30年前に あなたは 戻りたいですか。 私は 遠慮しておきます。 辛苦の 30年間を またやるのは 少し おっくうです。 あらすじ 順子(よりこ)は 57歳のおばさんで 子育ても終わって 今はひとり暮らしです。 神さまのちょっとしたミスで 30年間の記憶を保ったまま 30年前に戻ってしまいました。 30年前は 工員として 大きな工場で働いていました。 戻ってみると 目の前で 30年前に死んだはずの 友達の冴子が 横で元気に働いているではありませんか。 順子は びっくりして 驚きました。 冴子は 交通事故にあって なくなってしまうのです。 交通事故に遭わないように 有馬温泉に行ったのが功を奏して 冴子は死なずにすみました。 冴子が 亡くならなかったため 見合いの話が 冴子の所にいってしまいました。 何と冴子の見合いの相手は 前の世界で 順子が 結婚する相手だったのです。 順子が 冴子を助けたことによって 前の世界と 今の世界が 違ってきたのです。 何とか 相手を 譲ってもらって 見合いをします。 前の世界では 何となく結婚できたのに 今の世界では 相当な努力を払って 結婚式まで やっとたどり着いたのです。 、、、、
この話は すべてフィックションです。 順子は、 「歳をとってしまったわ。 若いときの張りがあったのに たるんでしまったわ。 そうだシワ取りでもしましょうか。 でもそんなお金ないな でも今がやっぱり幸せなのかも知れないわ」 と鏡を見ながら ひとりごとを言ってしまいました。 順子は57歳 駅の中のキオスクに勤めているのですが 同僚の中に 新型インフルエンザが発症した者がいて 自宅待機になって 今日は久しぶりに家にいたのです。 順子は今は ひとり暮らしです。 朝ご飯を食べて ゆっくりしていたのです。 その時と同時刻 地球の裏側の この物語と全く関係ない人物がいました。 この人物は30年前のある時の出来事が 今の不幸の始まりです。 それをかわいそうに思った 天地創造主の神様は 時間を一気に30年さかのぼらして 救ってやろうと思ったのです。 神様は そんなことを よくやっているのですが 30年もさかのぼるのは 120年ぶりです。 神様は 30年前のデータ通りに今のこの世界を 作り直すのです。 そのために神様は35ナノ秒かかってしまいました。 それだけでは 記憶がある動植物には不都合を生じますので 同じように30年前の記憶に置き換えます。 しかしこれが神様にとっても意外と大変なんです。 神様によれば 記憶の型は23種類あって21番目の型には 253種類の亜種がそしてその121番目の亜種に またまた1054の分類があるのです。 これらを違う手順で30年前の記憶に戻すのです。 これをすべて戻すのに 神様としてはすごく時間がかかって 124ナノ秒もかかってしまって 神様は大変疲れてしまいました。 神様が過去に戻すのに要した 159ナノ秒が過ぎて 全世界は 30年前に帰ってしまいました。 1979年の5月の23日になったのです。 全世界の人は 何もなかったように 30年前を受け入れ 同じように時間を過ごしていきました。 そんな中 順子だけは違っていたのです。 順子は神様の記憶の分類で 21番目の型で121番目の亜種で 1054番目だったのです。 記憶の型は7S25P型だったのです。 この型の生物は世界には3個体しかいませんでした。 ひとつは犬でもうひとつはウサギで そして残りは順子だったのです。 神様は7S25P型の記憶が 特別な型で 全く違う方法で記憶を戻さなければならなかったことを すっかり忘れていたのです。 そんな理由で 順子だけが 30年間の記憶を持って 30年前の世界に戻ってしまいました。
鏡を見ていた 順子は 一瞬くらっとしら 次の瞬間 チューナー工場の ラインにいました。 順子が 1979年5月23日には チューナー工場で働いていたのです。 チューナーとは ロータリーチューナーと言って 30年経った今では 現にそんな物を見ないし そんな言葉を知らないと思います。 まして作っている工場は とっくの昔になくなってしまっています。 そんな工場の組立ラインに 突然舞い戻った順子は 何だかわからなくなってしまいました。 他の人は すべて30年前に体も記憶も戻ってしまっていますので 特に驚くこともなく 当時と同じように仕事をこなしていました。 しかし 順子は 体は戻っていましたが 記憶が戻っていない順子だけが 突然の変化に 戸惑うというか 青天の霹靂というか 訳がわからぬ出来事でした。 もっと驚いたのは すぐ横に 冴子がいたのです。 冴子を見た順子は つばを飲み込み 冴子に 「冴子! 冴子じゃないの?」 と大声で叫びました。 冴子をはじめ 工員のみんなは 順子の方を不思議な目で見ました。 冴子は 「何大声出しているの? ベルトコンベア流れてるのに 早くしないとダメじゃないの。」と答えました。 そう言う冴子に 「そうよね 手を動かさなくちゃいけないわね。 どんな風にするの?」 と答えました。 「何言ってんの 職長! 交代要員を」 と大声で言いました。 すぐに交代の工員さんがやってきて 順子と交代しました。 順子は なぜかわからないけど 仕事をしなくてはならないと 交代要員の手元を見ました。 昔やってたことだし 要領の良い順子は すぐに思い出して 代わってすることになりました。 何か何だかわからない内に 順子は 心も 30年前の工場に戻っていました。
