薫子は 母親として 精一杯していて 亡くなった父親のことも 目いっぱい 言っていたのにもかかわらず 夏子ちゃんの口から 「私には お父さんが できないものかな」と言うことを 始めて聞きました。 やっぱり小さな子供には 母親と父親が必要だと 感じました。 それから 夏子ちゃんは そのことには 触れなくなりました。 三歳なのに 母親の 心の中を 察しているなんて それが 余計に 心にしみて 泣いてしまいました。 だからといって 陽一君より 愛せる 新しい 父親を 薫子が 探せるわけもなく 何もせずに 時間が過ぎていきました。 音楽会や 秋の親子遠足 でも 父親が 参加する 行事が続きました。 夏子ちゃんが そんな父親たちを 見ているのを 薫子は 見ていました。 どうすればいいのか わかりませんでした。 そこで 人生の師と仰ぐ 小学校の先生のところに 相談に行くことにしました。 ちょうど 美奈子さんが 実家に かえる用事があるというので 日曜日に 美奈子さんの車で 美山町へ 三人で 行くことになりました。