ロフト付きはおもしろい

ロフト大好きの71歳の老人の日記です

ブログ小説「笑顔のアイコンタクトに魅せられて」その151クリスマス編その2

薫子は
疲れていたので
すぐに寝入りました。

いつもは
2時頃目が覚めて
用をたすのですが、
この日は
起きませんでした。

薫子は
夜よく夢を見ます。

夢は
現実的で
もちろん
カラーです。

生きている時も
陽一君の夢を
見ていたのですが
あの災害があった頃から
月に一度くらい
夢の中に
出てきました。

多くは
楽しかった
食事風景や
和歌山や
広島の風景のなかに
陽一君が
笑って
出てきていました。

昔から
言葉は
ほとんど
ありませんでした。

その夜も
陽一君が出てきました。

いつもとは
違って
何か
リアルなように
薫子は
思いました。

後ろの景色は
ありません。

真っ白な空間でしょうか。

いつものように
笑っていました。

若々しく
二十歳前後
見えました。

いつもと同じです。

しかしこの日は
いつもと違って
陽一君が
薫子に
話しかけたのです。

『薫子さん
いつも私のことを
思ってくれて
ありがとう。

もう
3年も経つのに
毎日
朝な夕なに
私の写真に
話しかけてくれて
本当に
感謝してます。

私が
突然になくなって
薫子さんが
どんなに心配したかを
考えると
心が痛みます。

まず
津波に
私が襲われた時のことから
話します。

私は
仙台の
不動産屋さんと
一軒目の
海が見える
家に行ったんだ。

3時を過ぎた頃かな

海のすぐ近くで
夏には
海水浴も出来るそうです。

夏子が
その頃
湿疹が出来ていたから
海水浴も良いかなと思っていたんだけど
あまり海の近くは
チリの地震の時に
大きな津波が押し寄せて
危ないかと思って
次の
家に向かったんだ。

次の家は
海辺で
小高い丘の上にあって
家は古いけど
しっかりしているという話だった。

車に乗って
しばらくすると
揺れが起きた。

自動車は
慌てて
停まった。

ラジオをつけると
大きな地震が起きて
津波が
3mから5m来ると言うことを
報じていました。

海岸線を
ズーッと走るので
僕が
津波大丈夫と聞くと
3mから5mだから
大丈夫と
答えた。

ナビの
高度計が
10mを示していたし
防潮堤が
10mあるから
大丈夫とも
答えたんだ。

安心して
走っていると
急に
向こうの方に
水が見えた。

その水が
ものすごい勢いで
近づいてきた。

車は停まったけど
水の勢いは
弱まらない。

運転手は
バックしようとした。

私は
窓を慌てて開けた。

そこへ海水が
ドッと流れた。

私は
窓から出た。

車は
少しの間だけ
浮いていたが
すぐに沈んだ。

僕は
こう見えても
泳ぎには
自信があったから
山に向かって
泳ぎ始めた。

しかし
夏とは違って
厳冬の冬
私の体の熱を
すぐに海水は
奪ってしまった。

私は
もうダメだと思った。

このままでは
もうダメだと思った

このまま死ぬと
薫子が
心配すると思った。

そこで
僕は
大きな決心をした。