ロフト付きはおもしろい

ロフト大好きの71歳の老人の日記です

ブログ小説「もうひとつの冴子の人生 パート3」その19

日曜になって
いそいそと
伊丹に出かけました。

今日は
追い出されても
登の家に
入ってみようと思いました。

登の家の
インターホンを鳴らすのは
これで
四回目です。

今日は
すぐに
返事があって
娘と
登が出てきました。

「入って下さい」と
言われて
懐かしい
登の家に入りました。

もうかれこれ
30年前に
初めて入ったこの家が
なんだか懐かしく思いました。

座敷の下座に座ると
登の母親も
座っていました。

冴子は
家を出てからのことを
細かく
話しました。

川本さんの母親以外には
話していない
目の前で
勇治が
焼け死んでいったことも
話しました。

小一時間が経ち
もう
話すことがなくなった時
「これから
どうしようというの」と
娘が聞いてきました。

冴子は
「何も考えていません。

でも
今のままで
充分です。

あなた方が
幸せに暮らしていってくれるなら
今のままで充分です。

何も望みません。

私を憎むのは
当然だけど
でも
私を憎むのは
今日で終わりにして下さい。

この通り
謝りますので
憎むのは
終わりにして下さい。

申し訳ございません。」と言って
謝りました。

畳に頭を伏して
謝りました。

登や娘はただ黙って
見ていました。

冴子は
「失礼します。

もう二度と来ません。

申し訳ございません。」と
言って
家をあとにしました。

息子が
追いかけてきて
電話番号を
聞いたので
メモを渡しました。