突然の慣れない作業を 何とかして 昼まで続けました。 ベルトコンベアにのって 部品が流れてくるので 決められた位置に 部品を取り付ける仕事です。 否応なしに 作業をしないと どんどんたまってくるのです。 そんな忙しい仕事も 12時のベルが鳴ると ベルトコンベアが止まって作業は 終わりました。 順子は 大きなため息と伴に 作業を終えました。 順子は我に帰って 冴子に 「冴子 冴子よね」と 何とも言えない表情で 尋ねました。 冴子: 何言ってんのよ。 今日は変よ どうしたの 順子: だって 私どうしたのかしら 私何だかわからないわ 今日夕方 話できないかな 冴子: いいよ なんか悩みあるの 彼氏できたの? 順子: そんなんじゃないわ 冴子: 順子 大丈夫 今日の順子は変だわ 順子: だから夕方話すわ そんな会話をしながら 順子は 黙ってしまいました。 順子が不思議に思っている理由は 冴子は亡くなってしまっているのです。 工場に勤めて帰宅の途中に 暴走してきた車にはねられて 亡くなってしまうのです。 確か暑い日だったので 7月頃かと思うのですが 冴子は順子目の前でなくなったのです。 午後の作業始まり 順子は 冴子の顔を見ました。 そして作業を始めました。
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順子は 午後の仕事は 相当手慣れて 仕事が滞ることなく うまくできました。 少し仕事に余裕ができたので このかわり方を 仕事をしながら 考えました。 「お手洗いに行ったとき 自分の顔を 見たら 若返っていたわ。 映画で見る タイムスリップとは違うわよね。 私も若返っているんだし、、 でも亡くなったはずの 冴子もいるのよ。 ひょっとして 冴子がまだ生きていた 時代になったのかも知れないわ。 今はいつなんだろ-。」 と考えながら 周りを見ました。 日付が入った要領指図書を 読んでみると 1979年5月23日と書いてありました。 「えー 1979年なの 30年前じゃないの 私は 27歳なの 若いよねー 若くなるのはいいけど 若くなると言うことは また試練の人生を歩まなければならないのー そんなことないよね やっぱりまた同じ人生を歩むのかしら そんなことないよね。」 などと あーだとか こーだとか 考えながら 午後の仕事が終わる終業のベルが鳴りました。
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仕事が終わると 冴子と一緒に 更衣室に行って 服を着替えました。 何と言うことでしょう。 30年前に着ていたであろう 服が 真新しく ロッカーに吊ってありました。 懐かしい水玉模様の ワンピースです。 その服は 気に入っていましたが 結婚するときに 古くなったので 捨ててしまっていました。 冴子も 今日の十詩子は変だと 思っていたので 早く着替えて 一緒に退社しました。 冴子と一緒に 順子は 会社近くの 喫茶店に入りました。 他の所まで行く時間さえ 惜しいとふたりは考えたのです。 冴子: 大丈夫なの 今日順子 順子: 私今日は何だか変なの 今日は何日なの 冴子: 今日は23日よ 順子: そうじゃなくて 何年なの 冴子: 1979年5月23日よ 何でそんなこと聞くのよ 順子: んー そうなのか 順子は 本当のことを言っても 冴子は信じてくれないし、 どうしていいかわからなくなりました。 冴子: どうしたの? 順子: んー 今日何だか変なの 突然頭が ボーとして 変なの ぼけたのかな 冴子: 何言っているのよ まだ27歳でしょう ぼける歳でもないでしょう。 おばあさんじゃあるまいし 順子: そうよね ところで 冴子 冴子は大丈夫? 冴子: もちろん私は元気よ 順子は 冴子が亡くなった日を 思い出そうとしましたが なかなか思い出せません。 確かもう少し暑かったような気がする。 今日では絶対にないと思うので その日が来るまで 秘密にしておこう。 順子: 大丈夫 大丈夫 今日どこ行く? ふたりは 順子にとっては 本当に久しぶりに 大阪に遊びに行きました。
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順子と冴子は 近くの阪急稲野駅から 電車に乗って 塚口で急行に乗り換え 大阪へ行きました。 大阪に着くと できたばかりの 「川の流れる街 阪急三番街」に行きました。 中に大きな滝があって そこから 川が流れているのです。 ふたりは 何度も来ているので よく知っているはずでしたが 順子は 30年も前のことで 当時のことが思い出せませんでした。 冴子の後を付いて行くのが 関の山でした。 中央口から下りて 大きな階段を 2階下りて 地下の入り口に着きました。 右側に 今はいませんが 受付嬢がいるのです。 そこを通って 店を見て回りました。 十詩子には 懐かしく思いました。 昔のファッションですし 色づかいですので 懐かしく思ってしまいました。 喫茶店に行って 甘いケーキと コーヒーを注文しました。 その味も 何か懐かしく思うのです。 コーヒーや ケーキも何だか古く感じました。 甘さや苦さにも 流行があるのかも知れないと 思うようになりました。 そんな発見をして 家の寮に帰ることにしました。 工場の近くの寮で 冴子とふたりで住んでいたのです。
