十詞子は もちろん指輪を 東京の独身寮に はずしておいて新幹線に乗ったのです。 ウキウキしながら 新大阪に着きました。 いつもなら 電車の中で 何やかやと 仕事の資料を読み漁るのに そんなこともなしに 悟のことだけを考えていました。 方や悟は あまり乗り気はしませんでしたが、 これも十詞子のためだと 自分に言い聞かせ あるいは 見合いの相手に悪いと思い 笑顔で 大阪のホテルに出かけました。 お相手の方は 三田の資産家の お嬢様で 高学歴の聡明人でした。 父親が 同伴していましたが 温和な方のように 悟には思われました。 仲人様がとっても場を持ち上げる 力があって 妙に 話が弾んで 和やかな雰囲気になりました。 ふたりだけで 映画でもということの お決まりのコースとなります。 ふたりは 大阪の映画館に向かうために 国鉄の大阪駅と阪急梅田駅の間の 横断歩道に差し掛かりました。 初めって会ったので 手をつないでというわけではありませんが、 お互いに付かず離れずで 笑顔で 少し話しながら赤の信号で止まりました。 その時 十詞子は新大阪から大阪駅に着いて 阪急百貨店に寄って クリスマスプレゼントを買おうと 同じ交差点に来ていました。