体が温まってくると 傷みも 和らいで その日も 5回運びました。 次の日も 5回 宮水運びをしました。 1週間くらい 経つと 体が出来上がってきて 相当の早さで 運ぶことができるようになりました。 しかし 5回が限度のようでした。 もう少し 日が長くないと 6回は 無理だと ふたりは 話をしました。 雨の日は 宮水運びは できないことに なっています。 雨水が 混ざることを 酒蔵が嫌がるためです。 雨の日は 休んで 藁仕事をしていました。 雨が止むと すぐに 大八車を 出して 宮水運びをしました。 しかし 雨上がりは 大変です。 ぬかるんだ 地道を 細い車輪の 大八車が 進むと めり込んで仕舞うのです。 行きはともかく 帰りの荷がある時には 少々の力では 抜け出すことなど できません。 かけ声とともに 一緒に力を出して やっとこさ 抜け出すのです。 また轍(わだち)が 深く出来上がっているところなどで 曲がる箇所があって やっくりいかないと 倒れてしまうし ゆっくり行っていては 乗り越えられないし そんなところでは 手を焼いたものです。 うしろの おますは それがわかっていて 力加減をしてくれていました。 亀太郎は おますは 「良い相方」と 心の中で 思いました。