ロフト付きはおもしろい

ロフト大好きの71歳の老人の日記です

ロフトの夢 全話

眠そうに
佳代子は
ロフトで目覚めました。

『早く行かなきゃ
遅れてしまう
、、、、、』
と叫ぶか否か
佳代子は
がばと飛び起き
制服に着替えて
ロフトの階段を
下りました。

佳代子:
お母さん
遅くなったー
遅れる

母親:
起こしたのに直ぐに起きないからよ

佳代子:
起きるまで起こしてよね

母親:
何言っているのよ
高校生になっているんだから
そんな事言うの

佳代子は
そこらのものを
口の中に入れて
歯を磨いて
出かけていきました。

高校まで
一直線に
走っていきました。

佳代子は
高校3年生
学校では
目立たない大勢組の中のひとりです。

佳代子の父親は
地方公務員で
それから母親は
専業主婦でした。

兄弟は
よくできた兄がひとりいました。

佳代子は
小学生の時から
漫画を描く事が好きで
漫画家になりたいと思っていました。

父親や母親は
佳代子が
小学生の時は
漫画家になりたいという
その夢を
子供らしくて良いと思っていましたが
中学生
高校生と大きくなるに従い
『もっと現実的になれ』と
積極的には応援しなくなりました。

しかし反対もなかったので
大学には
漫画と関係深い
美術系の大学に進学したいと
思っていました。

そのためには
成績がネックになっていたので
がんばって
勉強していました。

家族は
そんな佳代子を
『夢をあきらめない
心の強い子』と
見直してみていました。


成績の
中くらいの
佳代子が志望大学に
合格するためには
相当の努力が必要でした。

佳代子は
寝る間も惜しんで
勉強していました。
佳代子の
努力は
半端なものではありません。

佳代子がここまで
がんばるのは
もちろん漫画家になりたいからです。

そして
「夢をあきらめなければ
きっとかなう」という
あるスポーツ選手の言葉を
信じているのです。

「私も
きっと
努力すれば
夢をあきらめなければ
漫画家になれる」
と佳代子は思っていたのです。


周りの家族や
学校の先生
それに
クラスメートも
そんな佳代子の努力が
きっと報われると
思っていました。

暑い夏が過ぎ
秋が来て
試験の日が来ました。

志望大学は
2回受験のチャンスがあったのです。

一回目の受験の日は
用意万端でした。

模擬テストでも
合格率は高く評価されていました。


朝早く出発して
誰よりも早く試験場に着き
盤石で
試験を受けました。

佳代子自身も
合格の手応えがありました。

帰り道
大学を見て
「来春から
こちらに来るんだ」と
思って
帰りました。

しかし
しかし
大学から届いたのは
不合格通知
佳代子は
愕然としました。

先生や
両親も
驚きました。

先生は
「2度目の受験にがんばればいい』
と助言しましたが
滑り止めに
他の大学も
勧めてきました。

佳代子は
夢はあきらめたくなかったけど
別の大学も受ける事にしました。
佳代子は
夢を実現するために
寝食忘れて
勉強しました。

クリスマスも正月もなしに
勉強しました。

涙ぐましい努力です。

家族は
今までに見た事がない
佳代子の姿勢に
驚きと
尊敬の念を覚えるくらいです。

母親は
体をこわしはしないかと
心配していましたが

試験の朝に
無事至りました。

佳代子は
今までの勉強の成果もあって
絶対の自信を持って
試験に臨みました。

佳代子は心に手応えを感じて
試験は終わりました。

その翌日
先生が勧めた
滑り止めの大学を受験しました。

その大学の試験は
佳代子には
上の空という感じの
試験でした。


期待を持って
試験の発表を待ちました。

1週間が過ぎて
まず滑り止めの大学から
分厚い封筒が届きました。

それから
少し遅れて
薄い封筒が届きました。


佳代子は
落胆して
落ち込み
涙が止めどもなく
出てきました。

丸一日
部屋に閉じこもって
泣きはらし
佳代子は
夢を諦めずに
次の機会を待つという結論に
たどり着きました。

そこで
一応滑り止めの
大学へ進学する
決意をしました。

大学へ進学する前に
佳代子は
漫画家になれる
もっとよい方法はないか
考えていました。

相談もしました。

でも名案は出ないので
当分は独学で
やっていく事になりました。

今度いく大学に
漫画クラブというようなものでもあれば
入ろうと思っていました。

入学式の日
クラブの勧誘が
ありました。

始めから終わりまで
見ましたが
佳代子が望むものはありませんでした。

がっかりしながら
歩いていると
大きな人だかりです。

佳代子が見ていると
ある学生
(この学生の名前は直人と言います)が
「一度やって見て下さい。
当たれば
昼食に
ファミレスの
5,000分のお食事券プレゼントです。

