川上さんには 最初から 話しました。 さすがに スカートめくり事件からは話しませんでしたが 高校の時に 亡くなった主人に会ったことから 話しました。 前の主人の 川本さん のことについては 言いたいことが たくさんありましたが 言いませんでした。 子供がふたりいて 駆け落ちの日から 会っていないと 話しました。 亡くなった主人と 駆け落ちした時の 細かいことは 言いませんでしたが 川上さんは 納得していたようです。 冴子が ひとりで話して 川上さんは じっと聞いているだけです。 冴子が 話し終えた時 その場は 沈黙になりました。 頼んでいた コーヒーも なくなって 水も 何杯も飲んだあと 川上さんは 話す言葉を探すように 「だったら やはり 亡くなったご主人の冥福と 実の子供と 黙って 去った前のご主人に その時のことを 話した方が いいのではないでしょうか」と 話しました。 冴子は そうする方が良いと 思っていましたが そうすることは できませんでした。 特に子供には 会って 話したいと 思っていました。 冴子が黙っていると 川上さんは 「まず 勇治さんの 冥福を祈ってから 始めたらいい」と 付け加え 「次の日に 神戸に行こう」 言ってくれました。