登の母親は 「寒い外で 話さず いえにはいったら」 と言ってくれました。 でも 不満そうでした。 中に入ると いつもの ダイニングではなく 座敷でした。 登の父親と となりに娘が 座っていました。 小さい時に分かれたとき以来です。 立派になって 涙が出てきます。 冴子は 座布団を敷かずに 一番下座に座って 謝りました。 みんなは黙っていました。 父親が 「なぜ 何も言わずに 出ていったのか」と 尋ねました。 子供たちも それが知りたいのでしょう 身を乗り出して 私を見ました。 ここに来る前に 冴子は ただただ謝るだけにしようと 考えていました。 でも みんなの 目を見ていると それだけではすまないと 思いました。 でも まずは 平身低頭 謝りました。 しかし 娘が 「お母さん 謝ってもらっても 何も始まりません。 お母さんに 謝ってもらっても 憎しみだけが 残ります。 本当のことを 言って下さい。 お母さんの 言い分を聞かせて下さい」 と 静かに言ってくれました。 「お母さん」という 言葉を 聞いて 母親の私が 真実を話さないと 子供たちは あの時から 時間が止まったままになると 思いました。 そこで ゆっくりと 冴子の高校の時からの話を 始めました。