30年前に あなたは 戻りたいですか。 私は 遠慮しておきます。 辛苦の 30年間を またやるのは 少し おっくうです。 あらすじ 順子(よりこ)は 57歳のおばさんで 子育ても終わって 今はひとり暮らしです。 神さまのちょっとしたミスで 30年間の記憶を保ったまま 30年前に戻ってしまいました。 30年前は 工員として 大きな工場で働いていました。 戻ってみると 目の前で 30年前に死んだはずの 友達の冴子が 横で元気に働いているではありませんか。 順子は びっくりして 驚きました。 冴子は 交通事故にあって なくなってしまうのです。 その日を 何とか思い出して その日には 事故現場から 遠く離れた場所に 旅行に行ったらどうかと 思った順子は 冴子にそのことを言い出します。
有馬温泉くらいしか思い出せなかった 冴子には理由があります。 冴子のこの後の人生は 大変なことになって 温泉に行くなどと言う 余裕など無かったのです。 それはさておき この時は 有馬温泉に行こうと 言ってしまったのです。 冴子: 有馬温泉? そうね 温泉ね 良いかもしれないね 順子: そうでしょう 良いでしょう 行きましょう 冴子: なぜ8月5日なの 順子: だって 暇だし 8月5日がいいと思います。 冴子: そうなの 8月5日が良いの そうよね 思い立ったが吉日だものね その時に行かないと 一生いけないかも知れないよね。 順子: そうだよね 絶対そうだよ いま行かないと 絶対にいけないよ 冴子: そんなことないよ いつだって行けるんじゃない もう死ぬみたいに言わないで 順子: そうよね 有馬温泉くらいいつでも行けるよね そうよね 順子は思わず 冷や汗が出てしまいました。 その日に 交通事故に遭ってしまう そんなことを 言えませんでした。 ふたりはその日 課長に休暇願を出して 8月5日に 一泊二日の有馬温泉に出かけることになりました。 冴子が 交通事故に遭うのを阻止するために 順子が取った最善の方法だったのです。 でもこれが 冴子の未来を大きく変え 順子の未来も大きく変えるかもしれなかったのです。 そのことを 順子は 気が付かなかったのです。