ロフト付きはおもしろい

ロフト大好きの71歳の老人の日記です

ブログ小説「冴子の人生は」その108

冴子には
地震ですべてを
なくしてしまい
もうなくなるものは
何もありません。

破産宣告を受け
正真正銘の
無一文になってしまいました。

避難所暮らしでは
とくに
何も要らないので
無一文でも
支障がないですが
避難所暮らしでは
働くのも不利でした。

ハローワークにも行って
職を探しましたが
なにぶん神戸の会社は
大変で
求人どころではないのが現状な上
冴子は
とくにこれといった
特技もなかったのです。

そんな生活を
桜の咲く頃まで続けました。

仮設住宅が
次々と
建っていって
避難所の人数も
少しずつ
少なくなってきました。

避難所は
高齢者とか
子供の家庭が
優先されていて
冴子のような
中年女性の
一人暮らしは
後回しらしいと言う
うわさが流れました。

やっぱり自力で
アパートを探す方が
いいのではないかと
思っていました。

そんなとき
勇治の
四十九日の法要が
あるので
来て欲しいと
勇治の
お母さんが
やって来ました。

連絡の電話もないので
姪の運転で
やって来たのです。

お母さんは
冴子の
避難所暮らしに
同情していました。

姪の車に乗って
岡山に向かいました。

翌日
四十九日の法要が
盛大に執り行われました。

そして
そのまた翌日
お母さんは
お葬式のあとに言ったことを
繰り返しました。

離れに住まないかと
言ってくれました。

でも
冴子は
断りました。

「それなら
アパートを借りる
保証人に
なって上げますので
今から
神戸に行きましょう」と
切り出しました。