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寮に帰ったふたりは 部屋に入りました。 この寮は 順子が 高校を出て すぐに 冴子と住み始めたので すでに9年になります。 でもこの後 会社がなくなって 寮も潰され ながく空き地になっていましたが 5年前に 立派な分譲マンションが 建っていました。 そんな寮の部屋は 順子にとって 懐かしさ 以外の何物でもありません。 服がしまってある 押入を開けると その服の 古いこと 懐かしいこと の限りです。 スカートの丈は 短くなっていました。 共同風呂を ふたりで入って 懐かしい布団で寝ました。 翌日起きて 会社に行くのですが どんな服で行こうか 悩みました。 会社まで 徒歩5分ですが 私服で行くのです。 当時なら さっと撰んでいたんですが 今は撰べません。 というのは 当時のファッションが 今のファッションと全く違っていいるからです。 順子は 重ね着をしてみました。 ジーンズのパンツの上に 夏用のワンピースを 着てみたのです。 短いワンピースだったので 今風の 重ね着ルックです。 横にあった布を 首に軽く巻いたら もっと 今風になりました。 そんな格好をして 行こうとしたら 冴子が 『えー 何- 何なの????? ○×△□、、、、 」 と言葉にならぬ事を言ってしまいました。 冴子は ズボンの上に スカートを履くなど 考えにも及びません。 順子は やっぱり こんな格好は 良くないとは思っていたのですが 遅れないように 着替えてすぐに会社に行きました。
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会社に行ったふたりは いつものように 作業着に 着替えて 作業に入るのです。 その前に ラジオ体操をすることになっています。 十詩子は懐かしくなりました。 当時はラジオ体操がうっとうしく思っていたのに 何だか懐かしく ラジオ体操を 気合いを入れて してしまいました。 体が57歳から 27歳に戻ったので 軽く感じたからかも知れません。 あまりにもがんばってするので 冴子は 「順子が やっぱりおかしい」 と感じていました。 その後 工場長が 朝礼の挨拶をするのです。 ありきたりの 訓辞でしたが それさえも 順子は 新鮮で 懐かしく思いました。 それから 製造ラインに行って 座り サイレンが鳴って コンベアが動き始めて 仕事が始まります。 順子は昨日やっているので 同じように 作業をしました。 がんばって 作業して しまいました。 昨日 やり始めたのに 割りの 重労働なのに 筋肉痛になっていないのが 順子には不可解でした。 57歳でも 働いていますが 駅の 売店の店員なので それほど 重労働ではないのです。 順子は 若くなったことが 何だか 嬉しくて がんばって してみたのです。
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順子にとっては みんな新鮮な 工場でした。 そんな新鮮な日々も 段々と過ぎていき 友達の 冴子が 事故に会う8月5日が近づいてきました。 順子は 何としても 冴子がまたあんな目に遭うことを 阻止しなければならないと 考えたのです。 順子は まずあの時間に 冴子を交差点に いないと 事故に遭わないと考えました。 しかしひょっとして 時間が違っても 事故に遭うかも知れないと考えました。 事故に遭うことが 運命になっていたら 時間ぐらい変えても 変わらないかも知れないと考えました。 やっぱり 8月5日は 会社を休んで 別のところに行った方が良いのかもしれないと 考えました。 それで 泊まりがけで どこか行けばいいのではないかと 結論に達しました。 順子は 冴子に 今度の 8月の5日に 旅行に行かないと 言ってみました。 そんなに 突然の 順子の言葉に 冴子は びっくりしました。 冴子: エー突然ね どこ行くの 順子: えーっと えっーっと そうね 有馬温泉なんかどうかな 行き先まで考えていなかったので 知ってるところを 言ってみただけでした。
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有馬温泉くらいしか思い出せなかった 冴子には理由があります。 冴子のこの後の人生は 大変なことになって 温泉に行くなどと言う 余裕など無かったのです。 それはさておき この時は 有馬温泉に行こうと 言ってしまったのです。 冴子: 有馬温泉? そうね 温泉ね 良いかもしれないね 順子: そうでしょう 良いでしょう 行きましょう 冴子: なぜ8月5日なの 順子: だって 暇だし 8月5日がいいと思います。 冴子: そうなの 8月5日が良いの そうよね 思い立ったが吉日だものね その時に行かないと 一生いけないかも知れないよね。 順子: そうだよね 絶対そうだよ いま行かないと 絶対にいけないよ 冴子: そんなことないよ いつだって行けるんじゃない もう死ぬみたいに言わないで 順子: そうよね 有馬温泉くらいいつでも行けるよね そうよね 順子は思わず 冷や汗が出てしまいました。 その日に 交通事故に遭ってしまう そんなことを 言えませんでした。 ふたりはその日 課長に休暇願を出して 8月5日に 一泊二日の有馬温泉に出かけることになりました。 冴子が 交通事故に遭うのを阻止するために 順子が取った最善の方法だったのです。 でもこれが 冴子の未来を大きく変え 順子の未来も大きく変えるかもしれなかったのです。 そのことを 順子は 気が付かなかったのです。
