ロフト付きはおもしろい

ロフト大好きの71歳の老人の日記です

小説『冴子』震災部分その4

掘っている穴が
ふたりが入るのが精一杯で
力のない
倫子より
倫子の兄たちに
頼む方が
早く掘り出せるというので
倫子は
後ろで
出てくるガラを
運ぶ役になっていました。

でも
時々
風向きがこっちの方になった時
煙が
そして
火炎が
やってくるようになりました。

助けに来ていた
ふたりの若者は
撤収した方が良いと
言いました。

倫子は
「中に
勇治がいる

助けて上げて

お願い」と叫びました。

でも
火炎と煙は
限りなく近づいてきます。

河本さんの兄たちも
「もうダメだ」と
叫んで
親たちを
引っ張り
逃げるよう
言いました。

倫子は
助けに来た若者が
河本さんの両親は
兄たちが
引っ張って
逃げ出しました。

倫子は
諦めきれません。

少し
行って
ふたりの若者の手が離れた瞬間
倫子は
穴の方に走り込み
大声で
「勇治
勇治
勇治」と叫び
大きめの石を手で
のけました。

火事場のバカちからというのでしょうか
とても倫子では持てない
石が持ち上がったのです。

 


倫子が
石を持ち上げると
少しだけ向こうが
空洞になっていました。

「勇治勇治」と
ありったけの声を
出して叫びました。

穴に頭を突っ込むと
ヘリコプターの音が
少し静かになっていました。

大声で叫んだあと
耳を澄まして
聞きました。

そうすると
確かに勇治の声で
「倫子
ここだー
河本さんもここに
ケガをしているけどいる
やくたすけてくれ」と
聞こえました。

それを聞いた
倫子は
穴の奥の方へ行くために
掘り始めました。