ながく一緒に暮らしていると
どんなに仲が良くても
人生に一度や二度
言い争いがあるでしょう。
悟と十詩子も
そんな日が来てしまいました。
55
十詞子が 悟のそばを 通ったとき 少し めまいをして 本棚につかまりました。 それを見ていた 悟は 声をかけたのです。 悟: 十詞子さん大丈夫? 十詞子: 大丈夫 今日は朝から 少し頭が痛くって 悟: それじゃ 薬飲んだ? 十詞子: 飲んでいないわ いつものことだし 悟; いつも痛いの? 病院に行ったら その言葉を聞いて 十詞子は 「カチン」ときたのです。 頭痛のためかもしれませんし 暑さのためかもしれません。 後になって考えると そんなことを 気に留めることもないのに そのときは いらだったのです。 「私の体だから ほっといて」と 言い放ったのです。 二人が 経理学校で 出会ってから 初めての 言い争いでした。 悟は 何がなんだか わからなくなりました。 何も言わすに 黙って 下の自分の部屋に 戻ってしまいました。