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有馬温泉での 温泉三昧は 本当に楽しかったです。 美味しいものも 食べることが出来たし、 卓球もふたりは楽しんだし 金泉銀泉のお湯もよかったし 満足な小旅行でした。 でも冴子は 六甲の野山を散策したかったんですが 順子が 旅館の中から でなかったので それだけが心残りでした。 ふたりは また電車に乗って 帰りました。 まだ日がある内に 部屋に到着して 順子は 一安心しました。 冴子は 部屋で 疲れのためか ぼやっとしているので 順子は 気になって 例の交差点に 見に行きました。 冴子は 犠牲にならないけど 誰か 他の人が 事故に遭っていないか 気になっていたのです。 確かめるのは 明日でも良いかもしれませんが どうなったか知りたかったのです。 交差点に行くと 特に変わった様子はありませんでした。 ひとつだけ言うと 道路の縁石に タイヤ痕が付いていたのです。 順子はやっぱり 何かあったのに違いないと思いました。 ちょうどその時 会社の同僚が来たので 聞いてみました。 同僚の言うのには 「夕方ここで 自動車の事故があった。 信号を無視して 出てきた自転車をよけようとして 自動車が 歩道に乗り上げた。 自動車は 電柱に当たって メチャメチャに 壊れた。 でも運転手には ケガがなかったそうです。」と 順子は 誰もケガがなくて ホッとしました。
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事故は起きていましたが 誰もケガがなくて 安心して 寮に帰りました。 もう事故は起きないと 思いました。 何かウキウキして 冴子の待っている部屋に帰りました。 冴子は 少し疲れたのか ベッドで横になっていました。 順子は 笑顔で駆け寄って 「早くご飯食べに行こうよ」 と言いました。 冴子: 順子何なの 何か良いことあったの 順子: あると言えばあるのですが 冴子: 何なの 何が良いの 彼氏でも出来たの 今どこかに行ってたのは そのためなの そんな短時間で 何が 出来たの 順子: そんなわけないでしょう 早くご飯食べに行こうよ おなかなんかすいちゃって 冴子: 有馬温泉であんなに食べたのに まだすいているの 本当に? ふたりは食堂で 夕食を わいわい言って 食べました。 翌日 いつものように 会社に出かけ いつもと同じように仕事をして 工場の食堂で 昼ご飯を食べました。 食事をして 少し休んでいると 課長が横を通って 冴子に声を掛けてきました。 課長は 冴子に 「定時で終わった後 少し話があるので 課長室に来て欲しい」と話しました。 冴子は 何かわからないけど 「はい」と言いました。 順子と 冴子は 何となくわかっていました。 課長は 仲人をするのが 大好きで あっちの女性と こっちの同僚の息子を出会わせたり 向こうの工員さんと 同系列の会社の工員さんの仲を 取り持ったりしました。 順子も 冴子も きっとそれだと 口には出さないけど 思いました。
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順子はいつものよう 定時に退社して 寮に帰って 洗濯をしていると 遅れて 冴子が帰ってきました。 順子: 冴子何だったの 冴子はちょっと笑いながら 冴子: やっぱり見合いのお話だったわ 順子: そうなの 相手は誰なの 冴子: まだ会っていないから良くわからないけど 伊丹工場の研究室の 何か言ったな 野村さんかな たぶん その言葉を聞いて 順子はびっくりしました。 順子: 野村さんて 野村義男 、、、 さんなの 冴子: 順子どうしたの そんなに真剣に 相手の人の名前まで聞いていないわ ひょっとして 順子 野村さん好きなの 知っているの それじゃ私と 見合いしたらダメじゃないの 順子は 我に帰って 冷静に考えながら 順子: そんなことないよ 前に ちらっと見ただけなの 工場の用事で 研究室に行った時に 会っただけなの もちろん 何の関係もないよ 順子はそう言いながら どうしようかと 考え込みました。 野村義男とは 前の世界で 順子が結婚した相手なんです。 とても優しい 男性でした。
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順子にとっては 時間の流れが 行ったり戻ったりしたので こんがらがってしまいました。 (お読みになっている読者の方も わからないので 今後 順子が戻るまでの世界を 「前の世界」 戻った時を 「今の世界」と言います。) 野村は前の世界では 良くできた夫でした。 順子に優しく 子供にも優しく 理想的な夫だったのです。 順子は 見合いで会って その後すぐに結婚して 何もわからなかったけど 時間が経つにつれて 野村が好きになっていったのです。 その野村が 今の世界では 冴子と見合いをするのです。 前の世界では 冴子は 不意の事故で 亡くなってしまうのです。 前の世界で そう言えば 課長が 野村の見合い話を 私にした時 冴子の相手であったけど 不幸が起きたので 順子に 回ってきた と言うようなことを 話していたような 記憶が 戻ってきました。 順子は どうしようか 迷いました。 冴子に 「前の世界」では 野村は 私と結婚することに なっている なんて言ったって 信じないだろうし そうかといって 冴子の見合いが うまくいかないように 画策するなんて 出来ないことだし、 順子は どうすればよいか 全くわからなくなりました。 お布団に入って 順子は 眠れませんでした。
