莉子が 元気なく ベンチに座って お菓子を ゆっくりと食べていると 点滴を掛ける車を 押しながら 男性が 前をゆっくりと歩いてきました。 男性の点滴には 遮光袋が 掛かっていました。 莉子は 自分の抗がん剤の点滴にも 遮光袋が掛かっていましたので 「この人も 抗がん剤治療かしら 元気なく大変そうね」と 思いました。 そんなことを考えていると その男性の 点滴用の車の 車輪が ちょっとしたくぼみに落ちて 莉子のほうに 倒れてきたのです。 莉子は 男性を見ていたので 「あっ、」と言って とっさに 手をだして その点滴用の車の支柱を 掴みました。 莉子の手と 男性の手が 触れて 男性は 「あっ すみません。」 と声を出しました。 莉子は 「いえ 大丈夫ですか ここにお座りになったら」 と言いました。 男性の名前は 陽一と言います。 抗がん剤治療ではなくて ひどい食あたりで 食べられず 入院していたのです。 陽一は 莉子が言うように ベンチに座って 休むことにしました。 陽一: すみません 3日間も 何も食べていないもので 元気がなくて すみません。 莉子: そうですか 私は先日 10日間ほど 食べられなかったですが 大変ですね 陽一: えっ そうなんですか それは大変でしたね でも今は 食べられるみたいだし 病気も治ったんですね 莉子: まだなんともいえないです。 後2回薬を受けなければなりませんので あなたは 何回目ですか 陽一: はー 何回目? 入院は一回目ですが 莉子: あ、、 すみません ごめんなさい 私誤解してました。 あなたはてっきり 私と同じ病気だと思っていて 陽一: 私は ひどい食あたりで 今日まで絶食 明日から 食事が始まるそうです。 失礼ですが あなたはどんなご病気ですか 莉子: そうだったんですか 私は 、、、 、、 陽一: 別に話してくださらなくて結構です。 すみません立ち入ったことを お聞きして すみません。 莉子: 別にそれはよいのですが 私 癌なんです。 陽一: ごめんなさい そんなことお聞きして すみません。 どうしましょう 誠にすみません。 莉子: そんなに言って下さらなくてもいいですよ。