ロフト付きはおもしろい

ロフト大好きの71歳の老人の日記です

ブログ小説「コンゴ川を渡ったボノボ」

遠いむかし
のお話です。

気が遠くなるような
今から
100万年前から180万年前の頃
アフリカの
大河
コンゴ川は
いつものように
コンゴ盆地を
悠然と流れていました。

その流れに
阻まれて
コンゴ川の
北岸に
住んでいたチンパンジーの祖先
(以下チンパンジーと書きます)の
一団は
閉鎖的な
社会が
築かれていました。

今でも
チンパンジーは
人間に次ぐ
知能を持っています。

当時は
最高水準の
知能を持ち合わせていました。

今と変わらない
習性を持っていたと
考えられます。

同じほ乳類の
牛や馬などと
全く違う習性は
チンパンジー同士の
殺戮といじめ・虐待です。

チンパンジーの
赤ん坊を
殺すことも
よく知られています。

チンパンジーは
他のサルと同じように
集団で
行動します。

他の集団を
襲って
殺してしまったり
あるいは
単独でいるチンパンジーを
襲うことも
よくあるそうです。

チンパンジーの
歴史は
いつも
血で塗られています。


そんな中
1匹のチンパンジーが
生まれてきました。

名前を
ボノボといいます。

ボノボの
母親は
優しい顔立ちの
チンパンジーでした。

ボノボの面倒をよくみて
愛情を注ぎながら
育てていました。

しかしあるとき
ボノボの属する
集団に
異変が起きます。

集団の
ボスで
ボノボの父親でもある
チンパンジーが
オス同士のケンカに負けて
死んでしまうのです。

チンパンジーの世界では
よくあることで
このボスの交代の
次にあるのは
子殺しです。

ボノボの母親は
それがわかりました。

同じ集団の
まだまだ幼い
赤ちゃんの
何匹かは
犠牲になりました。

たまたま
木の実を取るため
少し離れたところにいた
ボノボと
母親
集団から
逃げることにしました。

集団から
逃げると
チンパンジーには
多くの敵が
現れます。

木の上まで襲ってくる
敵は
蛇とか
豹とか
それに一番の敵は
チンパンジーとかです。

集団で
暮らしていると
誰かが
遠くから
襲ってくる敵を
察知することが出来るのです。

ひとりで暮らしていると
昼夜わかたず
周囲に注意を払わなくてはなりません。

木の上に棲む
チンパンジーは
四方ではなく
上下を含む
六方に注意を払わなくてはいけません。

子供を抱えて
逃げなければならず
エサを探す
母親は
身が細る
思いで暮らしていました。

ボノボも
子供心に
母親の苦労が
わかりました。

そんな生活が
数ヶ月続きました。

いつものように
木の上で
その日のねぐらを
作り始めた頃
豹が近づいてきていたのです。

襲いかかろうとしたその瞬間
母親は
ボノボを
抱いて
隣の木に
飛び移ろうとしたのですが
間に合わず
下の川に
落ちてしまいました。

犬や牛は
生まれつき
泳ぐことが出来ます。

チンパンジーは
木の上で
暮らしているので
水とは
縁遠く
本能的に
泳ぐことは出来ません。

水に落ちた
ふたりは

手足を
バタバタしながら
水の中で
もがいていました。

岸には
豹が
にらんでいます。

対岸まで泳がなければなりません。

ボノボは
身が軽かったのか
生まれつきかわかりませんが
泳げたのです。

母親は
ただ
ただ
手足を
動かしているだけです。

母親は
ボノボに
「早く
向こう岸に泳ぎなさい」
と叫びました。

小さい体の
ボノボは
必死に
泳ぎました。

命からがら
対岸に泳ぎ着いたとき
後ろを振り返ると
母親の姿はありませんでした。

ボノボの
よく見える
小さな目で
上流から
下流まで見渡しましたが
誰もいません。

ボノボは
大声で叫ぼうと思いましたが
敵が現れるので
やめました。

ボノボは
涙が出ました。

ひとりぼっちになりました。

小さい
チンパンジーが
ひとりで
生きていくのは
不可能に近いです。

しかし
ボノボには
好都合のことがありました。

それは
その年が
豊年満作の年だったからです。

木の実や果実は
木にあふれ
ごちそうが
そこらじゅうにあったのです。

小さい
ボノボを
襲って
食べようなどと
思う動物も
いませんでした。

数年が経って
ボノボは
肩幅が広い
立派な
チンパンジーになりました。

身軽に移動できる
ボノボを
襲おうとする
他の動物などいませんでした。

しかし
チンパンジーは
違いました。

本能的に
チンパンジーは
オス同士
争うのです。

オスのチンパンジー
オスのチンパンジーを見かけると
誰彼なしに
戦いを挑みます。

ボノボに
ケンカを売ってくる
チンパンジーも
多くいました。

普通なら
相互に
力を試すために
ケンカをします。

ボノボの場合は
無駄なケンカは
しません。

ただ逃げるだけです。

水の中に
逃げると
絶対に相手は
追いかけてこないので
簡単でした。

逃げながら
いつも思いました。

同じ
チンパンジー同士
なぜ仲良く
暮らせないのかと
思ったのです。

仲良く暮らしたら
もっと幸せで
もっと
もっと
恵まれた生活が
出来るのにと
思いました。

そんな日が
来ることを
コンゴ川に沈む
夕日に向かって
思っていました。


夕日に向かって
願っていた日から
数年が経って
ボノボも