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朝まで考えても 良い考えが 出るわけでもなく 眠たい目をしながら 会社に向かいました。 冴子は 順子が 意気消沈していることは わかりましたが なぜそうなったのか 親友なのに わかりませんでした。 でも 野村との 見合い話を してから悪くなったので ひょっとしたら そのことと関係があるのかも知れないと 思いました。 その日は 冴子は 順子と話すこともなく過ぎました。 順子自身は 野村と結婚しなければ ふたりの娘も 生まれてくることはない そうなれば 孫も生まれてこないと言うことになります。 私は 今の世界を変えてしまって 前の世界通りにならなくなってしまったのです。 冴子を助けたことが こんなに大きな 変化をもたらすとは 思ってもいませんでした。 その日の夜は あまりにも眠たくて 寝入ってしまいましたが 夜に目が覚めてしまいました。 翌日も眠たい目で 出勤した順子を見て 冴子は 尋ねました。 冴子: 順子元気ないけど どうしたの 順子: 別になんでもないけど 冴子: そうなの でも目が赤いよ 順子: そうかな 卯年だからかな 冴子: 何いってんのよ 卯年は私でしょう あなたは子年でしょう 順子: そうだったですよね 冴子: 何か悩み事でもあるんでしょう 私の見合い話と関係があるのでしょう。 野村さんのこと 順子は知らないと言っていたけど 本当は好きなんじゃないの 課長に 言ってきましょうか 見合い話を 代わるように言いましょうか 順子: 、、、、、、、、、 、、、、、、、 、、、、、、、 ○×△ □○?%& 冴子: 何言ってんのよ わからないわ 順子は 冴子の提案に お願いと言いたいですけど 悩んでいました。 でも素直に、、、
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冴子が 見合いを代わってくれると 言ってくれたことに 順子は 電流が流れるように 全身にバシッと 衝撃を 感じました。 嬉しくて 少し躊躇しましたが 次の瞬間 「ありがとう」と 高揚した声で 冴子に言ってました。 冴子は ちょっと言ってみただけなのに そんなに喜んで 言われると 本当にそうするしかなくなってしまいました。 冴子: 順子 野村さんのこと好きなの どこで会ったのよ そんな人がいたって私に話さなかったじゃないの。 順子: ごめんなさい ありがとう 野村さんとは 会ったことはないけど 見ただけだけど どう言ったらいいのかな 冴子: 会ったことないのに なぜ好きになったの わからないな でも良いわ 順子とは親友だし 私は野村さんのことは何にも知らないんだから 明日課長に言ってみるわ 順子も来なくてはいけないよ 順子: ありがとう 本当にありがとう 本当に本当に 冴子: そんなに言ってくらなくても良いのよ 順子; でも 本当にありがとう 冴子: まだ言うの 順子は よかったと 心の底から 思っていました。
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冴子のちょっと言った言葉を 大きく「利用して」 見合いを 代わってもらうことになりました。 順子は 定時に終了した仕事の後 冴子と伴に課長のところに行きました。 課長は ふたりそろってきたので どんな話かわかりませんでした。 冴子が言い出しました 冴子: 課長 今度のお見合いですが 順子に代わることは出来ないでしょうか。 順子が 野村さんのこと好きみたいなんです。 順子が代わって欲しいというものですから 課長: へー 見合いを代わるって どういう事かな 今までそんなことはなかった。 順子さん 野村さんとそう言う仲なの 順子: えー そのー 別にそんな仲ではありません。 課長: そうなの 順子さんの片思いなの 野村君は 君のことを知っているの 順子: 今は知らないと思います。 いや知らないと思います。 課長: そうなの 野村君には 見合いの話はしたけど 相手の事については まだ話していないから 誰でも良いとは言わないけど 順子さんなら問題ないと思うけど 冴子さんそれで良いの 野村君は好青年だよ 冴子: すみません それでお願いします。 課長: じゃそう言うことにするよ 順子さん 釣書書いてきてね 順子: はい 書いてきました。 課長: ホー用意が良いな じゃ野村君に話しておくよ 君はいつが都合がよいかな 日曜日になるけど 順子: 何時でもいいです。 早いほうが、、、、 課長: わかっているよ そう言って 順子は 課長に 深々と頭を下げてました。
