ロフト付きはおもしろい

ロフト大好きの71歳の老人の日記です

小説『冴子』震災部分その11

当たり前ですが
不自由な
避難所暮らしが始まりました。

倫子は
40才の働き盛りで
血気あふれる時ですので
避難所で
世話役のようなことを
やって
食事の用意とか
していました。

遺体が安置されることになる
寺に朝晩に行って
勇治の遺体が
来ていないか
聞きました。

遺体が発見されてから
3日目の夕方になった時に
寺に来ていました。

はっきりと名前が書いてある
棺がふたつ
隅の方に置いてありました。

係員が
台帳を見て
詳しく説明してくれました。

倫子は
勇治の棺の中を
見ようとした時
係員が
「大変傷んでおります。
やめられた方が
いいのでは」と
言ってくれました。

倫子は
現実を受け止めるためには
勇治の
変わり果てた姿を見なければならないと
思いました。

意を決して
棺を
開けました。

(この伝聞を
聞いたこともあります。

その後
当分の間
PTSDに悩まされましたので
はっきりと
書けません。

あまりにも悲惨なので
この部分は
省略します。
皆様方で
ご想像下さい。

すみません。)

泣かないと決めた
倫子は
じっと我慢して
立ちすくむだけです。

しばらくして
我に帰り
電話をするために
避難所に帰りました。

 

同じように
並んで
岡山と北野に電話しました。

岡山のお母さんも
北野の河本さんのお母さんも
大変
がっかりした様子で
電話の向こうで
泣く声が聞こえました。

河本さんは
これから行くと
言いましたが
安置所は
夜は休みですので
明日の朝と
と言って
電話が切れました。

その夜は
避難所の
なれないお布団の
中で
唇をかみしめました。

朝方ウトウトと
していると
まだ明るくならない頃から
起き始める
人たちの
もの音で
目が覚めました。