ロフト付きはおもしろい

ロフト大好きの71歳の老人の日記です

ブログ小説「スポンジケーキをつくりたい」その24

朝礼で
キスワンの経過を
社員全員に
報告する機会がありました。

正子は
緊張しましたが
自分の知っていることを
話しました。

キスワンに関係しない社員や
パートさんたちは
全く
わからないような風でした。

何でも
ずけずけ言う
お局様の
パートのおばさんが
質問しました。

「キスワンって
どんな役に立つのですか。

スポンジケーキなら
私できますよ。

そんな高価な機械を使わなくても
できます。」と
言ったのです。

正子は
返す言葉がありませんでした。

スポンジケーキや
ホイップクリームなど
できる人には
簡単にできることで
そんなたいそうな機械は
使う必要などないことは
正子もわかっていました。

正子が黙っていると
松井が
「キスワンが
成功したのは
スポンジケーキや
ホイップクリームだけであることは
事実ですが
まだまだ
全容がわかりません。

もっと
皆様が
食べたことのない
お菓子
いや食品が
できると
正子さんは確信しています。

もうすこし
時間を下さい。

よい結果が
きっと出ます。」と
横から言ってくれました。


社長は
黙って
うなずいていました。


盆も終わった頃
キスワンの
蓋が届きました。

待ちに待った
キスワンの出来上がりだと
正子をはじめ
全員は思ったのですが
新たな困難の始まり
だったのです。

圧力タンクを作った
業者の駐車場で
蓋と
本体を
丁番で
結合して
フランジの溝に
Oリングを入れて
ボルトで締めました。

水圧検査器を
キスワンと繋ぎ
水圧検査を始めました。

水圧検査器の
手動ポンプを
動かして
圧力を高めていきました。

2気圧
3気圧と
圧力を掛けていきます。

正子は
圧力計を
食い入るよう
見ていました。

そんな正子のまわりでは
慌てて
自動車を
移動する車が
相次いで出てきました。

爆発すると
思ったのでしょう。
10数メートル先の
車まで
どこかに行ってしまいました。


そんな中
圧力は
上がっていき
15気圧
16気圧
になりました。

手動ポンプを
押し下げるには
相当な力が
いるところまで来ました。

19気圧になったとき
フランジの接続部分から
漏水です。

水圧は
漏水によって
2気圧まで
一気に下がってしまいました。

丁番の軸に付けていた
パイプが
少し曲がっていました。