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前の世界では 結婚することになっている 野村とのことも 順子は何か不安になりました。 私が冴子を 助けたことで 前の世界と 今の世界は 大きく変わってきているのではないか。 だとすると 野村と結婚も出来ないこともあり得る と考えました。 前の世界では 冴子の代わりに 課長に勧められて 何となく野村と見合いしたら お互いに気に入ったというか 課長の「押し」に負けて 何となく結婚してしまったのです。 結婚した後 ふたりは だんだんと 恋人同士になっていったというのが 前の世界の 野村との結婚だったのです。 しかし今の世界でも その様にとんとん拍子に いくかどうか分かりません。 野村の好き嫌いは 分かっているので とりあえず そんな格好で 見合いに臨まなければならないと 思いました。 用意に用意を重ねて その日曜日がやってきました。 順子は 軽く化粧をして 髪を長くして その先をそろえて いわゆるワンレングスにしました。 白のワンピースを着て 黒のパンストを身につけて 黒のローヒールの靴を履いて 出かける準備をしました。 冴子はその姿を見て 「そんな格好で良いの もう少し口紅をつけなきゃ 今日は見合いでしょう もっと化粧をしないの それにその服 もっとピンクとか 赤とかないの? それにその靴は何なの 会社の面接にでも行くつもり??? あったじゃないの 赤のスーツが そんな質素な服で良いの?? 課長びっくりするよ」と 激しく言われてしまいました。 でも順子は この風体が 一番好きと 野村が言っていたのを 覚えていたのです。 それで 「冴子 私がリサーチした限りでは これが一番受けるのよ とにかくこれが良いの」 と答えました。 冴子は いつの間に 順子がそんなことを知っていたのかと そして 自信たっぷりと話すのを見て 少し 不審に思いました。
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そして 順子は 出かけていきました。 近くのレストランで 課長と 野村と 順子は会いました。 課長は 野村に 順子を 「野村君のことを 遠くから見ていた 順子さんです。」 と紹介しました。 順子は 一瞬 どきっとしました。 前の世界では 見合いの時は どんな話をしたのか 全く思い出せません。 食事をとって ふたりだけで 外に出ました。 野村は 映画館にでも出かけようと 言ってくれました。 塚口駅前の 映画館へ ふたりで行きました。 そう言うと 前の世界でも映画館だったと思いました。 こんな時に 話す言葉と言えば 趣味だとか 旅行の話だとか 映画の話だとか わりと話が弾みました。 何しろ 順子は 見かけは若いですが 57歳で経験豊富だったし 何より相手の野村のことを よく知っていたから いろんな話が出来たのです。 しかし 順子は内心 心配でした。 博学の女性なんて おもしろくない 女性かも知れないと思ったのです。 野村は 国立大学出身の 研究員ですから やっぱり賢い女性が好きなのか それとも ちょっと お馬鹿な女性の方が良いのか 野村と話しながら 考えました。 前の世界では 普通にしていたら お互いに好きなっていたので 考えても わかりませんでした。
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順子は 「ちょっと失敗したかな」と 思いながら 寮に帰りました。 部屋に帰ると 冴子が 聞いてきました。 冴子: 順子どうだった そんな服で 良かったの 順子: ダメだったみたい ちょっと やり過ぎたかな やっぱり女性は おしとやかな方が 良いよね。 冴子: せっかくかわったのに そんな結果なの 順子は 控えめじゃないの ちょっとこの頃違うけど 順子: 冴子もそう思うの 私って ちょっと出しゃばりよね 嫌われるよね 冴子ごめんね 冴子: 別にそんなことないよ、、、 そんな話をして 夕食を食べながら 野村のことを 順子は考えていました。 翌日 課長に 午後呼ばれました。 もちろん昨日のことを 話すために違いありません。 順子を ドキドキしながら 課長のところに行きました。 課長は まず 野村の印象を順子に聞いてきました。 課長: 順子さん 野村君のことどうだった。 順子: 野村さんは いい人だと思います。 でも私嫌われたんじゃないかと 思うんです。 課長: 何故嫌われたと思うの 順子: 野村さんに ずけずけといってしまったもので 課長: そんなに言ったの 道理で 野村君が、、、 (この話は続きます)
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順子: 野村さんは どの様におっしゃっているんですか。 課長: そのことなんだけどね 野村君は 『順子さんは ぼくより若いのに 何かしっかりしていて ぼくなんか頼りないんじゃないか』 と言うんですよ。 順子さん そんなにしっかりしていたっけ 入社した時は 失敗ばかりしていた 順子さんなのに 順子: そんなー 私って ドジな女ですよ しっかり何かしていませんよ。 課長: それでね 野村君は 少し迷っているようで どうすればいいか 私に相談してきたんだ。 順子: 課長 大丈夫です 私きっと 野村さんと幸せになれる自信有ります。 私に 力を貸して下さい。 課長: おー 順子さん 積極的だね 前の順子さんは 優柔不断のように思えたんだけど 最近 積極的になったよね。 恋したからかい 野村君に一目惚れしたのか まだ一回しか会っていないのに 順子: そうなんですけど でも お願いします。 課長: んー そうだね じゃ 野村君に ぼくから言っとくよ 順子さん ちょっとおしとやかな方が 野村君の好みかも知れないよ 順子さんは若いんだから もっと若いように 振る舞った方が 背伸びしたらダメだよ 順子: ありがとうございます。 課長よろしくお願いします。 どうかよろしくお願いします。 順子は 平身低頭して 頼みました。 順子は 野村と結婚できなければ どうなるかわからないと 考えました。 やっぱり 野村は 若い従順な女性が好きだったんだと思いました。 30年前の順子がそうであったように。
