。

○○様は
戦後は
その人徳を買われて
裁判所の調停委員として
働くことになります。

隣村に住む○○様が
裁判所まで行くのは
バスですが
たまたま私の母が
乗り合わせました。

帰ってきて
母は
「バスの中で
○○様と会ったけど
○○様の革靴に
穴が開いていた」と
私に言いました。

昔は
園田一の大金持ちだったのに
破れた靴を
履いていたことに
母は大変驚いていたのです。




○○様は
きっと
お金がないから
破れた靴を履いていたのではなく
何か外の理由があったのだと思うのですが
今となってはわかりません。

○○様の家は
今は
文化財に指定され
お料理やさんに
なっています。

私の靴も
破れていたので
そんなことを
思い出してしまいました。

でも
私と
○○様は
全く違いますよね

私は単に
お金がないだけですもの