両親はなくなってしまったけど 兄弟には来てもらえて そのうえ 子供たちにも 来てもらえて 少しは 許されたと 思いました。 冴子は 結婚を機会に スナックを辞めようと思いました。 でも 川上さんは 「少しの時間でも 勤めたら 世間が広くなって いいと思いますよ。」と すすめられました。 家庭にこもりっきりになると 登との結婚の時と 同じように あんなことになるかもしれないと 思われたのかもしれません。 そこで ママに聞いてみました。 昼の ランチの時間だけ 勤めたいと 言ったのです。 ママは 「それがいい」 と即答して そんな風に決まりました。 ランチの仕込みの 10時頃から 後片付けの 3時まで勤めて スナックを切り盛りすることになります。 ママは ほとんど出てこないので もうひとりの パートの人と ふたりで店番です。 それから 川上さんが 帰ってくる時には 家にいるように していました。 川上さんにとっては スナックに行かずに 家に直帰しても 出迎える人は 同じで その上 朝ご飯と 弁当付きで 「ラッキー」と 思ってしまいました。 そんな楽しい 日々は たちまちに過ぎていきます。 十年過ぎて 冴子は 60歳になりました。