射撃は
面白いですよ。」と
話しかけてきました。

佳代子は
特に興味はなかったのですが
直人が
真剣に勧めるので
その学生に悪いかと思って
列の後ろに並びました。

列の後ろに並びながら
漫画家になるのに役立つようなクラブがないか
クラブ一覧表を見ながら
考えていました。

10分くらい並んでいると
佳代子の順番がやってきました。

空気銃で
的を射るものです。

佳代子は
空気銃など触った事もありません。

先ほどの学生が
扱い方を教えて
狙い方も教えてくれました。

そして
引き金を引くと
少しの反動があって
音がして
的に
弾が当たりました。

直人や
隣の学生や
周りの学生が
「当たり-」と叫びました。

ロフトの夢 第5話

偶然かビギナーズラックか
佳代子の放った弾は
的の中心に見事命中です。


クラブの部長が
恭しく紅白ののしがかかった
ファミレスの食事券を
持ってきました。

全員が
「おめでとうございます。
クラブに入って下さい。
射撃クラブにようこそ」
と合唱です。

私は
入る気はないけど
食事券ももらって
みんなが見ているし
直人が
もう入会用紙を持ってきているし
断り切れずに
入る事にしました。


入っても
クラブに行かなくてもいいと
簡単に考えていたのです。


しかし
その考えは
間違っていました。

その場で
クラブの活動予定表なるものを
渡されたのです。

この大学の
射撃クラブは
全日本の代表選手も出す
名門だったのです。

翌日から
新人戦に
出る準備があったのです。


この射撃クラブについて
もっと詳しく言うと
日本では
マイナーな存在で
全日本といっても
国内の数校と争う程度で
競技人口が
極端に少なかったのです。

その上
女子に至っては
先輩に2人いるだけで
射撃をしようとする
女学生など
日本では
皆無に近かったのです。


練習は
指導役の先生がいて
相当高度でした。

初めての佳代子は
ついていくのが精一杯でしたが
直人からは
「筋が良い」とほめられました。

そんな言葉に気をよくして
佳代子は
練習しました。
2ヶ月後に
新人戦で
見事優勝でした。

佳代子は
うれしくなりました。

直人:
佳代子さんは
僕がスカウトしただけある
これなら
オリンピックにも出られるんじゃない。
3年後の
オリンピックを目指して
がんばったら

佳代子:
そんな
無理な事

直人:
大丈夫
たぶん出られるよ
今回の新人戦の成績は
ダントツだったでしょう
私この得点はとても無理

佳代子:
そんな事ないです。

直人:
佳代子さんの夢は何ですか
オリンピックに出る事を
夢にしません。
きっと夢は叶いますよ。

佳代子:
私の夢は
、、、、、

と言いかけて
漫画家の事を言うのを
止めてしまいました。
夢を聞かれて
素直に
佳代子は
漫画家になる夢を
語れませんでした。

この大学では
叶えられないのに
そんな事をいっても
仕方がないと
考えたからです。

そこで
佳代子は

佳代子:
夢は
今のところありません。

と答えてしまいました。

直人:
それなら
佳代子さん
オリンピックに出る事を
夢にすれば
夢は
大きい方が良いし
きっと君の実力なら
かなうと思うよ

僕も
協力しましょう

僕も夢がないから
僕の夢は
君をオリンピック選手になる事を
応援する事にしましょう。

佳代子:
そんな
そんなの困るわ

直人:
皆さんいっていたじゃありませんか
明日に夢を持たないものの
人生は
きっとそれだけで挫折するって

佳代子:
そんなの聞いた事ないわ
誰が言ったの

直人:
言ったのは
僕でーす。

ふたりは
笑っていましたが
佳代子の
考えとは裏腹に
クラブの中だけに限らず
大学中
佳代子の夢は
「オリンピック選手になる事」
になってしまいました。


佳代子は
大学では
射撃でオリンピック選手になるための努力を
そして家では
漫画家になる努力を続けていました。

いろんな雑誌に
投稿し続けていました。

どちらの努力も
佳代子にとっては
中途半端なものではありませんでした。

本当の夢は
漫画家なので
全力を
そちらに注ぎたいのですが
大学ではそうはいきません。

クラブの監督や部長
担当教官をはじめ守衛さんに至るまで
それから
直人を含む先輩
それから学友に至るまで
私が
オリンピック選手になる事を
応援してくれたのです。

