妖精を テーマにした ブログ小説は書いておりますが その中に出てきた 「湖子(ここ)」を主人公にしております。 神さまの お手伝いとしての 妖精ですが その中で 湖子は 1番頼られる妖精です。 何千年も 休みなく 働いてきた湖子は 神さまに 休暇を与えられます。 と言うわけで 湖子は 胎児から休暇が始まります。 神さまは 湖子の助けになる様に まだまだ新米の星子と 夫で はじめて 人間から妖精になった 剛が 同行することになったという 筋書きです。 人間界に 使いとして おいでになった キリストをモデルにしています。 キリスト教を信じておられる方には 少し冒涜のように 思えるかも知れませんが お許し下さい。
湖子星子剛の関係は 「妖精の認定テスト」をご覧下さい
あらすじ 神さまは 妖精の湖子を もうひとつ 神さまにするために 人間界へ 修行に行かせました。 人間界に生まれて 人間として生活して 人間として死ぬためです。 湖子のおつきとして 新人の妖精星子と 人間からはじめて 妖精になった剛も 人間界に送りました。 生まれてきた 湖子は 男の子として 人間界での 休暇と言うことで 過ごすことになります。
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神さまは 何億年も 地球を見守っていて 少し疲れました。 いろんな出来事が わんさかと 起こってしまって てんてこ舞いになってしまっていたのです。 そこで もうひとりというか もうひとつというか 神さまを 作ることにしました。 最初から 作っていたんでは 間に合わないので 神さまのお手伝いをしている 妖精を 神さまにしようと考えました。 妖精の中で 1番古株で 1番信頼している 湖子を 神さまにすることにしたのです。 湖子は 能力は 既に 神さまの域に達していました。 でも 人間界から はじめて 妖精になった剛を見ていると 人間の感情を 理解することも 大切だと 思ったのです。 そこで 湖子に 人間としての生活を させることにしました。 湖子と 湖子を少しは助ける様にと 星子と剛を 神政庁に呼んで 次の様に 湖子に告げました。 「湖子 永く 永く 私の手助けをしてくれて ありがとう 湖子に 休暇を与えます。 人間界で その間過ごして下さい。 人間界にいる時には 魔法は使わず 過ごして下さい。 それから 休暇をするのは 湖子の四分の三で 残りの四分の一は 今まで通り 手伝って下さい。 それから 星子と剛を 一緒に」と 言われました。 湖子は いつものように 「承知しました」と言って 人間界に 行ってしまいました。
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星子と剛は 神さまの前に残ったままです。 星子は だいたいのことはわかったのですが 剛は 要領をつかめません。 「休暇に付いていくってどういうことか 四分の一は今までの仕事とは それから 休暇はどれくらいの時間」か まったくわからないのですが 話は終わったので ふたりは 星子の魔法で サッと消えて 経理課へ行って いつものように 経費を預かって 人間界に出発しました。 長い休暇と行っても ズーッと 湖子がいなくなると 神政庁に 支障が生じます。 妖精の 長として 仕事もあるので 長時間は無理です。 そこで 時間を遡って 休暇を取るという 人間なら 考えられない方法を 取ります。 剛が生まれた頃に まず行くのです。 湖子は 胎児の頃から 人間界を 経験することから はじめました。 湖子の 両親になるのは 不妊で悩んでいた 来住悟と弥生です。 悟と弥生は 大阪近郊で 悟のおじいさん夫婦 両親夫婦 それに 悟の妹と一緒に暮らしていました。 結婚して 3年経ちますが 子供が生まれないので 悩んでいたのです。 湖子が 調べて その両親の 子供となることになったのです。 妊娠を 知った 悟と弥生は 大喜びです。 もちろん 家族全員で 喜んでいました。
