ロフト付きはおもしろい

ロフト大好きの68歳の老人の日記です

短編小説 「茶髪男と黒髪女の恋」その5

茶髪男は、
次郎と言います。

次郎は
石川県にある
超有名な会社の
下請け(本当は孫請け)
に勤めていました。

先週の月曜日から
大阪の現場で働いていて
今日は打ち上げで
大阪で飲んでいたのです。
寮が西宮北口にあったので
そこに帰る途中でした。

倒れようとしていた
あずさの後ろに
切符を買うために並んでいたのです。

行きがかり上
あずさを手で少し支えて
「大丈夫ですか」と
声を掛けました。

あずさは
もうパニックで
相手を確認もせずに
「この爪が、
チャックが、
電車が、
マニキュアが、、、」
とわけもわからず
言ってしまいました。

次郎は
酒飲み会と言っても
あまり飲まない方なので
冷静に
あずさを
観察して
爪がチャックに挟まっていることがわかりました。

次郎は
とても目がよかったので
どうして爪がチャックに挟まっているか
見ました。

そうしておもむろに
あずさの白い手を
右手に持ち
左手にチャックを持ちました。

突然手を握られても
あずさは意識がもうろうとしていますから
動じませんでした。

次郎は
チャックを右にするようにしながら
あずさの手を
右に回すように上げたのです。

あずさは
「あー」と
大声を上げました。

その声はあまりにも大きかったので
次郎や
付近にいた人達は
あずさの方を見ました。

続けて
あずさは
「取れた取れたー」
と叫んだのです。

周りの人は
あずさを
もっと見ました。

次郎も
もちろん見ました。
そして
あずさと次郎は
目が合って
笑ってしまいました。

その笑いは
段々と大きくなって
二人とも大笑いに
なってしまったのです。

これが
茶髪男と黒髪女の
初めての出会いです。