そんな応援は
一朝一夕にできたものではなく
直人の根回しによるものが多かったのです。

直人は
私が
練習に専念できるように
学校の環境を整えてくれたのです。

勉強なども
ほどほどにして
練習を一生懸命できるように
教授たちに頼んでくれていたのです。

その甲斐あって
佳代子は
充分な練習できて
メキメキ腕を上げていきました。

女子射撃が
いくらマイナーな
競技だと言っても
そう簡単には
いかないと
佳代子自身思っていたのですが
意外にも
うまくいったのです。

秋の大会で
大学代表として
出場して
見事優勝するのです。

直人の根回しの上に
その上実績までできると
大学は
学長も加わり
応援一色となってしまいます。

来る春の大会に向けて
合宿に
大学のビジタールームを
使えるような待遇を受けたのです。

ビジタールームは
スイートの造りで
南向きの部屋になっていました。

一流ホテルも
びっくりするほどの家具がついていて
優雅な造りで
そこで
春休みの間
2週間合宿する事になるのです。

家にも帰れず
同じ春にある
漫画雑誌にも投稿できません。

隠れて
荷物を持ち込んで
描こうとしましたが
練習のための疲れから
あまりできませんでした。

射撃は
集中力がいるので
そんな事できなかったのです。
ここまでのあらすじ

佳代子は
小さいときより
漫画家になりたく
それなりの努力もしていましたが、
その効なく
挫折の連続でした。

でも佳代子は夢をあきらめていなかったのです。

しかし大学でたまたま始めた
クラブ活動の
射撃で
ビギナーズラックかはたまた強運か
皆があっと驚くような成績が得られました。

大学では
漫画家になりたい事を
言う前に
射撃が
目標になってしまったのです。

VIP待遇で
合宿していました。
_________________

佳代子は
漫画の応募と
射撃の集中のジレンマに
ひとりで悩んでいました。

悩みを打ち明ける
友達も
近くにいなかったのです。

射撃をしているときも
漫画の事が頭を横切り
漫画の構想を練っているときに
射撃の事を思い出したり
ちぐはぐな努力になったのです。

周囲の心遣いがわかればわかるほど
佳代子は
射撃に集中できませんでした。

直人も
心配でした。

付近のみんなは
射撃によくある
スランプで
スランプを抜け出すと
次は
オリンピックと
思っていました。

周囲のそんな予想通り
春の大会では
佳代子は不振でした。

不振というか
さっぱりと言ってもいいほどでしたが
周りは
もっと佳代子に
気配りをしたのです。

直人が
周囲のみんなに
スランプの
佳代子を傷つけないように
根回しが
あったのです。


佳代子の周りが
そんな態度をとると
佳代子は
もう
後には引けなくなってしまいました。

自分の本当の夢ー漫画ーを追い続けるか
ひょんな事から
夢になってしまったー射撃ーを
選ぶか
二者択一になってしまいました。

佳代子は
悩みました。

何日も
悩んだのです。

ちょうど春休みで
家にいたので
漫画を描きながら
考えてみました。

でもこの
二者択一は
佳代子にとっては
