ロフト付きはおもしろい

ロフト大好きの68歳の老人の日記です

小説『冴子』震災部分その12

 

倫子が寝ている入り口は
枕元を
大勢の人が
歩くので
必ず目が覚めるところです。

しかし
炊飯が始まる
6時までは
じっと
布団の中で
寝返りをうっていました。

やっと6時になったので
起きて
倫子は
炊事場になっている体育館横の
手洗い場に行きました。

今日は震災からはいじめての
雨でした。

たいそう強い降りで
炊事場にも
入ってきました。

みんなが集まってきて
朝は
豚汁のようなものを
作る献立になっていました。

手分けして
作り始め
7時半頃には出来上がり
避難所のみんなに熱い
ものを提供できました。

雨模様の
寒空に
暖かいものが
本当に
喜ばれました。

 

 

 

倫子も
暖かい食事をして
少し気を取り直し
後片付けをして
お寺に行くことになりました。

傘は
用意していなかったけど
どういう訳か
たくさんの置き傘がありました。

その傘を使って
寺に向かいました。

4人の河本さんの家族は
既に到着していました。

係員に
いろんな書類を
書かされ
ご遺体の
引き渡しを受けました。

棺の中は
係員の忠告に従い
この場では
見ませんでした。

見られなかったというのが
本当のことでしょうか。

そんな河本さんを見ていたら
勇治の
父母と
引き取りのための
寝台車が
やって来ました。

父母は
倫子をねぎらいました。

河本さんから
助け出そうとする
奮闘したこと
知らされたからです。

母親は
遺体を
岡山に引き取り
そこでお葬式をするので
倫子も
岡山まで来て欲しいと
言ってくれました。

混乱する
神戸で
お葬式を上げることなど
今はできないので
倫子は
そうすることにしました。

同じように
いろんな書類に
目を通して
倫子は
後ろの
リュックから
判子を出して
押しました。

義理の父親は
棺の中を見ようと
開けかけたのですが
倫子は
涙目で
「やめて
止めて下さい。

岡山に帰ってから
気構えてから
見た方が良いです。」
と言いました。

父親は
倫子が
あまりにも真剣に
言うので
やめました。


雨の中
棺を
みんなで担いで
用意した
寝台車に載せました。