マンション管理士何でも相談室に頂いた質問(2002年頃)
<御質問>
今年、新築マンション(SRC)に入居しました。
最近、バルコニーの柵にあたる部分(コンクリート壁状)の内側に
垂直に白い筋が付いており(2箇所)、
よく見るとヘアクラックが上面から
床面の近くまで垂直に出来ており、
外側も同じ位置の外壁タイルにクラックがありました。
白い筋はセメント分が溶け出したもののようです。
補修等が必要でしょうか?
<原因>
鉄筋コンクリート造の場合、
バルコニーのような片持ちスラブの
自由端(支持するものがない方の端)
に持ち出し方向と垂直にひびが入るのは、
よくあることです。
理論的にも、片持ちスラブは、片方は、
建物に強固に拘束されているにも拘わらず、
もう一方は、自由であるという矛盾があります。
その為、乾燥収縮・温度変化・不均等な荷重等々を原因として、
ひびが入るのです。
このため、手すり壁には、スリットを、
適宜入れるのが普通です。
御質問者の所には、入っていないでしょうか。
高層になると隙間から物が、落下することを、
防止するためない場合もあります。
その場合は、隠し目地にしている場合もあります。
これらの理由から、
アフターサービス基準でもその部分のひび割れは、
免責されている場合があります。
お手持ちの契約書のアフターサービスの契約について
詳しく、ご覧ください。
しかしながら1年もたたない内にひびが入り、
なおかつ水が浸透しているとは、困ったことです。
白華現象は、水がコンクリート内を通過している証拠です。
水は、コンクリートの中性化を、
助長し、内部の鉄筋に対しての防錆効果をなくさせます。
最後には、鉄筋の錆のためコンクリートの「かぶり」を、
はじき出す危険性があります。
手すり壁上部は、どのようになっているでしょうか。
笠木(壁の上に屋根のように金属や防水モルタル
その他のもので覆うもの)があるでしょうか。
水は、どちらからでも回ってきますが、
やはり上から下に抜けるのが普通ですのでまず上を
ふさぐのがよいと思います。
手すり壁の上の金属の手すりの柱等が付いておりその元から
水が浸入していることも多いと思います。
<対策>
程度にもよりますが、やはり問題であると思います。
白華を伴うひびは、
それがたとえ「ヘアクラック」であったとしても長期的には、
耐久性を減少させるもとになります。
共有部分ですので、管理組合に通報し、
管理組合として対処することが適切かと思います。
また、他のマンション住人に同じような状況がないか
管理組合がアンケートとを出し、その状況を把握すべきです。
その後、管理組合として、
売り主に「売り主の瑕疵担保責任」について交渉しなければなりません。
大規模修繕の時(普通でしたら10年後)まで放置できないのではないかと
文面から察します。
また、その、白華が、赤褐色に変化してきたら、
極めて危険な状況です。
中の鉄筋が錆びているからです。直ぐに何らかの対処を要します。
<実際の工事>
実際の工事は、ダイアモンドカッターを用いてひびをVカット
(ひびに沿ってUの字型に谷間を作る。)しバックアップ材を入れ、
接着面にプライマーを塗りシーリングを詰める。
その後ペンキ等で同色仕上げとする。
タイル面についても同じですが復旧は、困難です。
手すり柱の根元にもシーリングを施す。
<別の原因の可能性について>
また、ひび割れが、定規で引いたように、まっすぐでしたら、
別のことが考えられます。
手すり壁がプレコン
(prefabricated concrete;前もって工場で作ったコンクリートの手すり壁を、
現場に取り付ける方法)または、
ALC(軽量発泡コンクリート)でできていてその継ぎ目に
ひびが入ったことも考えられます。
この場合は、あまり大きな問題は、ありません。
ALCでは、普通その様なことは、起こりませんが、
プレコンでは、あることだと思います。
特に高層マンションでしたら、多用していることも考えられますので、
設計図書を参照してひび割れ現場が継ぎ目かどうか検討ください。
質問は、固有名詞を取り除いて一般化しています。