ロフト付きはおもしろい

ロフト大好きの71歳の老人の日記です

長編小説「昭和」その215

明治になったからといって
何も変わっていませんでした。

「お家大事」の
鉄則は
全く変わっていませんでした。

家の喪失は
家族全員の死を意味します。

長男の相続が
慣習となっていた
今津でも
お家のために
長男を
廃嫡して
次男に継がせる例も
ありました。

しかし
9才の
次男に継がせるのは
異常です。

家長は
強い権限があるかわりに
大きな責任もあります。

そして
ここからが大事ですが
率先して
仕事をして
皆の信頼を
得なければなりません。

一人前の仕事が
9才の子供に
できるはずもありません。

清左衛門の真意は
家督を
仮に
弟の
伊之助に譲って
鶴松に
もっと深く考えて
欲しかったのです。

ちょうど
女中奉公に来ていた
倉野家の
父親が急死し
家督が
空席になっていました。

母親だけになっていて
清左衛門が
援助していたのです。

そこで
鶴松に
家を継がせることに
しました。