ロフト付きはおもしろい

ロフト大好きの68歳の老人の日記です

ブログ小説「冴子の人生は」その146

冴子は
もう命は長くないと
自覚していました。

医師の見立ても
同じです。

鎮痛剤で
傷みが少し楽になった時
看護師さんに頼んで
手紙を
ポストに入れてもらいました。

看護師さんが
投函してから
一日が過ぎ
二日が過ぎ
もう
手紙が
届いている頃と
思いました。

それを読んで
私の所に
見舞いに来てくれることだけを
最後の願いと
思いました。

三日が過ぎ
四日が過ぎ
時間が経っていきました。

冴子は
その間にも
みるみる悪くなり
痛み止めも
麻薬を使う程までになっていました。

医師が
呼吸が止まった時
人工呼吸器を
付けるかどうかを
遠慮がちに
聞いてきました。

冴子は
「付けないで欲しい」と
告げました。

それから
数日が過ぎ
誰も
見舞いに来ることなしに
息を引き取りました。

冴子の亡骸は
保証人になっていた
キャベツ工場の
社長によって引き取られ
形ばかりの
葬式が
斎場で行われ
火葬されました。

遺骨は
無縁仏に安置されました。