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何故そんなことに気がつかなかったのだろう。 結婚した当時は 順子は 世間知らずの 従順な女性であったのです。 体は 今の世界では 27歳だけど 心は 57歳 ちょっと厚かましい女になっていたのです。 次に会える日曜日には よく考えて 行こうと思いました。 服装も 冴子に言うような ものにしようと決めました。 冴子も 応援してくれました。 次の日曜日 赤いスーツに 昔よくやっていたような 赤い口紅を付けて 頬紅も少し濃いめに付けました。 約束の 塚口の駅前で待ち合わせをしました。 約束に10分前に行くと 野村は待っていました。 (『そうだ そうだ 野村さんて 本当に几帳面なんですよね 待ち合わせの時間の 30分前から いつも待っていたわね。 そうだ私はいつも時間ぎりぎりに 行ったものだわ』と 心の中でつぶやきながら 少し伏し目がちに 笑顔で 走っていきました。 こんな動作もするのも おしとやかさを出すためです。 順子: 待たせてすみません。 急いだんですけど 何か早くできなくて私ってダメだわ 野村: そんなに待っていません 今来たところです。 (順子は 『野村さんて 無理しているわ もっと早く来ているに違いないのに』 とおもいながら) 順子: そうなんですか それなら良かった 野村: どこに行きましょうか 順子: 私はどこでも良いです 野村さんの後を付いて行きます。 私優柔不断だから 決められないんです。 野村: そうなんですか 前にあった時は もっと、、、 そうなの そう言いながら 映画館に行きました。 順子は 後から付いて行きました。
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その日は 従順に徹しました。 会話が弾まなくても 気を回さずに 順子は 黙って下を見て黙っていました。 順子は 絶対におしとやかに しようとしていたのです。 野村は 少し困ったようにも見えましたが 「そばにいれば幸せ」 のような顔をして 野村の後を付いて行きました。 映画館の後 喫茶店に入って 黙ってコーヒーを飲んでから 暗くならないうちに 寮まで送られて 帰りました。 順子は 送ってくれた 野村の背中を 見えなくなるまで 見送りました。 部屋に帰ると 冴子が聞いてきました。 冴子: どうだった。 楽しくできた。 野村さんにその服なら気に入られたでしょう。 やっぱり女は可愛くなくっちゃ 順子: 冴子ありがとう 今日は良かったわ やっぱり冴子の言う服を着ていって 冴子: そうでしょう。 やっぱり口紅は ピンクが良いのよ 服もピンクよね 順子: そうよね 昔はそうだったよね いやそうだよね 冴子: 昔って何? 順子: いや昔って 何でしょうね 順子の 57歳になって また訪れた 純愛は 冴子の応援や 課長や周りのみんなの応援で 実を結ぶことになります。 こんなお付き合いをしながら 二人は 課長に 仲人のお願いに行きます。
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順子は 野村と結婚が決まって ヤレヤレでした。 生まれてくるはずの 子供が 生まれることになったのと また新婚生活が出来るのが 嬉しくて嬉しくて 天にも昇る気持ちです。 新婚生活を 二度も経験できるって どんなに幸せか 思っただけで 笑顔になってしまいました。 冴子に 冷やかされながらも 冷静を 装うのも 至難の業でした。 前の世界でも 野村のおじいさんが その年になくなったので 結婚式は 翌年の 春になりました。 結婚まで 野村と 順子は 仲の良いですが 清純なお付き合いでした。 前の世界では それが何とも思わなかったのですが 今の順子には まどろっこしい様な 歯がゆいような 思いになりました。 そのことはさておき 野村のことを 代わってもらった 冴子には 何となく悪いような気がしていたのです。 それで 順子は 考えました。 野村の 友人で 前の世界では 30年後も 独身の 林を 紹介したらどうかと考えたのです。
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林を冴子に紹介するには 野村の力がいります。 でも野村に そんなことを話すと 不審がるかも知れないし 「おしとやかな」はずの順子には反する。 でも私のために 結婚できなくなる 友人の冴子のことを考えると 何とかしなければならない。 そこで野村に話すことにしました。 順子: 野村さん 私の親友に冴子というのがいるの こんなこと お願いして変だけど 冴子が お付き合いできるような人 いませんでしょうか。 野村: 順子さん 親友なんですね 近頃のことだから その友達にも 男友達や 思っている人がいるんじゃないの 順子: それが 今までの私と同じで 全くいないの 私は野村さんと結婚して 良かったけど 冴子を見ていると 何だか 野村: 本当に友達なんだね 冴子さんてどんな人かな 順子: ちょっと小柄な かわいい人よ 優しい性格だわ。 野村: そんないい人なら 誰か紹介してみたいものですね でも ぼくには そんな人にぴったりの 友達はいないな 順子: よーく考えてください 野村さん 、、、 、、、 、、、 あっ 林さんなんか良いんじゃないの 野村: 林か 林は良い奴だけど 、、、 、、、 、、、 順子さん 林を知っているの 順子はドキッとしました。
