結婚のことを 十詩子の両親に 話すために 豊岡に向かう 電車に乗っていました。 1月2日ですので 正月の晴れ着を 着ている乗客も多く 華やいだ車内でした。 その中で 初老の悟と ひとつ歳は下だけど 娘のように見える 十詩子が 寄り添って 座っていました。 景気の良い 武田尾の 渓谷のなかを 電車が通っても 窓の外など見ずに ふたりは 見つめあって なんだかんだと 話していました。 宝塚から福知山で乗り換えて 豊岡まで 電車で約2時間です。 朝早く出発して 9時過ぎには 豊岡に着きました。 駅前は 正月ということで 大きな門松が飾ってあったけど 閑散としていました。 十詩子の家は 駅から少し離れていて バスで行くのが普通です。 弟が迎に行くと言っていましたが 『タクシーで行くから』と 断りました。 駅に着くと タクシー乗り場に タクシーが停まっていませんでした。