「きれいだね」と 言って欲しかった 少なくとも 「似合うね」と 言って欲しかったのに 何も 触れなかったのが 残念でした。 そんな涙ぐましい努力は 数年に及びました。 徐々にではありますが 野村は 順子のことを 見ているように 思いました。 もう少しだと 順子は 思っていました。 そんな時が過ぎて あの 時が来ました。 新型インフルエンザが 世界中で 流行が始まり 日本に その脅威が 迫ってきたのです。 関西に 最初の 患者が 見つかり その後 感染が 広がり 日本中が 大騒ぎになりました。 順子の 勤めていた キオスクの 同僚が 罹患して キオスクは 当面 閉店となりました。 順子は 自宅待機になったです。 2009年5月23日が やって来たのです。 30年前に戻った その日が やって来たのです。 野村も いつも言っていたので 覚えていて 朝から ソワソワしていました。 もしかして また戻るようなことが あったら どうしようかと 思ったのです。 一応 57才となっていますが 30年は重複していますので 本当は 87才 もう よぼよぼのおばあさんなんです。 もう一度だけは やめて欲しいと 順子は 思っていました。 もちろん 野村も そう思っていて その時間となる 9時過ぎには 順子の横にいました。