酷です。

どんなに考えても
選べません。

夢をあきらめずに
漫画をとるか
実現可能な
射撃をとるか
どちらも
捨てられません。

佳代子は
スポーツ選手が
「夢をあきらめなければ
きっと叶う」という
言葉を
信じたいのですが
でも
現実は
そうではないのではないかと
疑い始めていたのです。

佳代子自身
19歳まで
夢をあきらめませんでした。

でも
そのめどさえつきません。

このまま諦めなくても
漫画家になる環境にならないだろうし
射撃を止めたからと言っても
漫画を書ける様にはならないとおもったのです。

だったら
漫画を諦め
射撃に賭けてはどうかという事になりますが
射撃は
嫌いではありませんが
神経を張り詰めて
競技しなければならないので
佳代子は
好きではありません。

直人や
友達や
学校が
佳代子に
「がんばれ」というので
仕方なくやっているというのが
実情です。

そんな事を
漫画を描きながら
思っていました。














ズーと考えていましたが
よい案は出ません。

射撃と漫画の両方することは無理でどちらかを諦めるべきですが
どちらを諦めるのも
大きな困難がありました。

そんな事を相談できるのは
高校の時の友達くらいですが
親友も
東京に進学して
相談できないし
親も
「どちらも大変ね」というばかりで
解決できません。

そこで
決められない
佳代子は
さいころで
選ぶ事にしました。

奇数なら射撃
偶数なら漫画と決めて
3回振って
多い方にする事を
あらかじめ決めておきました。

佳代子にとっては
人生最大の
岐路です。

一度目は1
二度目は6
そして
運命の三度目は3でした。

そこで
もう佳代子は
射撃に決めたのです。

佳代子は
ある面
ほっとしました。

佳代子にとって
射撃の方が
簡単だと見えたのです。

それを
両親に話すと
賛成してくれました。

直人には
直接会って
話す事にしました。

漫画の事も
話す事を決めていました。

直人に電話を掛け
会う約束をしました。

日曜日の午後
学校近くの
喫茶店で
会いました。


直人:
ゆっくり休養できた?

佳代子:
まぁ
それでね
私の話を聞いて欲しいの


直人:
なんなの
何かあらたまって
ひょっとして
告白?
そんなわけないか

佳代子:
告白
いやそんなことじゃなくて

直人:
残念
そうかと思って
わくわくして
出かけてきたのに


佳代子:
期待させてごめんなさい
でもある意味では
告白なの

直人:
なんなの?


佳代子:
私の夢の事なんだけど

直人:
佳代子さんの夢?
佳代子さんの夢って
射撃でしょう

佳代子:
学校のみんなは
そう思ってるかもしれないけど
射撃じゃないの

直人:
えっ
射撃じゃないの
何なの
本とは何なの


佳代子:
私の夢は
小さいときから
漫画家になる事なの
でも
ひょんな事から
射撃が始まって
みんなに言えなくなって

直人:
漫画家
漫画家なの
漫画家か

佳代子:
そう漫画家
私の本当夢は
漫画家なの

直人:
それじゃ
射撃を止めて
漫画家になるというの?

