ロフト付きはおもしろい

ロフト大好きの71歳の老人の日記です

ブログ小説「笑顔のアイコンタクトに魅せられて」その85

美奈子さんは
大学生の時は
少し変わっていました。

登が
瞬時に見た美奈子さんの印象は
前は
何もわからない大学生という感じでしたが
いまは
医学以外はわからないという医師という感じでした。

登の見立てでは
いずれにせよ
世間知らずにうつった
美奈子さんでした。

挨拶して
美奈子さんは
「コーヒーでも
飲みましょう」と
誘ってきました。

病院を回って
セールスをしている
登には
医師である
美奈子さんの誘いを
断るわけにはいけません。

病院のカフェで
ふたりは
コーヒーを飲みました。

無口でした。

はじめこそ
少し近況を話しましたが
つづきませんでした。

登は
別れた時のことを
聞きたかったけど
もっと
傷つくことを言われたら
と思って聞けませんでした。

美奈子さんも
あの日のことの
本当のことを話したら
怒られそうで
話せませんでした。

コーヒーも
水もなくなって
登は
「お元気で」と言って
伝票を持って
立ち上がった時に
美奈子さんは
ポツリと言いました。

「あの時は
ごめんなさい」と
登に言いました。

突然の言葉に
登は
「忘れました」としか
言えませんでした。

登は
相手の顔を見ず
少し頭を下げて
別れました。

美奈子さんは
その時
今までに研究した
とびっきりの
笑顔のアイコンタクトを
登にしていたのですが
それを
登は見る事はありませんでした。

それっきり
登は
その病院には
行きませんでした。