勇治のことを 忘れても 忘れた方が 良いと言われた 冴子でしたが 駆け落ちまでした人を おいそれと 忘れられるわけがございません。 二日後 川本さんのところに 行った時も そのようなことを 言われてしまいました。 私のことを 大事に思ってくれて 言ってくれていることは よくわかりますが 冴子は そのような気になれません。 そんな日が 一日一日と過ぎ いつしかまた花見の季節になりました。 川上さんは 去年と同じように 花見に誘ってくれました。 一瞬 冴子は 考えました。 ママの方を見ると 「ハイと言いなさい」と 目配せしていました。 冴子は 花見に 行くことになります。 近場になりますが 夙川の桜を ふたりで見に行きました。 冴子は お弁当を 作っていきました。 川上さんは 感激して お弁当を ゆっくりと 食べていました。 桜を ほとんど見ずに 食べていました。 そんな川上さんを 見ていると 「いい人だな-」と 思って 何か悪いことを しているような気がしました。 翌る日からは またいつもの 客と店員との関係でした。