佳代子:
そうじゃない
私は
漫画家の夢を一時横に置いておいて
射撃を
やってみようと思うの

直人:
そんな簡単に
漫画家の夢をあきらめて良いの

佳代子:
諦めるんじゃなくて
一時休止するだけ
人生はながいんだから
、、、、


直人:
それで良いの
大丈夫なの
後で私を恨まない

佳代子:
恨むわけないでしょう
直人さんがいたから
ここまで来れたんだし



直人:
本当にそれで良いんですか

佳代子:
二兎を追う者は一兎をも得ず
です。

直人:
一石二鳥というじゃありませんか

佳代子:
それは意味が違うと思います。

直人:
そうだったかな
でも
両方する方法もあるんじゃないの
僕も応援するから

佳代子:
私を応援して下さって
ありがとうございます。
でも
私が
漫画家になるという夢を
応援することって
そう簡単じゃないんじゃないですか
それに私の漫画
見たことないでしょう。

直人:
そうだった
どんな漫画なの
根性ものとか
妖怪ものとか
時代劇だとか
オタク系とか

佳代子:
そんなもの書かないわ
私の書くのは
少女趣味の恋愛ものと
ギャグマンガよ

直人:
何か傾向が見えない

佳代子:
そうかな
かなり合っていると思うんだけど

直人:
例えば
漫画を描く時間と
射撃を練習する時間
そして勉強をする時間を
決めたら良いんじゃないの

佳代子:
時間が足りないって

そんな話をしても
解決策は浮かびませんでした。

でも佳代子は
漫画を一時諦めて
射撃に打ち込むことを決めていたのです。




射撃に決めてしまうと
周囲の理解もあるので
困難なことはありません。


でも
あと二年の
オリンピックに向けて
練習を始めたのですが
一本調子に
腕を上げていったわけではありません。 

大げさに言えば
「オリンピックへの道は険しい」
でも
強運かそれとも
生まれ持った素質か
あるいはまた
誰でもちょっとがんばれば
できることなのか
そう言うことで
スランプも乗り越えました。

