それを聞いた 野村は 「その時がきたか」と 肩を落としていました。 「何を言ってるのよ」と 順子や娘たちは 笑いましたが 相当ショックのようでした。 次の日曜日 みんなで料理を作って 待っていました。 海老沢君が以前好きだと言っていた 魚の煮つけとか カボチャの炊いたのとか 普通のおかずと ご飯です。 昼ごはんですから 12時なんですが 例によって 海老沢君は 30分前以上に 家に来ました。 まだ出来ていないので 海老沢君は 野村が 応対して 話していました。 海老沢君は 野村の仕事を 聞いたりして 感心していました。 海老沢君は 営業職で 野村は 根っからの 研究人ですから 180度違うのですが どういう訳か 話が弾んでいました。 12時ちょうどになって ご飯の支度が出来たので 食卓に移動しました。 順子の家では 普通の家のように 賑やかに 話をしながら 食事はしません。 昔の 日本の家のように 黙って 食事をするのが 普通だったのです。 それは 野村が 寡黙だからと言う理由もありますが 癌になって 胃を摘出して よく噛んで食べないと 食道に 詰まってしまうのです。 そんな理由で 話さないで 食べるのですが そんな習慣を 理解しない 海老沢君は その 寡黙な時間を 別の時間に作りかえました。