数々の
社会的経験や
観察もして
仲良く暮らせる
そんな日は
やっぱり来ないと
思い始めた頃でした。

ある日
果実を取りに
あるチンパンジーの群れの近くまで
行ったとき
ある若い
チンパンジーを
見付けました。

木の実を
取っていた
その
チンパンジーは
自分の分を取って
食べた後
手に持てるだけの
木の実を持って
群れに向かいました。

よく見える
ボノボの目で
見ていると
その
若いチンパンジーは
群れの中の
老いチンパンジーに
分け与えていたのです。

そのようなことをする
チンパンジーを
今まで見たことがありませんでした。

気になって
翌日も
そのチンパンジーを
見ていました。

同じように
していました。

そのチンパンジーは
メスで
若くて
可愛いように
ボノボには
思えました。

次の日も
次の日も
見ていました。

同じように
見ていたとき
群れに
一大事が起きました。

オスの序列が
大きく変わったのです。

若いチンパンジーも
大きな影響を
受けたのです。

他のオスに
言い寄られていたのです。

まだ若い
そのメスは
その気がないのに
逃げ回っていました。

しかし
屈強な
オスに
捕まってしまいました。

大きく
泣き叫ぶ声を聞いた
ボノボは
何の考えもなく助けに
行ったのです。

不意を突かれた
オスは
倒れてしまいました。

若いチンパンジーの手を持って
山の藪の中に
ふたりは
隠れました。

ボノボは
名前を
聞きました。

若いチンパンジーは
「ボノーラ」と
答えました。

ボノボは
ボノーラの
瞳を見つめて
「大丈夫か」と聞きました。

群れから
メスの
チンパンジーが
離れることなど
ないのですが
ボノーラは
「あんなところには
もう帰れないし
帰りたくない」と
ボノボにいいました。

ボノーラも
群れに中に起こっている
凄惨な
出来事に
心を痛めていたのです。

ボノボと同じように
チンパンジー同士が
仲良くなれないのかと
思っていたのです。

それで
ふたりは
一緒に行動することにしました。

ボノボは
足も速く力も強く
何よりも
泳ぎができるので
どんな危険からも
逃げることが出来るのですが
ボノーラは
すべてから
逃げることなど
無理だと思いました。

特に
同じチンパンジーからは
逃げられないと
思いました。

戦えば
きっと
ボノボは
勝てて
ボノーラを
守れるとは
思いましたが
他の
チンパンジーと同じように
同じ種で
争うなど
出来ませんでした。

そう考えて
コンゴ川を見ていました。

ボノボの頭の中に
大きな
考えが
浮かんだのです。

「このコンゴ川の
向こう岸に渡れば
他の
チンパンジーは
決して追ってこないだろう

ふたりで
この川を
渡ろう」
と
思ったのです。

ボノボだけなら
時間がかかっても
向こう岸に渡れるけど
ボノーラは
無理かと思って
水面を見ていると
上から
木が流れてきて
その上に
ネズミが
一匹
乗っていたのです。

「そうだ」と
思いました。

ボノーラを
木の上に載せて
運べばいいのだと
思ったのです。

ボノボは
渡れそうな
木を捜して
川岸を
探し回りました。

二日目に
それらしい
ものを見付けて
ボノーラを
載せてみました。

ボノーラは
怖がっていましたが
これしか方法がないと思ったのか
しっかりと
しがみついて
いました。


翌日
朝日が
上りはじめた頃
ボノボは
ボノーラが乗った木を掴んで
対岸に
ゆっくりと
泳ぎはじめたのです。

昼になっても
対岸まで
まだまだでした。

相当疲れてきました。

川の中程は
今まで経験したことがないような
波が出ていて
ボノボは
水を飲みました。

ボノーラは
黙って
ボノボを
見ていました。

夕日が
沈みはじめた頃
対岸が
迫ってきたのです。

日が落ちるまでに
対岸に
着かなければなりません。

最後の力を
振り絞って
対岸まで
たどり着いたときには
空は
真っ暗になっていて
星が瞬いていました。

近くの木に登り
疲れを癒しました。

ボノーラが
好みを取ってきてくれて
食べました。

(実際は
コンゴ川が
今から
100万年前から
180万年前までの間に
干ばつが来て
浅瀬になったときに
渡ったと
考えられています。)

翌日
日が昇ると
辺りを見回し
臭いを
嗅ぎました。

チンパンジーの
陰はありませんでした。

コンゴ川の南側には
チンパンジーは
棲んでいなかったのです。

ふたりは
仲良く
生活をはじめました。

ふたりの間には
たくさんの
子供が生まれました。

みんな仲良くと
子供に教えました。

食べ物も
分け合って
食べるようにしました。

ふたりの
願いは
叶って
ボノボは
今も仲良く
自然の中で
暮らしています。

人間の祖先が
チンパンジーの祖先と
別れたのは
今から
600万年前から700万年前です。

人間が
なぜ
ボノボから
進化しなかったか
残念でなりません。

取り立てた
理由もなく
戦争をしたり
人を怨んで殺したり
お金のためだけの人生を送ったり
そんなこと
チンパンジーと同じです。

万物の霊長たる人間ですから
チンパンジーの遺伝子を持っていても
ボノボと同じように
仲良く生きていくことも出来ると思います。

私は
そう信じたいです。

戦争を止めましょう

私怨を忘れましょう。