直人の
マネジメントも
相当なもので
スポンサーを探してきて
お金には不自由しない状態でした。

直人のマネジメントは
それだけではありません。

テレビ局などにも売り込んでいて
佳代子は
「オリンピックへの道」という
番組まで作られました。


佳代子が街を歩けば
ヒーローでした。

佳代子はそれに
少し戸惑いましたが
平凡で
目立たないそれまでの人生が
180度変わる
ことに
何かうれしいところがありました。

そんな中
オリンピック選手選考会になる
大会に日がやってきました。

佳代子は
自分でも驚くほど
緊張していませんでした。

まったく緊張していないというと
嘘になりますが
佳代子は
落ち着いて
競技ができました。

佳代子の参加する競技はもとより
射撃は
満点でないと
優勝できません。

一回のミスでも
許されない競技ですので
落ち着いていた
佳代子にとっては
有利でした。


最後の射撃も終わって
発表を待っていました。

直人も
いつものように
そばにいました。




発表を待たなくて
佳代子や直人には
結果はわかっていましたが
それは口にはしませんでした。

会場が静まって
大きな歓声が上がると
佳代子にすべての視線が集まりました。

佳代子は
オリンピック選手に
決まったのです。

マイナーなスポーツでも
極めるのは
大変なことと
佳代子自身も思っていましたので
努力が報われ
ほっとしました。


みんなが祝福してくれて
佳代子は幸せでした。


オリンピックまでの
6ヶ月は
あっという間でした。

勉強は
ほとんどすることなしに
練習をしていました。

大学のれいの合宿所
VIPルームで
3ヶ月も暮らすと
すっかり
佳代子自身
セレブになったようでした。

そして
選手結団式・壮行会
出発
選手村入村式
それから開会式
、、、
時間があっという間に過ぎて
本番が来ました。

それまでは
緊張もせず
オリンピックを
楽しんでいたのですが
試合の日の朝から
すごい緊張になってしまいました。

食べ物も
のどに通らない始末です。

全身に震えがきて
とても競技に出られる
状態ではありません。

直人は
オリンピックには
試合の当日に
やってくることになっていたので
そばにはいません。

佳代子が知っている人は
選手村にはいなかったのです。

気を落ち着けて
会場に向かいました。

更衣室で着替えて
先導員の後ろをついて
会場に登場すると
遠巻きに
佳代子の親や
知人・大学関係者
それに直人が目に入ってきました。

佳代子は
落ち着こうと
深呼吸をしました。


佳代子は深呼吸をして
落ち着こうとしましたが
心臓の鼓動が
聞こえそうなくらいで
とてもとても
落ち着いて
競技できない状態でした。

時間は
否応なしに過ぎて
佳代子の射撃が始まりました。

射撃は
ミスは許されない競技です。

落ち着こうと思えば思うほど
上気してしまって
もう
意識ももうろうになってしまいました。

最初の引き金を引いて
開始しました。

その瞬間
佳代子の
オリンピックは終わってしまいました。

そうなると
開き直って
落ち着いてしまいました。

今までの自分が何だったのか
はっきりとわかりました。

その後はミスもなく進みましたが
結果は
もちろん予選落ちの結末です。

そうな風に
佳代子の
オリンピックの夢は
終わったことに
佳代子は
次の
ことを頭の中で考えていたのです。

射撃の次は
やっぱり漫画にしようと
決心したのです。

閉会式まで
ゆっくりいて
オリンピックを楽しんで
佳代子は
日本に帰りました。

行きの時と
帰りの時は
まったく違っていました。

誰も関心を持っていなかったのです。

惨敗したので
仕方がないと
佳代子は
思っていました。

でも直人だけは
佳代子に
「全力を尽くした佳代子は偉い

これからも佳代子を応援する」と
言ってくれました。
帰国すると
目標もなくなり
暇になると
佳代子は思っていました。

でも
それが違うです。

一度ヒーローになった佳代子は
普通の女の子には
戻れません。

オリンピックの報告会や
後輩の指導
はたまた「夢を実現したオリンピック選手」という講演会まで
雑事に多忙でした。


マネジメントは
引き続き
直人がやってくれました。

直人は
佳代子の夢が
オリンピック選手ではなく
漫画家と言うことを知っていたので
そんな雑事を
佳代子にさせるのは
少し気が引けました。

それで
機会あるごとに
佳代子の夢が叶うように計っていたのです。

テレビ局の人には
佳代子が
漫画家の才能があると
売り込みました。

そこで
漫画家と射撃そしてオリンピック選手という
筋書きで
ドキメンタリー番組を作る段取りになり
佳代子にプロジューサーが会いに来ました。

プロジューサーは、いろんな話を聞いて
佳代子が書いた漫画も見て
取材したのです。


でも後になって
漫画の部分だけをのぞいて
作られることになってしまいました。

いろんな出版社にも
売り込みに行きましたが
無駄ででした。

今までの射撃の時間を
短くして
漫画に
時間を掛けたのですが
なかなか実を結びません。

それとは反対に
射撃のほうの
雑事は盛況で
コマーシャルまで
作られました。

オリンピック後の
佳代子の望みとは
逆になってしまったのです。


佳代子も
4年になって
就職の時期になりました。

佳代子は
就職先を探していました。

漫画関係が良いと思っていましたが
経験のない佳代子には
うまくいきませんでした。

出版社の編集者にも応募しました。
でもそれも叶いませんでした。

そんな時大学から
体育の講師として
残ってくれないかという
申し出がありました。


オリンピック選手だったことで
そんな事になったのです。

佳代子は
たまたま選んだ射撃で
就職できたのです。

その後
佳代子は
次の
オリンピック選手にも選ばれて
射撃界では
不動の地位を得ることになります。

佳代子のよき理解者であった
直人とも結婚できて
幸せな人生を送りました。


後になって
スポーツ選手が言う
「夢をあきらめなければ
きっと叶う」というのは嘘だと
はっきりと思いました。

その場に臨んで
適切に道を選ぶのがよいと
講演会では
いつも言っていました。

ロフトの夢
終わります。

ちょっと中途半端な物語で大変申し訳ございません。