ロフト付きはおもしろい

ロフト大好きの71歳の老人の日記です

小説『冴子』震災部分その13

倫子は
寝台車の前に座って
係員に渡された
死体検案書を
持ちました。

雨は激しくなり
フロントガラスの
ワイパーは
激しく左右に振れました。

岡山までの
道のりは
ながく思いました。

お昼おそく
家に到着して
頼んであった
お葬式屋さんは
手際よく
祭壇を作りました。

倫子は
横で見るだけです。

何もすることなしに
ぼう然と
座っていました。

夕方近くなると
お寺さんや
近所の人が
多数押し寄せ
倫子に
お悔やみを言って
帰りました。

食事も
近所の人が
作って
倫子の前に
持ってきてくれました。

何もせず
何もできず
時間が過ぎ
夜も更け
雨も止みました。

倫子には誰だかわかりませんが
お布団の用意もできたと
言ってきました。

でも
義理の父母は
今夜は
よとげで
寝ないというので
倫子も
寝ずに
明日のお葬式を
待ちました。

座りながら
ウトウトとすることがあっても
横にはなりませんでした。

 

 

 


翌日
静まりかえっていた
家が
突然騒がしくなりました。

大勢の人が
一気にやってきて
お葬式の準備が始まりました。

倫子は
村のお葬式を
見たことがなかったので
驚きです。

役割が決まっていて
スムーズに
お葬式が進みます。

倫子は
喪主の席に
じっと座っているだけで
お辞儀をするだけで
朝食も
お葬式も
問題なくでき
終わってしまいました。

斎場に行って
帰ってきて
それから骨揚げに行って
墓に骨を入れて
帰ってきて
それから
精進揚げをして
そして
夜になって
その日の日程は
たちまちの内に終わってしまいました。

倫子は
泣く時間もなく
終わってしまいました。

小さい骨壺を入れたものだけが
残りました。

(この間
棺の
勇治に
最後の別れを告げるのですが
私には
その光景を
描写できません。

すみません。

皆様ご想像下さい。)

手伝いの村人が
夕食をとって
後片付けをして
帳簿の書類を置いて
一斉に帰ってしまいました。