課長は 少し喜んだように 見えました。 辞令を渡して 「十詩子さん おめでとう。 君の将来は 前途洋々だよ。 私の部下から こんな人材が出たことを 嬉しく思うよ 十詩子さんなら きっと うまくできると思うよ」と付け加えました。 辞令は 大阪本社電算機準備室勤務を命ずるものでした。 月末は工場に それ以外は 本社勤務と言うことになっていました。 当時の会社経理は 伝票とそろばんによる 経理処理でした。 大手企業は そろって電算機の導入を 目指していました。 電算機自体が 高価な上に扱いにくく 低性能だったので それを扱う人間は 今以上に 優秀な人材が必要でした。 十詩子は その辞令を持って 午後には 大阪の本社の 電算機準備室を 訪れていました。 大阪の本社は 上本町にあって 10階建ての如何にも ご立派というような造りのビルディングの 10階建て地階にありました。 入り口は 二重になっていて 受付の事務員に 出社の旨を伝えました。