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お母さんの 母親のお腹は とても気持ちが良かったのです。 「こういうことを 幸せって言うのかも知れない ここで 休暇を過ごせて 最高に幸せ」と 思いました。 そんなお腹の中で 湖子は 家族の話を聞いていました。 そんな話を聞いていて 湖子には 気になる話を 聞いてしまいました。 喜んでいるのは 喜んでいるのですが 弥生以外は 「男の子がいいな」と 言っているのです。 来住家の 跡取り取りとしての 男の子を みんなは望んでいました。 本心が読める 湖子ですから 弥生は 「男の子でなかったらどうしよう」と 悩んでいました。 湖子は はじめは いつも 人間界では 女性として 現れているので 女の子として うまれる予定でした。 何千年も 女性として 現れていたので 男性は イメージできませんでした。 全知全能になっている 湖子でも わからないこともあるのだと 自分自身で思いました。 弥生は 臨月の 生まれる前日まで 仕事と家事をこなしていました。 「人間は とめどもなく がんばれる」というのを 体内にいて 実感しました。
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星子と 剛は 来住家の 隣に 家を建てて 住み始めていました。 もちろん 魔法を使って 違和感なしに 住み始めたのです。 剛は 定年退職した 老人 星子は ものすごく歳の離れた奥様ということに なっていました。 一日中 家にいて 恩給暮らしと言うことに なっていたのです。 当時の 定年は 55歳ですから 55歳という設定です。 星子は 40歳ということになっていましたが 今で言えば 美魔女 とても 40歳には見えない 容姿でした。 湖子が 生まれるまでは 殆ど仕事もなかったので 星子と剛は 本当に仲良く 過ごしていたのです。 湖子の休日というか 星子と剛の 休日になっていました。 湖子が 生まれたのは 体内に入ってから 6ヶ月経った 昭和27年6月でした。 弥生が 産気づき 白米を炊いて たんと食べて 初産に臨みました。 家に 産婆さんがやってきて さっさと 手伝って 次があるからと言って バスで 帰ってしまいました。 そんな簡単に生まれた湖子は 男の子でした。 湖子は いつもの 女性ではないので 凄く違和感を思えました。 湖子が生まれた 来住家は 大阪駅まで 徒歩と電車で20分ほどの 所にありました。 しかし 当時は 寒村と言う言葉が ピッタリ当てはまるところで 電気だけが通じていて 水道は まだ来ていませんでした。
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湖子は おじいさんが 名前をつけました。 両親の名前をとって 悟生と 名付けられました。 (この小説では 湖子という名前を続けます) 湖子が 生まれてくる時の 母親の 弥生は 凄く痛そうでした。 陣痛が 何度も訪れ 段々短くなってきて 傷みも 最高に達した時 湖子は 生まれてきたのです。 弥生の 悲鳴を聞いて 湖子は 思わず 魔法を使って 産道を さっさと 抜け出してしまいました。 人間の母親は 大変なんだと 思いました。 でも生まれてしまったら 湖子に 凄く易しい 幸せな 顔をしていました。 「あんなに 痛い目をしたのに こんなに幸せそうに」 人間って わからないと 感じました。 生まれたての 湖子は 何もできません。 一から 十まで 弥生の世話にならなければ なりません。 もちろん 湖子ですから 自分ですべてすることも 可能ですが 何分 休暇中ですから やめておきました。
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当時のオムツは さらしの生地を 輪っかにしたもので それを ”わたこ”と呼ばれる 綿の入った座布団のようなもので 覆って終わりです。 紙おむつと違うので 濡れると 凄く気持ち悪いので 湖子少し時間ができている時を見計らって 泣いてから 用をたすようにしていました。 弥生は 「湖子は私の時間が ある時に ちょうど 泣くのよね。 わかっているのかしら」と 思っていました。 赤ちゃんにありそうな むずがったりも しませんでした。 いつも 弥生に おんぶされて 暮らしました。 湖子は 弥生が 子供が好きなんだと 心から思いました。 当時の 暮らしは 今から言えば 大変でした。 洗濯は 手洗いだし ガスがないので かまどを使わなければなりません。 少しだけ 食事を作ろうとしても 火をおこして 調理をする必要があったのです。 洗濯でも 同じです。 毎日 多量の オムツを 洗濯するのは 大変です。 オムツの洗濯は 横の川で まず洗ってから タライで おこなっていました。