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順子は 野村が なかなか林のことを言わないので ついつい言ってしまったのです。 そう言えば 前の世界では 野村の友人の 林を 紹介されたのは 結婚式の日でした。 そんなことを 思い出したのですが 遅かったのです。 しまったと思った 順子は ごまかそうと必死です。 額から 汗が出て 明らかに 上気していて 変でした。 順子: えっ、、 林さん 前私に言っていたじゃないの。 林は良い奴だと 確か言ってたでしょう 順子は 平然を装って いましたが 野村には それがわかりました。 そこで 野村は 理由はわかりませんが 順子に合わせることにしました。 野村: 言ったかな 林は良い友人だけど 順子さんに言ったかな。 野村は不審そうに言いました。 順子は 本当のことを 言った方が良いかどうか迷いました。 でもそんなこと信じて もらえないと思うので やっぱり言えませんでした。 野村は 順子が 林を知っているのは 不審に思っていましたが 林と順子の友達の冴子は 良いカップルになりそうなので そのことは忘れることに しました。 そして 順子の役割は 正月の休みに 冴子を連れ出すことでした。
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順子は 年末冴子に 話をしました。 順子: 冴子さん 野村さんの見合いを譲って頂いて ありがとうございました。 冴子: まだそんなこと言ってるの もうその話は良いわ 順子と野村さんは 良いカップルだわ 順子: 冴子さん 単刀直入に言いますけど お見合いしない? 冴子: えー 単刀直入ね 誰なの 順子: あー そうなの 野村さんと相談したんだけどね 野村さんの友達に 林さんという人がいるの 林さんは いい人なのよ とっても世話やきで 働き者 その上健康で丈夫なの 冴子: 順子は 林さんを知っているの 詳しいみたいだけど 前の世界では 順子は 林に大変世話になっていました。 それで林のことをよく知っていたのですが そんなことは 冴子に言えないので ちょっとごまかして 次のように言いました。 順子: いいえ、、、 私は直接は知らないわ 野村さんに聞いただけなの 冴子: 野村さんとは 何でも話するのね 仲が良いのね あっ、、 と言うことは 私のことも 野村さんに言ってるんじゃないの 順子: 言ってません 言ってませんよ 冴子: 本当に言ってないの? 順子: 信じてくださいよ ふたりはこんな話をしていましたが 結果的には 冴子は林に会うことになりました。 まだ幕の内の 日曜日に 順子に連れられて冴子は 林に会いました。
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冴子の紹介は 順子が 担当しました。 冴子の いいところを うまく説明して 弱点な所も 長所になるように うまく言いました。 林は 訥々とした 人柄でしたが 冴子の 気にとまったのです。 林と 冴子は 順子の 予想通り 意気投合したようでした。 時が過ぎ 順子と野村の結婚式が近づいてきました。 順子は 一層おしとやかに 対応したつもりですが 野村は 不信感は 段々と大きくなってきました。 ある日 野村は 公園で 順子と 会いました。 そして思い切って 順子に聞きました。 野村: 順子さん 少し話があるのですが 順子: (少しドキッとして 平然を装いながら) 何ですか 改まって 野村: 君は福井の出身でしょう 工場に勤めるようになってから この地に来たのですよね 順子: えー えっ そうですが 野村: こんなことを話すのも おかしいんですが 順子さんは 私のことや 私の周囲のことを よく知っている 話していない 子供頃のことまで 知っている様の思うんだ 順子: そんなことありません 野村さんが話して下さったことばかりですよ 野村: そうかな ぼくの家に来た時 トイレに 間違わずにいったじゃないか ぼくの家のトイレは 知っているように ちょっとヤヤッコシイところにあるのに 間違わずにいったり、 ぼくの家が いつも裏の玄関から入っているのを迷わず行ったり 林のことを よく知っているように言ったり 数え上げたら きりがないよ 本当は 君は ぼくらは幼なじみ何じゃないの なんかぼく君に前にあったような気がするんだ。 順子はびっくりしました。 私が記憶にあるように 『野村も 記憶があるんじゃないだろうか』 と思いました。
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順子は 野村が 前の世界の記憶が あるのかどうか 疑いました。 でも本当のことを 結局は言えずに ごまかす方をとりました。 順子: 野村さん そんなことないですよ 私は高校まで 福井にいて 今の工場に就職して 初めて来たんです。 野村さん 色々と話してくれたから 野村さんは 話したことを 忘れたんですよ 野村: そうかな 順子: そうですよ それしかないでしょ 初めてあった人だから 聞いた方は 良く覚えているんです。 野村: 話したかな そんなことを その日は ズーッと話していました。 順子は 本当のことを 言うべきかどうか迷いつつ ごまかし続けました。 野村は 疑いが解けることはなかったけれども 一応納得しました。 野村は 些細なことに 気が付く 几帳面なタイプだったのです。 そして結婚式の日が来ました