翌日ご飯を炊く音で目が覚めた 弟は 服を着替えて 母親に 「お早うございます」と挨拶しました。 姉は固い雨戸を 開け始めました。 弟も行って手伝いました。 そのあと 土間の流しのところで 金タライに水を汲んでもらって 口をすすいで 顔を洗いました。 自分の手ぬぐいで顔を拭いて 台所まで帰ってくると 朝の間の仕事をして帰ってきた 父親に 「お早うございます」と挨拶しました。 父親が 足や手を洗っている間に 姉はお膳を並べ 母親はヘッツイさんから 釜を持ってきました。 お味噌汁と お漬物が並べられました。 弟は お膳の前に座って 父親を待ちました。 父親が座ると 家族全員で「いただきます」と 合掌してから 食べ始めました。 いつものように 背筋を伸ばして 食べていた弟ですが 少し足がしびれて 姿勢が崩れると 父親の鋭い眼光が光りました。 慌てて弟は 姿勢を正して 事なきを得ました。 それを見ていた姉は ハッとした様子でした。 「ごちそうさま」の唱和のあと 父親の「作業」と言う声と共に 立ち上がり 父親は 仕事に出かけて行きました。 姉と弟は お膳を片付けました。 こんどは、 母親は、白米だけを仕掛けました。 そのあと カンピョウと高野豆腐を 水につけました。 鳥小屋から 卵を持ってきて 卵を割って かき混ぜ 卵焼きを作り始めました。 卵焼きのいい香りが 家にただよいます。 鶏を飼っていて 毎日卵を産みますが 卵焼きを食べるのは 正月以来でしょうか。 弟は 台所で 母親の仕事を 見ていました。 卵焼きを 水屋に仕舞ったあと 母親は農作業に出かけていきました。 弟は水屋の中の 卵焼きを しげしげと見ていましたが 手を付けることはありませんでした。 姉と弟は 昼までの辛抱と我慢しながら 家で遊んでいました。