ロフト付きはおもしろい

ロフト大好きの68歳の老人の日記です

ブログ小説「冴子の人生は」その105

勇治の家族と
冴子だけが
広い座敷で
黙って座っていました。

勇治の母親が
「冴子さん
ご苦労さんでしたね。

ゆっくりこちらで
休んでいって下さい。

ズーとこちらにすんでもいいですよ

何もないけど
離れが空いているから
そこに住んで
私の
仕事を
手伝ってくれてもいい

もちろん
神戸で暮らしてもいいけど

勇治の
お墓はこちらにあるから
お墓参りだけは
来て欲しい

それから
こちらの小さい骨壺は
冴子さんが
持っていて欲しい

月日が経ったら
どこかの
お寺に
納めて下さい。」と
優しく言ってくれました。

冴子は
下を向いたまま
聞いていました。

ここにいてもいいと言われても
勇治のいない今
ここに入れる理由がないことは
冴子はわかっていました。

帰らなければならないと
冴子は
思っていました。

またしばらく
沈黙になりました。


その沈黙を破ったのが
そばにいた
勇治の
姪にあたる
若い女性でした。

「私のような者が
差し出がましいと思いますが
もし神戸に
冴子さんが帰ってしまったら
もう会えないので
話させて下さい。

勇治おじさんの
遺産というか
借金整理です。

亡くなって
一週間しかたっていないのに
こんな話をして
すみません。

おばあさんから
聞いた話では
勇治さんは
パン屋さんをするために
借金をしたそうで
そんなに
パン屋さんがはやっていなかったから
まだまだ
たくさん残っていると思います。