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星子と剛は 湖子の隣の家で 待機していました。 まったく出番がありませんでした。 妖精見習いの 剛には 神界では 星子の姿が まったくわからないのですが 人間界では ハッキリと わかるので 喜んでいました。 「何もせずに 星子の姿を 見られるなんて 何という 良い仕事」と 思っていました。 星子の方も 「こんな仕事はじめて 何にもしないなんて 何百年ぶりかしら でも 剛さんと ゆっくりできて 嬉しいわ」と 感じていました。 そんなふたりですが 生活は 慣れないことばかりなので 大変でした。 水道がないので せっせと 水を運んでいました。 お風呂の水は 川の水が多い時は横の川から 少ない時には 問題の多い井戸から 飲み水は 少し離れた 空き家の井戸から 運ばなければなりませんでした。 剛が生まれた 昭和27年の 日本の片田舎は こんな所だったのです。 神さまは 時間を少し遡って 湖子を 人間界に 生まれさせたのです。 これは 単に 時間の短縮の目的もあったのですが それよりも ひとりひとりが がんばっていた この時代の方が 人間的だと 考えたからです。
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時間があるので 庭に 野菜を作り始めました。 野菜作りは 簡単だと 思っていたのですが 予想外です。 妖精の星子は 仕事で 何回か 農家のお手伝いをしたことがあるので ほんの少しだけ 経験があります。 剛は 農家の生まれでしたが 小学校の時に 農業をやめました。 子供の時に見た 「農業は大変」という 思い出しかなかったのです。 その後 向上の技術畑を 歩んだ剛には 野菜は 美味しく食べるものという 存在でした。 ほんの少しの 畑を 作るのに 悪戦苦闘です。 毎日見回り 水をやったり 害虫を 取ったりしなけらばなりません。 今なら 害虫用のスプレーで 簡単に解決するところですが そんなものがない 時代ですから 星子も 剛も 手で取らねばなりません。 ふたりは 虫は嫌いでした。 青虫を 手で取らねばならないなんて 相当の 覚悟がいりました。
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畑に 時間を費やしたとしても 夜になると 何もすることもできません。 今なら テレビでも 見るのですが 当時は ありません。 いや 始まったばかりで テレビを持っている人など いなかったのです。 ラジオが主です。 ラジオ番組も 充実してましたから よく聞いていました。 テレビのように ズーッと放送していないので その時間だけ聞いていました。 楽しく ふたりで 話していました。 ふたりの生活は 神政庁の 経費でまかなわれていますので この時代でも 優雅に暮らしていたのです。 しかし 湖子の 家ではそんなに楽ではありません。 毎日の生活は 仕事仕事の連続です。 なにしろ 星子と剛の 畑の 何百倍という 農業をしているのですから 大変に決まっています。 弥生は 湖子を おんぶして 一日中 仕事をしていました。
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赤ちゃんは すぐに大きくなります。 日にちが過ぎ 湖子も大きくなります。 離乳が 始まる時期に なっていました。 弥生は 忙しいので 特に 離乳のための 特別食はありません。 少し柔らかめに 作る程度です。 仕事が忙しいので 離乳は 現代より少し遅いのです。 湖子は 妖精ですので 病気などをしません。 不老不死なのです。 1歳になるまで 病気をしなかったのです。 両親が 風邪になっているのに 赤ちゃんの 湖子が うつらないのは おかしく思われてしまいます。 そこで 熱を出して 風邪をひいてみました。 ながいながい 妖精生活で 初めての経験です。 こんなに 病気が辛いのか はじめてわかりました。 それに 湖子が病気になったら 両親の心配ようが 尋常ではありません。 親の思いが これほどなのかと 今更ながら 思いました。