ロフト付きはおもしろい

ロフト大好きの71歳の老人の日記です

ブログ小説「もうひとつの冴子の人生 パート3」その13

駅のレストランで
昼ご飯を
食べました。

終わって
外を見ていると
見覚えのある
登が
歩いていました。

何十年ぶりで
会うのに
ほとんど
変わっていません。

昔から
「坊ちゃん」顔でしたが
今も変わらぬ
坊ちゃんでした。

声を
出して
追いかけようかと思いましたが
やはり
、、、、
そんな事は止めました。

ゆっくりと
あとを追うように立って
登の家に向かいました。

登が
門の中に消えたのを
見てから
数分待って
おおきな深呼吸をしてから
インターホンを押しました。

数秒の後
登の声がしました。

「はーい
どなた」と
聞き慣れた声です。

テレビインターフォンで
たぶん
冴子を見ているのに
聞いてくると言うことは
冴子を
忘れてしまったのかと
思いました。

それとも
老けてしまったのか
思いました。

そんな事を考えて
時間が過ぎて
あわてて
「冴子です」と
答えました。

数分経ったような気がしました。

中から
登ではなく
登の母親が
出てきました。

母親も
数十年会っていません。

すっかり
おばあさんに
なっていました。

でも
声は若々しく
「冴子さん
なんの用事なの
私たちは
あなたに
用事なんてありませんよ。

お引き取り下さい。」と
冴子に
門越しに
言われてしまいました。

ただただ
「あの時はすみませんでした。
ごめんなさい。」
と謝るばかりです。

母親は
それを言ったらすぐに
家の中に
入ってしまったようです。

冴子は
「また寄せて頂きます」と
言うのが
精一杯でした。

その日は
それだけで
帰りました。