ロフト付きはおもしろい

ロフト大好きの68歳の老人の日記です

ブログ小説「ふたりで行くよ」その21

しかしその日は
少し違ったのです。

海に出たときは
鏡のように
波のない海だったのですが
沖に出て
帰ろうかと思った瞬間
空が
急に
真っ暗になって
風が強くなり
波が立って
波頭が風で白く
飛ばされるほどになったのです。

カッターは
大きく前後左右に揺れて
今にも
ひっくり返りそうになりました。

リーダーは
波に向かって
櫂をこぐように
いいました。

海のへさきを
波が来るほうに向け
思いっきり
漕いだのです。

正弥も
いわれるがまま
平素は
出ないような力を
出しました。

波のしぶきが
体にあたり
船の中に
海水が入ってきます。

カッターは
重たくなって
漕ぐのも
おぼつかなくなります。

正弥は
とも(船の後ろ)にいたので
ゆれは
差ほどでもなかったのですが
へさきにいた
千香は
上下のゆれのために
体の力を消耗させていました。

夏と言っても
嵐の中では
体の熱も
奪っていました。

カッターに乗っているものには
それは長く感じた時間が
過ぎました。