ロフト付きはおもしろい

ロフト大好きの68歳の老人の日記です

ブログ小説「順子」その23

高校生になっても
順子の
日課は
小学生のときと
ほとんど変わりません。

変わったのは
宿題は
学校の休み時間の間に
手儀はよく
やってしまうことくらいでした。

家業の
散髪屋が忙しいので
母親に代わって
高齢になった
おじいさんやおばあさんを
助けていました。

3年生になると
将来の進路が
話題になりました。

誰もが
順子は
医学部に行って
医師になると
思っていました。

順子も
そうしたいと
考えていましたが
それは
容易ではありません。

高校生時代は
学費が無料の特待生で
過ごせましたが
大学では
そんな簡単には
いかないと
思っていたのです。

先生に相談すると
「防衛大学校なら
学費は無料で
お給料までつく」と
言われたのですが
家からは遠くて
両親とおじいさんおばあさんを
置いてはいけないと
おもったのです。

近くで
学費がなくて
奨学金が出て
医学部である必要がありました。

そんなの無理かと思ったのです。

学校の先生や地域の人たちは
そのことがわかっていました。

そこで
探したのです。

スポンサーを
探したのです。

誰の目にも
優秀な医師になると
考えていた
順子を
医師にするための
「会」が
自然発生的に
出来上がったのです。

そんな会が
見つけてきたのが
地元では
有名な企業です。

順子を
イメージキャラクターに使って
宣伝して
その報酬で
大学の学費と
奨学金にするというものです。

その会社は
かまぼこを作っていて
コマーシャルに出るのです。

「かまぼこを食べたら
こんなに賢くなった」というのが
順子の役です。

順子は
かまぼこは好きですが
かまぼこを食べたら
賢くなるという
エビデンスは
当時はありませんでした。

抵抗はありましたが
みんなが薦めますので
それに従うことにしました。

こうして
高校三年生の冬に
テレビコマーシャルに
登場することになります。

小さくてかわいい
順子が
おいしそうに
かまぼこを
食べるだけの
映像です。

服装が
小学生ぽいので
知らない人が見ると
小学生が
かまぼこを
おいしく食べているとしか
見えませんでした。

コマーシャルは
大当たりして
かまぼこもよく売れ
順子も
有名になってしまいました。

そのおかげで
春からは
大阪福島の国立大学の医学部に通うことになりました。