その日も キャベツの 煮付けです。 出汁をとったわけでもなく 油揚げとか 他のものと 煮たわけでもなく 卵とじにしたわけでもなく 醤油と少しの砂糖で 味付けしただけの キャベツの煮付けが 山のように 盛られます。 美味しいか 美味しくないかなど そんなことを 考えることなしに 頂きますの後 食べました。 食事の内容を 少しでも 話すことなどあったら 私なんか 何度家を放り出されたことか わかりませんので 黙って食べます。 テレビがない時代ですので 黙々とたべます。 ラジオはありましたが ラジオは つけません。 食べる時に 別なことを するのは 父の言葉を 借りれば 「言語道断」だそうです。 食事が出来ることを 感謝する姿勢の 表れだと思います。 そうだと思います。 食べることが 大変な時代だったんです。 食事が終わると ごちそうさまの後 ラジオがつけられます。 母は後片付けと こたつの準備を始めます。 父と 兄は 夜なべ仕事を 始めます。 土間に 藁を持ち囲み 藁を「かつ」のです。 藁を「かつ」とは 藁を叩くことです。 藁縄や俵・むしろなどを作るための わら細工をするためには 藁は 柔軟でなければなりません。 藁は 筒のような構造で 丈夫です。 わら細工をするためには 軟らかくないと 曲げることが出来ません。 そこで 藁を 木の槌で 叩くのです。 藁の 筒状の構造を 潰して 曲げやすくするのです。 木の台に乗せられた 藁を 木の槌で 叩いて 軟らかくします。 不要な 藁の葉っぱを 取り除きなら 選別していきます。 私は コンコンと叩く音を 聞きながら 家の中を 流れる ラジオを聞いていました。