有馬温泉くらいしか思い出せなかった
冴子には理由があります。
冴子のこの後の人生は
大変なことになって
温泉に行くなどと言う
余裕など無かったのです。
それはさておき
この時は
有馬温泉に行こうと言ってしまったのです。
冴子:
有馬温泉?
そうね
温泉ね
良いかもしれないね
真由子:
そうでしょう
良いでしょう
行きましょう
冴子:
なぜ8月5日なの
真由子:
だって
暇だし
8月5日がいいと思います。
冴子:
そうなの
8月5日が良いの
そうよね
思い立ったが吉日だものね
その時に行かないと
一生いけないかも知れないよね。
真由子:
そうだよね
絶対そうだよ
いま行かないと絶対にいけないよ
冴子:
そんなことないよ
いつだって行けるんじゃない
もう死ぬみたいに言わないで
真由子:
そうよね
有馬温泉くらいいつでも行けるよね
そうよね
真由子は思わず
冷や汗が出てしまいました。
そんなことを
言えませんでした。
ふたりはその日
課長に休暇願を出して
8月5日に
一泊二日の有馬温泉に出かけることになりました。
冴子が
交通事故に遭うのを阻止するために
真由子が取った最善の方法だったのです。
でもこれが
冴子の未来を変え
真由子の未来も大きく変えるのです。